表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
15/20

第十五話 変異種再び

 イワンの誕生パーティから数日は、何事もなく過ぎた。

 蛍石はダンジョンに潜って普通に商売をする。日々の取引で、少ないながらも利益を出していた。

 ある日、トニーニの店に行くと、仏頂面をしたトニーニから声を掛けられる。

「ダンジョンに変異種がまた出た。始末してこい。変異種に懸けられた懸賞金は百万ゴルタだ。『道連れ玉』と『自爆玉』は忘れずに持っていけ」


「何だ、また拒否権はない仕事なんだな」

 トニーニが横柄な態度で告げる。

「蛍石は俺の財産だ。俺がどう使おうと自由だ」

(勝手な言い分だな。だが、百万ゴルタはでかい)


「わかった、行くよ。持ち込む品は、前回と同じ物を用意してくれ」

 トニーニが『罠避けの靴』『疾風の腕輪』『索敵の書』『地図の書』『玄武のグローブ』『転移草』を持って来た。

 蛍石は『疾風の腕輪』『玄武のグローブ』『罠避けの靴』を装備する。『索敵の書』『地図の書』『転移草』を魔法のベルト・ポーチに入れて、下の階に移動した。


 降り立ったフロアーで、『地図の書』を使って地形を把握する。フロアーは左右に大きな楕円の部屋が二つ並ぶ造りだった。二つの部屋は中央にある短い通路で連結されていた。

 蛍石は改めて、辺りを見渡す。灰色の石壁に囲まれた楕円形の空間が広がっていた

(この部屋が一周で四百mくらい。隣にも同様の部屋か。戦いになると逃げるのは難しいな)


 次に『索敵の書』を使う。隣の部屋に五つの探索者の反応があった。

(妙だ。探索者は一つのフロアーに一人が原則。その反応が五もある。隣の部屋は全体がばかでかい異常路で、できているのか)

 蛍石は気を引き締めて隣の部屋へと続く通路を渡る。


 通路の出た先は壁の外周が虹色に光る蜘蛛(くも)の巣に覆われていた。蜘蛛の巣の周りには人間大の(まゆ)があった。

 ばかでかい蜘蛛がいる予感がして、辺りを警戒する。だが、蜘蛛は見えなかった。

 手近な繭に近づいて中を開ける。繭の中からポニ子が出てきた。

「おい、ポニ子、しっかりしろ!」


 ポニ子の頬を打つと、ポニ子は目をゆっくりと目を醒ました。

「あれ、にい様。にい様はどこに行ったっすか?」

(何だ、寝ぼけているのか?)


 ポニ子の肩を掴んで問い(ただ)す。

「俺だフローライトだ。何があったんだ」

 ポニ子は次第に状況を理解したのか、はっとした顔をする。

「そうだ、鏡花先輩、鏡花先輩が危ないっす」


 ポニ子は辺りを見回すと、蜘蛛の巣を(なた)で切り開いて進んで行く。

蛍石は他の探索者を助けようとした。すると、軽い震動を感じた。

 震動がした方向を見ると、壁を突き破って真っ白い蜘蛛が姿を現した。

 蜘蛛の全長は六m、全身に毛が生えており、太い手足を持っていた。

「変異種で、間違いない」


 ポニ子に視線をやる。鏡花の捕えられている繭は蜘蛛の巣の奥側なのか、救出にはまだ少しの時間が掛かりそうだった。

(俺がこいつを倒すしかないのか)


 蜘蛛がじりじりと間合いを詰めて来る。蛍石は静かに距離が詰まるのを待つた。

 蜘蛛が五mの距離まで来ると止まる。蜘蛛が年配の女の声で語り出した。

「思い出せ! 思い出すんだ! 人は忘れられた時に、思い出と共に死ぬ」

 蜘蛛の眼が怪しく七色に光る。


 催眠攻撃の一種が来ると思った。だが、蛍石には何ともなかった。

(何だ、ダンジョンの住人には効かない攻撃なのか)

 蜘蛛は瞳を輝かせ、ひたすらさっきと同じメッセージを繰り返すのみだった。

 しばし、蜘蛛との睨み合いが続く。


「鏡花先輩を救出したっす」

 ポニ子の威勢のよい声が響くと、蜘蛛のメッセージは中断した。

 蜘蛛が瞳を赤くして、急激に距離を詰めて来る。


 蜘蛛の牙には毒の危険性があるので、接近戦はやりたくなかった。

「闘神流戦闘術・『十歩破命拳』」

『十歩破命拳』を打ちながら、フットワークを駆使しする。接近されないようにダメージを与えた。


 蜘蛛は動きが鈍かった。蜘蛛は『疾風の腕輪』で速度を上げ、攻撃する蛍石に翻弄された。

 戦況は蛍石の有利に見えた。だが、蜘蛛の動きはいくら『十歩破命拳』を打ち込んでも止まらない。そのうち段々と『十歩破命拳』を打ち込むのが辛くなってきた。

(まずいな。『十歩破命拳』に、ここまで耐えたやつは、いないぞ)


「フローライトさん、下がって、交替します」

 鏡花が剣を抜き、やって来る。鏡花は果敢に接近戦を繰り広げる。

「おい、待て! 危険だぞ。毒を貰ったら、どうする!」


 ポニ子が明るい顔で駆け寄って来る。

「大丈夫っすよ。鏡花先輩には、魔眼があるっす。蜘蛛の瞳にさえ気を付ければ問題ないとわかれば、負けないっす。それより、強壮剤で回復するっす」


 ポニ子が薬の入った小瓶を差し出す。小瓶の中の液体を飲み干すと、力が湧いてきた。

 ポニ子は弓を取り出すと、鏡花の邪魔にならないように、蜘蛛に攻撃を加えた。

 回復を終えた蛍石も、隙を見て蜘蛛を殴った。

 蛍石の拳、鏡花の剣、ポニ子の放つ矢が当る。だが、それでも、蜘蛛は倒れない。


「くそ、何て奴だ。奴は体力の化け物か?」

「矢が尽きたっす」と、ポニ子が叫ぶ。

 それでも、蜘蛛は止まらない。鏡花が叫ぶ。

「フローライトさん、少しの間だけ、蜘蛛の注意を惹いてください」

「わかった」と蛍石は鏡花と交替する。蜘蛛の正面に出て、蜘蛛の眉間を殴る。


 蜘蛛の注意を惹きつけながら、接近戦をする。

 ピカッ、ズガン! 閃光と共に大きな雷鳴が響く。雷に撃たれた蜘蛛の動きが止まる。もう一度、強烈な雷が蜘蛛を襲った。二度の強力な雷を喰らって蜘蛛は動かなくなった。


 蜘蛛は大量の黒い煙を上げると消えた。金属製の杖を構えている鏡花がいた。

 鏡花が疲れた顔で、へたり込む。

「最後に『爆雷の杖』を二発も打ち込んで、やっと倒せた」


『爆雷の杖』は知っていた。『嘆きの石室』で出土する杖の中では最強のダメージを与える杖だった。その威力は『道連れ玉』や『自爆玉』には劣るが、雑魚モンスターなら、ほぼ一撃で葬る。

(三人であれだけダメージを与えて、さらに、『爆雷の杖』を二発も打ち込まないと倒せないなんて、変異種は強すぎだろう)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ