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【ブラッシュアップ版】 モブキャラ異世界転生記~モブキャラに転生しちゃったけど従魔の力で何とかなりそうです~  作者: ボルトコボルト


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第72話 商人の嗅覚、そして運命の出会い

 ソウタたちが長い旅路の末に到着したのは、活気あふれる国境沿いの町であった。しかし、その門をくぐった瞬間、門番が顔をしかめて鼻を摘まむ。


「うぷっ! なんだ、その酷い臭いは……。それに、その引き摺られている連中は?」


 門番の視線の先には、クロリスに蔦でまとめられ、アンモニアと泥に塗れて力なく地面を這う盗賊たちがいた。


「盗賊です。道中で襲われましてね。捕らえて引き渡しに来ました」


 ナナミが淡々と事情を説明すると、門番は事の重大さを理解し、即座に衛兵隊を呼んだ。事情聴取を受けた盗賊たちは、すでに心身ともに打ちのめされており、抵抗する気力など微塵も残っていなかった。彼らは自分たちの犯した罪をありのままに白状し、そのまま「犯罪奴隷」として奴隷商へと引き渡されることになった。


 ◇◇


 召喚された奴隷商は、盗賊たちを前に鼻を摘まみながら、商売人特有の鋭い眼差しで値踏みをした。


「まったく、ひどい臭いと傷だ……。これでは商品価値が下がる一方ですな。買い叩かざるを得ない」


 その言葉を聞いたナナミが、ソウタと視線を交わした。ソウタが小さく頷く。ナナミは迷わずアイテムバッグから自作の回復薬を取り出し、盗賊たちの傷口に振りかけた。


「えっ? そ、それは高級な回復薬!?」


 奴隷商が驚愕に目を見開くのも無理はない。見たこともない速さで盗賊たちの裂傷が塞がり、痣が消えていく。


「信じられん! そんな貴重なものを、たかが盗賊に使うとは……なんと勿体ない!」


「良いのよ。私たちが作ったものだもの、在庫はたくさんあるわ」


「……作った? まさか貴方たちは薬師か!?」


 奴隷商の目が、貪欲な光を帯びて輝き出した。彼は商人の勘で察したのだ。目の前の若者たちが、とてつもない価値を秘めていることに。


「是非、その回復薬を私にお売りください! 我が商会で責任を持って広めさせていただきます!」


 なりふり構わず手を握りしめ、何度も頭を下げるその姿を見て、ソウタは少しだけ肩の力が抜けた。相手が王侯貴族ではなく、損得勘定がはっきりした商人であることは、彼にとって幸運だった。


「……正規の値段なら、考えてもいいですよ」


「だそうです」


 ナナミの言葉に、奴隷商は歓喜の声を上げる。


「おお! ありがとうございます! ……おっと、自己紹介が遅れました。私は総合商会リングの店主、リングと申します」


「俺はソウタ。こっちはリャンゾウに、この鳥はブル。そちらはナナミにモモカ、クロリスだ」


 商談はスムーズに進んだ。盗賊たちを売った資金に加え、魔物の素材と回復薬をまとめてリングに卸す。交渉の場でのナナミの立ち回りは見事で、リングの提示する価格を巧みに釣り上げていく。


「いやはや、ソウタ様たちのおかげで、我が商会は大きな恩恵に預かりました。これはほんの御礼です。今晩の夕食、ぜひ私にご馳走させてください」


 商談がまとまると、リングはすっかりソウタたちの味方のような顔つきになっていた。


「リングさん、ご馳走になるのはいいけど、宿を紹介してもらえると助かるな」


「もちろんですとも! 最高の部屋と食事を用意して、夜にお待ちしております」


 ソウタたちは宿に荷物を置き、夕闇が迫る町の喧騒の中へと足を踏み入れた。王都での騒動から逃げ出してきたはずが、図らずも有能な商人と繋がりを持つことになった。


(獣人国への旅か。……意外と、悪くないスタートかもしれないな)


 勾玉の存在を隠し、平穏を求める青年は、未知の商人との夕食が、自分たちの旅をさらに大きく変えるきっかけになることを、まだ知る由もなかった。

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