8話・純一ノ過去
考エルノガモウダルイ、生キテイレバ何カアルノカナ………
俺は昔、野球をしていた。
小学校五年生から中学二年の夏迄の三年とちょっとの間である。
本当は野球等興味はなかった。何故俺が野球をするはめになったのか、其れは親のせいだろう。
俺は小学四年生の時何かの係をしていた。その係の仕事内容は掲示物を貼ったり配ったりする係である。
俺は年明けのある日一枚の勧誘チラシが机の上に置いてあった。
本来ならば其れは掲示物として貼れば良かったのだろう。しかし、俺は持って帰ってしまった。
そして、その日の夜。
『あんた此れやりな』
っと言われた。
俺はいつも家でだらだら過ごしていた為、親は俺の事をうざったく思っていただろう。
無論俺は野球等やりたくない。野球中継が延長するのは俺としては腹が立つ程憎かった。
しかし、俺の幼なじみが野球をやろうとなど言ってきたために俺も野球をやることとなった。
初めて来たとき、その少年野球チームにはなんやかんや知り合いが居た。そして、余り会いたくない知り合いも居た。
この時既に帰りたかった。
月日はたち、グラウンドの雪は溶ける季節。
俺は先ず守備位置を決める事になった。他のメンバーと一緒決めるのだ。
やりたいポジション等は無かったが外野だけは嫌だった。でも結局俺は外野の守備位置に定着した。
其から試合にも出れるようになったが………俺は自主トレ等は一切せずグータラしていた為、中々試合にも出れなくなった。
まぁ自分が悪いんだけど。
幼なじみは違うチームでレギュラーをとり、俺は補欠に入れるかすらわからない状態である。
新しく入る連中がレギュラーになったとき俺は流石に野球なんか辞めようかと思った。
でも辞めれなかった。
理由は単純、俺はその頃、友達が居なかった。
そんな中、野球は誰かとの絆があるように見えて、辞めたらその絆がなくなり俺は独りぼっちになるんじゃないかと不安になり辞めることが出来なかった。
でも練習しようという気持ちも生まれなかった。
そして、いつの間にか監督やコーチから役立たずという烙印が押された。
チームメイトの一人にも雑用タヌキというアダ名もついていた。
コーチが俺の事を見放した瞬間があった。
『お前ら一週間死ぬ気で素振りしろ』
此れを聞いても俺は練習等しなかった。
そして、一週間後、コーチは皆が素振りしているか確認してきた。
一人一人見て回り、誉めたりしていた。
しかし、俺の時。
『全然やって……………』
俺の手を見て強気で言い、顔を見た瞬間何も言わずそっぽ向いた。
この時確信した。
俺はもう期待などされてないなっと。
まぁ自分が悪いんだけど。
嫌なことばかりだろうな。
でも良いこともあった。
俺の中で唯一得意なのはコントロールのみ。ある日的当てゲームのような事をしていたとき、唯一自分だけ当たるという快挙を成し遂げた。
距離はピッチャーからキャッチャー迄の距離である。けして近くはない。
試合でスリーベースヒットも打ったこともある。
唯一俺が野球をしていた中で一番輝いた瞬間だっただろう。
中学は地獄しかなかった。
ふと昔を思い出しながら水浴びをする純一。そして、新城、中山、庄司の合わせて四人。
「若気の至りだなぁ」
そう言って純一は川の中にある手のひらサイズの石をおもいっきり投げた。
昔以上にスピードある球である。
水浴びを終えて服を着ようと思った純一だったが。
「あれ?」
何か足りなかった。
「なぁ庄司、俺のズボン知らね?」
「いや知らないけど」
「新城、ズボン知らね?」
「川ん中じゃね」
「中山」
「さっき和田が持ってた」
「えっなんで?」
するとタイミングよく明恵が現れる。ついでに燕も、そして、なぜか燕は純一のズボンを履いていた。
「ちょ俺のズボン!」
「何?だって燕下半身裸なんだよ!ズボン位いいじゃん」
「良くねーよ、おれボロボロのワイシャツとパンツだけだよ!変態だろ」
笑う明恵。
「ちょ返せ!」
すると燕は逃げ出した。
「返してぇ、かーえーせー」
追いかける純一、今の彼も何処か輝いていた。