31 制作ミス
「ああ、本なら、今日は俺が拾ってきたぜ」
浪人生君はそう言い俺に一冊の本を渡す。中世ヨーロッパを連想しそうな、魔法使いらしい古びた分厚い本だ。タイトルその他一切の文字やイラストがないため本の上下左右がわからん。これ制作ミスだろ。
本を当てずっぽうの向きで開き、中に書いてある文章に目を通す。この世界にまつわる法則が書かれているようだ。
始めの数ページを一読し、まとめるとこうなる。
・この時間が止まった世界は一人の魔王使いによって造られた
・この本は、赤魔法使いの物であり、この世界に来た赤魔法使いが初めに発見できるように置かれている
・この本は、赤魔法使いが新たに気づいた、この世界に関わる事実を自動更新する
・この本に魔法を当てた者は、自分が使える魔法を確認できる
・新しい魔法使いは、ランダムなタイミングでランダムな若者を呼び出す
・この世界で六回死ぬと、この世界にいたあいだの記憶のみ失い、この世界に来られなくなる
・どの色の魔法を使えるかは、その人物の思想しだいである
・赤魔法使いと青魔法使い、片方が全滅した場合、生き残った方の思想を現実にする
・現在、赤魔法使いは三人である
他にも色々と書かれているが、赤魔法は質より量を重視する魔法で、青魔法は量より質を重視する魔法、などのどうでもいい情報が多かった。この世界が人工物とわかっただけでもいいが。
生き残った方の思想を現実にするっていうのは、赤魔法使いが全滅したら青魔法使いは現実で魔法が使えるようになって、青魔法使いが全滅した場合は・・・ん? 何が起きんだ?
前話、公開から一時間で140アクセス頂きました。
いやはやビックリです。この質も量も足りない作品に、まだ読者さんがついてくれているとは。
感謝の念が尽きません。




