最後回 因縁のクズ勇者と最悪の再会! → 狂犬の乱入で一瞬でざまぁされ、俺たちの旅はどこまでも続いていく
商業都市での素材換金を終え、俺――ソウタは、膨大な白金貨の重みに冷や汗を流しながら街を歩いていた。
サイコは「ちょっと美味い酒を買ってくる」と言って別行動をとっていたが、ギルドでの手続きを終えたモモカが俺たちに合流した、その時だった。
「――あァ? おいおい、見覚えのあるツラだと思ったら……ソウタじゃねえか!」
不快極まりない、傲慢な声が響く。
振り返った先にいたのは、全身をこれ見よがしな黄金の鎧で包んだ男。そして、その背後に控える3人の美女たち――魔法使い、聖女、戦士のハーレムパーティだった。
(最悪だ……。よりによって、一番会いたいたくない奴に出会っちまった……!)
男の名は、勇者ユウキ。
幼少期に同じ村にいた頃から最凶最悪の性格で、ナナミを泣かせ、俺を木刀で殴りつけ、俺の部屋から金品を平然と盗み出したクズ。
極めつけは、俺をオークに囮として放り込み、殺そうとした張本人だ。俺はリャンゾウに助けられて命からがら逃げ延びたが、あの恐怖は今も忘れない。
「生きてやがったのか、この無能のNPCが。相変わらず弱そうなツラしやがって。おい、その隣の美味そうな女はなんだ? 奴隷か? おい、お前。そんな無能は捨てて、この『転生勇者』である俺のハーレムに加わりな!」
ユウキが下劣なニヤケ顔でジュネに手を伸ばす。
彼はこの世界の人間ではない。現代知識とチート能力を悪用して調子に乗っている「転生者」なのだ。
「――気安くソウタ様に触ろうとしないで、この下等生物が」
ジュネの瞳から、一瞬でハイライトが消えた。
全身から、エルフの里を滅ぼしかけたあのドス黒い殺気が爆発する。
さらに、ユウキの顔を見たモモカの表情も、一瞬で凍りついた。
「ハッ、何が転生勇者よ。ヘドが出るわ。……アンタみたいな下劣な男の仲間になるくらいなら、アタシは舌を噛み切って死んだ方がマシね」
「あァ!? 勇者である俺に向かって何て口叩きやがる! おい、お前ら! この生意気な女どもと無能を力尽くで分からせてやれ!」
ユウキの命令で、背後のハーレムパーティが動く。
魔法使いの容赦ない爆炎、戦士の大斧が俺たちに襲いかかる。
(主、やるキュ! 絶対に許さないキュ!)
リャンゾウが電撃を放ち、ジュネが神代級の防御魔法を展開するが――相手は一応、世界を救う設定の勇者パーティだ。数とチート補正の暴力で、ジリジリとジュネの結界が押し込まれ始める。
魔法使いが次の大魔法を詠唱しようとした、その瞬間だった。
――フッ。
「なっ……ガハッ!?」
魔法使いの背後に、影から溶け出すようにしてモモカが姿を現した。
盗賊、あるいは暗殺者としての本領発揮だ。
モモカの放った漆黒のダガーが、魔法使いの詠唱を完璧に遮断し、その魔力回路を強引に逆流させて爆発させる。さらに、驚愕する戦士の懐へ紙一重で潜り込むと、容赦のない急所突きでその機動力を一瞬で奪い去った。
「な、何なんだよこの女……っ! 動きが早すぎて見えねえ!」
ユウキが焦り、聖剣を引き抜く。
モモカとジュネ、リャンゾウが連携して勇者パーティを翻弄するが、ユウキの放つチート無双のゴリ押しスキルによって、徐々に戦況が硬直していく。
「ハハハ! 粘るじゃねえか! だが終わりだソウタ! 昔みたいに俺に泣いて許しを乞えよ!」
ユウキが勝ち誇り、聖剣を高く振り上げた、その瞬間。
――ドゴォォォォォンッッッ!!!
「がふっ!?!?っ」
突如として横から飛んできた「超高速の鉄拳」が、ユウキの顔面を直撃した。
黄金の兜ごと顎が粉砕され、勇者はゴミのように街の壁へと叩きつけられる。
「あ? おい、ソウタ。買い物の途中で騒がしいと思ったら……何だ、この雑魚どもは」
そこには、片手に酒瓶を持ったサイコが立っていた。
その瞳は、完全に「獲物を屠るバケモノ」のそれだった。
「お、お兄ちゃん! こいつら、ソウタ様を侮辱して、殺そうとしたのよ!」
「……あァ?」
ジュネの言葉を聞いた瞬間、サイコから立ち上る魔力が、この街の全住民を絶望させるほどの濃度へと膨れ上がった。
「お前ら、敵か?」
「ひっ……!?」「な、何この化け物……っ!」
聖女や、モモカに傷を負わされた仲間たちが、恐怖でガタガタと震え出す。
壁から這い出してきたユウキが、サイコを見て血を吐きながら絶叫した。
「な、なんで、こんなところに彷徨う裏ボスの剣魔サイコがいるんだよぉおおおおおお!」
腰が抜けたユウキは、両手を前に出して、無様に許しを請おうとするが、
「ちょっ、ちょっと待っ━━」
「死ね、クソ虫」
冷酷な宣告と共に、サイコの大剣が閃いた。
ザシュッッッ!!!
一閃。ただの一閃だった。
【敵即斬】の狂犬の前では、勇者のチート能力も、聖剣の加護も、何の意味もなさなかった。
ユウキの身体は、黄金の鎧ごと綺麗に真っ二つに両断され、血の海へと沈んだ。
「ゆ、勇者様が……一撃で……っ!?」
絶望する魔法使い、聖女、戦士の女たち。
「お兄ちゃん、ソウタ様を狙った敵だもの。全員、消し去るべきよね?」
「おう。連帯責任だ」
「敵じゃないですぅぅぅ!!」という悲鳴を上げる間すら確約されず、サイコとジュネの無慈悲な魔法、そしてモモカの影からの暗殺追撃によって、傲慢な勇者パーティはその存在ごと街のチリへと変えられ、完全に消滅したのだった。
俺の幼少期からの因縁は――狂犬の身内たちの圧倒的な暴力によって、信じられないほどの秒速で終わりを迎えた。
◇
数日後。
俺たちは、大精霊から正式に譲り受けた『エルフの隠れ里の世界樹の森』へと戻っていた。
街での大騒動などどこ吹く風で、俺たちの新しい拠点である特注の巨大な屋敷のテラスで、メンバー全員が集まってまったりとした時間を過ごしている。
「ソウタ、街で買ってきた調合器具、最高に使いやすいわ。ありがとう」
ナナミが、嬉しそうに淹れたてのハーブティーを俺の前に置いてくれる。
「ソウタ様! 私が新しく覚えたお料理も、ぜひ食べてくださいね!」
ジュネが手作りのクッキーを差し出してきて、俺は微笑みながらそれを受け取る。
「おいソウタ、換金した金で買ったこの酒、マジで最高だぜ。がははは!」
サイコは昼間から大樽の酒を豪快に煽り、その横ではモモカが「もう、飲み過ぎよ」と呆れながら、エルフたちから毟り取ってきた国宝級の賃料の目録を眺めてニヤニヤしていた。
「アタシが勇者のハーレムなんて、今思い出しても笑えるわ。ソウタの横でこうして美味しいお酒を飲んでる方が、何百倍も幸せよ」
モモカがふふっと艶やかに微笑む。
「ふふ、みんな本当に賑やかねぇ〜♪」
木陰では、植物の精霊クロリスがのんびりと鼻歌を歌い、
「俺もこの森なら、魔力を気にせず昼寝ができるな」
獣人国王女のブリュンヌが、すっかり警戒を解いて日向ぼっこをしながら丸くなっている。
(主の隣は、誰にも渡さないキュ……!)
リャンゾウが俺の膝の上に飛び乗ってきて、幸せそうに喉を鳴らした。上空では青い鳥のブルが、のんびりと旋回している。
遠くでは、エルフの村長たちが「魔王ソウタ様とその幹部たちが、今日も恐ろしい会合をしている……っ!」とガタガタ震えながらこちらの屋敷を拝んでいるが――まぁ、誤解はいつものことだから放っておこう。
因縁のクズ勇者も消え、国を滅ぼせるレベルの最強の仲間たちに囲まれて。
俺は最高品質のハーブティーをゆっくりと口に含み、深く息を吐き出した。
ひとときのまったりとした時間が流れる中、ナナミが慈愛に満ちた瞳で俺の顔を覗き込んできた。
「次は何処に行くの?」
不意に投げかけられた愛おしい問いに、俺は木漏れ日の差し込む美しい神の森の空を見上げながら、悪戯っぽく微笑んだ。
「何処に行こうかなぁ?」
最強の無自覚チート採取士ソウタと、彼を全肯定して溺愛する最強の仲間たちの規格外な旅は、これからも世界を震撼させながら、どこまでも、どこまでも続いていく――。
(―― The end ――)
本作を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
皆様の応援や、日々の「しおり」「評価」が執筆の大きな原動力でした。無事に最終話を迎えられたのも、読者の皆様のおかげです。
本作はこれで完結となりますが、他にも【異世界ファンタジー】の小説を多数投稿しております。
もしよろしければ、下記のリンクから他の作品も覗いていただけると嬉しいです!
▼【ボルトコボルト】の作品一覧・マイページはこちら
https://mypage.syosetu.com/mypage/novellist/userid/1410197/
また新しい物語でお会いできることを楽しみにしています。本当にありがとうございました!




