11 多色ボールペン
俺が隠れた理由は、教師が来た可能性があったからだ。一介の高校生である俺にとっては、教師の存在は大きい。睨まれないに越したことはない。
そして侵入者が教師ではない以上、隠れる理由はなくなった。むしろ話をつけておいたほうがいい相手だろう。
疲れて少し痙攣する両腕に鞭打ち、体を持ち上げ屋上に上がる。
彼女がタンクのはしごを降り始めたので、無音で素早く近づき、はしごの下で待ち構える。
彼女がはしごを降り終え、屋上に足を付いたと同時に、俺の多色ボールペンのペン先の逆を彼女の背中につきつける。
「動くな」
できるだけ威厳を孕んだ声音でそう告げると、彼女の肩がビクンと跳ねる。
「じゅ、銃・・・・? 本物・・・?」
いえ、ペンです。銃って勘違いするようにシチュエーションを整えたけど、背中に当たってるのは銃口にしては小さいよね。ものすごくビビってるなあ。主導権的なものが握れたから聞きたいことを聞こう。
「質問に答えろ。お前はここの生徒か?」
「・・・・・・・」
彼女は何か他のことを考えているように黙り込む。主導権を取りたいのだろう。
「早く答えろ」
カチ。緑色の芯がペン先から出てくる。
「い、今のは撃鉄を倒した音ですか・・・・?」
いえ、緑をノックした音です。
「背中に穴、空けたくないよな? 質問に答えろ。お前はここの生徒か?」
相手の問いには答えず、なるべく嘘はつかない。彼女が今後味方になった場合において信頼を得やすいように。俺はあらゆる状況を見据えているのだー。
「・・・・そうです」
苦渋の決断をしたように、ようやく答えた。ハードルの低い質問をぶつけたつもりなんだけどなあ。接し方を微調整していかないと。
そろそろ、この小説に誰も見向きもしなくなるかなーって思っています。
むしろよくここまで、数十人の方からアクセスしていただけてられるなと思っています。
皆様ありがとうございます。場合によっては「ありがとうございました」かな?




