エピローグ 花の双子の兄弟日記
【忙しいフィルへ
今日は、僕の番だから、そういう趣旨にしてみる。
エレが見つかったよ。毎回、あの子だけ生きる術ないのどうにかしてほしい。エレって、生活力皆無で、僕らが世話してやらないと何もできないから。迷子になるし、すぐ泣くし、言葉覚える事すら一苦労。
エレは、本家で預かる事にした。ゼロとセットで。
それは良いんだ。むしろありがたい。問題は、エレの迷子癖。
本家は、広いから。エレが迷子になった。
長い木の板のような模様の床。白い壁。その中を走るエレ。僕が見つけると、エレは泣き出した。
楽しそうに走ってたでしょ。流石に、その言葉は出なかった。そういう事で、僕らの新生活。次の僕の回をお楽しみに。
——
エレの世話、大変そう。おれは、今日はミドゥに頼まれた。勉強会。ミドゥが、魔法具技師の免許取るって。何も教える事なかった。だから、試験の日程だけ教えて帰った。
「ありがと。また、わかんないところあったらお願い」
って言われたけど、何も教えてない。これ、どう反応すればよかった?
——
ミドゥ相手なら、わかんないとこあるの? とか、全部自己解決してたじゃん。くらい言って良いと思うよ。相手がエレなら、わかったとかだけど。
僕の方は、ちょっと問題が起きてる。なんか、エレが御巫の娘だとか言い出してきて。外見も何もかも違うのに。なのに、御巫の素質がないとか。
それで、今は本家で匿っているけど、いつどうなるか。
一応、年齢的に、一部の特殊族の教育を受けないといかないから、常に一緒はむりなんだ。ゼロも、ロストの事で忙しい時があって。
エレは大丈夫って言うけど、心配なんだ。
——
それは心配だね。何か解決方法があれば良いけど。
おれは、今日は試験管の頼りがきた。ちょうどミドゥも受けるから、最難関試験にでもしようかな。おれとエレは、最難関試験をするで有名らしいし。
それと、ゼロから連絡きた。
『魔法具技師試験受けたい』
って言われたから
「もう受付終わってる」
って素直に言っといた。ちょうど一分前に終わった。ある意味タイミング良すぎる。ゼロに、次回頑張れって言っといて。
——
だから、あんなに落ち込んでいたんだ。言っといたよ。エレと一緒に免許見せつけて。
僕は今日、勝負ふっかけられた。おんなじくらいに教育受け始めた黄金蝶から。勝負は数秒だったけど。
もう、僕には関わらないんだろうね。陰で、僕が本家の黄金蝶だからとか言ってるかも。みんな、そうだから。
それとエレが、また迷子になったんだ。今度は、オルと一緒にいた。オルが先に見つけてくれていたらしい。オルに感謝しようと思ったんだけど
「エレ、オルにぃと一緒がいい」
ってエレが言うから。エレを持ち帰った。
オルは、エレのために、自室の家具を変えてたんだ。ふかふかのベッド、可愛らしい猫のぬいぐるみ。桃色のソファ。オルに似合わないものばかり。
絶対、エレはオルの部屋に入り浸ってる。僕が授業受けてる間に。
——
それは、そうだと思う。エレ奪われてる。
おれは、今日から試験準備。職人街は、相変わらず居心地がいい。
どれだけ歩いても、疲れない地面。職人達が築いてきたもの。今度は、どの免許を取ろうか。そんな事ばかり考えてた。目の前の試験準備を忘れて。
宿舎は、一人部屋。静かだった。魔法具製作も捗った。
また、エレの設計図で魔法具を作りたい。
——
エレも、フィルに魔法具作ってもらいたいって言ってるよ。
この前の話なんだけど、また、あの黄金蝶が勝負をふっかけてきた。連日で。
毎回負けるのに。
今日は、また、僕の陰口を言っている現場を見た。僕が本家の血筋だから、特別なんだ。自分達と違って、なんの努力もしてないんだ。本家だからって言い気になるな。そんな感じの事言ってた。
そこに、あの黄金蝶が来たんだ。あの黄金蝶は、一緒になって陰口を言うのも、素通りするのもしなかった。
「貴様らは、目に見えるものしか信じないんだな。確かに、あの男は、貴様らとは違う。それがわからんようでは、永遠にそうしているだけだろうな」
そう言っていたんだ。
それで、また、勝負をふっかけられた。だから、快く引き受けて、負かせてあげたよ。でも、いつもとは違う。
「僕はフォル。君は? 」
「イールグだ。本家の、負けず嫌い」
「……まさか、あれ見てたの? 」
オルに、魔法も神聖術も使わない。そのために、一人だけ特別訓練とか言ってね。魔法をずっと避け続ける。意味わからない事させられてたんだ。
エレの前で、負けるのがいやで、意地張ってた。それを、見られてたんだと思う。
「どうだろうな? 一人で抜け駆けとは、さすが本家様。いつもご苦労な事で。などと思っているのかもしれないな」
「そっか。なら、一緒にどう? 」
嘘が下手。能力なんて使わなくても、すぐに気づけたよ。
「貴様に勝つかもしれないのにいいのか? 」
「別にいいよ。僕、そんな事気にした事ないから。それに、競う相手がいた方が、面白そう。じゃない? 」
「面白そう? フッ、そうだな。個でいるより、その方が面白そうだ」
本家の敷地内。授業が、本家の敷地内に建てられた建物だから。いつでも、本家のみんなは、通りたい放題。だというのに、何も気にせずにそんな話をしてたんだ。
ちょっと、悪かったかなって思ってる。
「ほうほう。それはいい事を知った。フォル、貴公がよく口にする面白い。それを、体現して見せてもらいたい」
オルが全部聞いてたんだ。ほんっと、性格悪いよね。周囲から見れば、いい話のように映るだろうこれを、最悪のオチにされた気分。
監視用の魔法具がある、本家の所有地の魔の森。あそこへ連れてかれた。連絡魔法具は持たせてくれたよ。じゃないと、これ書いてないから。でも、武器は木剣。魔法と神聖術を使わないように、封印魔法具つけられた。
あの、もう二度とやりたくない。僕ら全員が言っていたあれ。あの表情変わらない、オルが珍しく楽しそうにしてた。僕らを残して、オルは一人で本家に戻ってる。
「エレの面倒は心配しなくていい」
という言葉を残して。
唯一の救いといえば、あの時の場所よりも優しい場所という事。あそこは、どうして生きて帰れたのか。いまだに理解できてないから。
暗い森の中で、僕らが無事に帰れるように、祈ってて。
——
えっと、その、今日、オルから連絡がきた。一緒に見ないかって。それで、今本家います。
その、頑張って。エレは、元気だから。見ていると、心配する。そういう理由で、ゼロと一緒に遊んでる。
イールグと仲良くなれるといいね。見てるだけでもわかる。彼、本当にフォルを一人の人として見てるって。本家の黄金蝶でも、神聖でもない。フォルを見てくれている。
フォルに、いい縁があってよかった。
神聖術使わなくていい。それでも、油断しないで。無茶しないで。
それと、日数なんだけど、三十日だって。オルが隣で言っていた。あの時ほど長くないけど、帰ったら、いっぱい、甘えていい。
——
ありがと、フィル。今はルーと甘えあってるよ。と言っても、寒くて暖をとっているだけなんだけど。
緑に白が落ちてきている。これ何かわかる? 緑に白が落ちて、白が緑の上に乗ってるんだ。
緑を覆い隠さんとしているんだ。
「……ルー、ここから出たらさ、一緒に本家の長男に一言文句言ってやろうよ」
「それはいいな。ついでに、自分もやってみろと、ここへ連れてくるのはどうだ? 」
「それいいね」
ここでずっと一緒にいて、いろいろ話していたんだ。そうしたら、想像以上に気が合うみたいで。
こんなの、神魔聖以外で初めて。
少しくらい、多めに見て。世界で生きるんだ。なら、少しくらい交友関係を持っといた方がいいと思うんだ】




