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街灯から漏れる微かな光だけが真っ暗な夜道を頼り無く照らしている。

そんな五メートル先もおぼつかないような道に人影がひとつ。

「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・、何で俺がこんな目に遭わなくちゃいけねぇんだよ・・・・・・!」

その人影は息を荒げながらも必死に走る。街灯の頼り無い光が一瞬だけその人影を照らす。

その人影は男のようで整った顔立ちと少し色気を漂わせる派手なスーツを着ている。その男には水商売を営んでいるもの特有の独特の雰囲気がある。端的に言ってしまうと男はホストのようだった。

そんなホストが夜道をひた走る。回りの明るさからかんがみるに今はかきいれ時だろうにそんなことも気にせずひた走る。

すると、彼の背後で光が生まれ、一瞬だけ暗い暗い闇を取り払った。その光源は一直線にホストの背中に向かっている。

「クソがっ!」

避けられないことを悟ったホストはその場で反転し、拳を地面に叩きつける。

すると、拳と地面の接触点から炎が生まれ、ホストの前に壁を形成する。その壁は飛来する何かと接触するが、少し揺らいだだけですぐ元に戻った。

ホストは壁を形成している炎を左腕に纏わせる。そして、その炎が発する光によって暗闇を照らし出した。

だが、その打ち消された暗闇の中に人影はない。だと言うのにホストの背中からは冷や汗が止めどなく溢れだしていた。

その原因は自分に向けられる視線を感じているからだとホスト自身は思っている。ホストと言う職業柄、人から向けられる視線に何が含まれているかそれなりにはわかる。その感覚に従うに、この視線には悪感情などは欠片ほども存在せず、ただただ無感情にホストのことを観察しているようだ。

「どうせこの辺りにいるんだろ! 早く姿を表しやがれ!!」

憤ったホストが暗闇に向けて大声で叫ぶ。

冷静になればわかることだが、普通の人間は、特に今回のような襲撃者は出てこいと言われたからといって安易に姿を表すことはない。寧ろ、自分の居場所をさらすだけだろう。まぁ、自分の居場所のことなどは炎を左腕に纏わせた段階で今更だが。

ホストが戦々恐々と辺りを見回していると、暗闇から一人の男が現れた。

その男はどちらかと言うと少年のような若々しさを持っている。そんな少年はもう深夜と呼べる時間帯だと言うのに高校のものであろうブレザーを着ている。この時間帯においてはそれだけで十分に目立つのだが、少年にはさらに目立つ特徴がある。少年は顔に鬼の面をつけていたのだ。

「さきほどあなたは、なぜ自分がこんな目に・・・・・・。と嘆いておられましたが、理由などあなたが一番良くわかっていると思います」

鬼の面の下から声が聞こえてくる。

「知らねぇよ! 俺がなにしたってんだ!!」

「腕に炎を纏わせて何をしたはないでしょう。そんなことができることが問題なんですよ」

少年は激昂するホストにも淡々と返す。少年の声からは相変わらず感情が読み取れないが、少しだけ嘲りが混ざっているような気がする。

さっきホストが理由を聞いてきていたが、少年の言った通り、腕に炎を纏わせても顔色を変えないのは人間らしくない。ホストが襲われた理由などそれだけで十分なように思えた。人間は根本的に自分とは違うものを恐怖する生き物なのだ。

「一応ルールなんで言っておきます。投降してください。そうすれば、痛いのは一瞬で済みますよ?」

深く息を吐いたあと、少年は感情の読めない声で警告を発する。

その声からは、従わなければ警告した通りのことを一欠片ほどの躊躇もなく実行するであろうことを匂わせる凄みがあった。

ホストはその凄みに一瞬怯んだが、すぐに格闘技の構えのようなものをとる。心得でもあるのか多少格好はついていた。

「捕まっても捕まらなくてもどうせ結果は同じだろ。なら、俺は男らしく戦う道を選ぶ」

「格好良いですねぇ。まぁ、最後通告は致しましたので。これでさよならとさせていただきましょう。サヨウナラ」

その言葉を少年が言い切る前にはホストの男は駆け出していた。

ホストの感覚では、まず少年には勝てない。ならば、虚をついた先手必勝しかない。そう思っての行動だった。少年が言葉を言い切る頃にはホストの手が少年の首に届く位置にあった。

あと少しで届く。そう考えた直後。軽い閃光がホストの視界にとらえたかと思うとホストの意識は刈り取られていた。


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