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猫

毎朝、6時に鳴るアラームで一旦目が覚める。だけど体が重い…。起き上がれない程の辛いだるさが俺を襲う。何か重い何かが乗っているかのように俺の体は動かなかった。


鳴りやまないアラームを止め、起き上がろうと必死に抵抗するが起きれない。辛かった。

起きたいと必死に思っているのに体が起き上がらない。その現実が毎朝続いている。


あの頃は毎朝起きられて顔洗って、朝ごはん食べて、学校に行けていたのに…

今はこんなに惨めになっている。でもどうすることもできなかった。ただただ辛いだけ。


するとガチャっとドアが開く。親父だった。


「どうだ?調子は」


「大丈夫」


いつものように「大丈夫」と声が出てしまう。やっぱり心配をかけたくなかった。

親父は「そうか…」と言うだけだった。でも少し寂しそうだった。


そう言った後、親父は何も言わなかった。俺は何か言おうと必死に考えるがムズムズするだけだった。

今の俺には何かを言う資格がない。考えるけどその考えが頭の中で回る。


親父はドアの方に向かう。去り際に「なんかあったら言えよ」と言った。でも俺は「うん」としか言えない。


やっぱり素っ気なくなって本当のことが言えない。本当は大丈夫じゃないのに言えない。ダメなんだ。心配かけたくなくて強がってしまう。それのせいでまた心配をかけているのはわかっている。わかっているのにそうなってしまう。


ガチャっとドアが閉まり、この部屋には静けさしかなかった。


辛い。本当のことを話したいのに言えない。やっぱり心配をかけるんじゃないかと思うと一言が出ない。


すると頭の中にあの親父の寂しそうな顔が残る。

「ごめん…ごめん…」

そう言いながら布団の中に潜る。


親父だって俺が苦しんでるのに気付いていているはずなんだ。でも俺は何も言えない。親父もこんなところを見たくないはずなのに……


どうして俺はこうなんだ。


「はぁ」

ため息を吐く。


目を瞑るとまた親父のあの顔が思い浮かんでくる。「どうして言えない…?」という言葉と「苦しい」という感情が交互に頭の中で繰り返される。


布団の中で頭を抱えていた。


何もかも忘れたかった。この苦しみもあの親父の顔も。そう思ったら「どうしてこうなったんだろう…」「どこで間違えてしまったのだろう…」と頭の中で出てくる。考えても答えが出ないのにそうやって考えてしまう。


「わからない…わからない…」


ただ自分を自分で苦しめてるに過ぎなかった。間違えたのは自分だし、こうなったのも自分のせいだ。結局はそうなってくる。できるなら間違えたところからやり直したい。別の選択をしてこんなに苦しまないようにしたい。でもやり直せない。


そんなことわかっている。わかっちゃいるのに…でもどうすることもできない……




何時間経っただろうか…いつの間にか寝てしまったようだ。外からはカラスの鳴き声が聞こえる。


体は重くなかった。でも心の中は変わらず、やっぱり辛かった。

「このまま目が覚めなかったらよかったのに…」


目が覚めなかったらこんなに苦しむこともないと楽になりたかった。楽になればこの苦しみから解放される。


自分の力で楽にはなれないからこうやって勝手に楽になる方法を考えてしまう。

自分では怖くて何もできないから…


あの頃はそんなこと考えもしなかったのに…俺は変わってしまったのかな…

臆病になって…本当のことを話せなくて…


本当に何をやってるんだろう…


自分の手を眺めながら自分の弱さを感じてしまう。

気を紛らわすために何かしようとスマホに手を伸ばす。何かしようって何をやっても楽しくないのに…


ちょうど今、スマホが震え通知が入った。確認してみると白川さんだった。


「見て!猫ちゃんが学校に来ていたよ!!」


そのメッセージと共に猫と白川さんのツーショット写真が送られてくる。

喜んでいる白川さんの顔とは裏腹にその猫は少し嫌そうな顔をしていた。


なんて送ればいいんだろう…どうやったら迷惑じゃないかな…?打っては消してを繰り返してこれだと思った返信を送る。


「猫、嫌そうな顔してない?」


変なことを送ってしまったんじゃないかと落ち着かなかった。

返信が来ないこの間が怖い。変だったかな…それで傷つけていないだろうか…そんなことを思って怖かった。だからそのメッセージを消そうか迷う。


だけど少しするとスマホが震える。返信が来た。


「ええ?私には喜んでいるようにしか見えないなぁ(笑)」


その返信を見て少しホッとする。傷ついてはいなさそうで少し安心した。


とりあえずよかったがこの返信をどうするか考える。

どうやれば変にならないか。このまま行くなら猫の話題で行けるか?でもどうやって話を続けるか…


一難去ってまた一難だ。どうやったらいいのかまた不安になる。


また打っては消してを繰り返す。


「そういえばその猫はよく来るの?」


必死に考えてこれだった。話を遮るのもよくないしかと言って無視は以ての外。話を続けるにはこの手しかなかった。


「いや。今日が初めてだよ。つい見かけたから近くに来ちゃった」


その返信を見てそういえばこんな猫見たことなかったから当たり前かと思った。俺だって今は行けてないけどあの頃は行けていた。そうあの頃は…


そう思うとあの頃がやっぱり恋しい。こんなことにならなけば…とやっぱり思ってしまう。

なんでこんなことに…と何度も後悔している。親に心配をかけて何もせずただボーっとしてるだけだし惨めだ。そんな自分がやっぱり嫌いだ。


「はぁ」

息を吐きスマホを見る。


今は返信をどうするか考えよう。だけど何も思い浮かばない。


やっぱりごめん。素っ気なくなって「そっか」となってしまう。それしか出せなかった。

後悔の気持ちからスマホを伏せて布団に入ってしまう。


「ごめんなさい…ごめんなさい…」


もう何もかもが怖い。スマホを触ることすら怖くなってしまった。ダメなんだ。白川さんはせっかく俺に対して話してくれたのに…素っ気なくなってしまう。それで傷つけることが怖いんだ。でも考えて送信したメッセージが傷つけてしまうんじゃないかと不安になる。


どちらにしても怖いんだ。傷つけるんじゃないかって……


聞こえてくるカラスの鳴き声がさらに俺を責めているように聞こえる。

誰かに助けてほしい。でも…でもできない。心配をかけたくない。


ふと周りを見てみると見慣れた机には途中でやめた勉強した跡がある。置きっぱなしのシャーペン、書いてあるけど問題しか書いてなく答えが書いてないノート。


あの頃はテストが近くなると必死に勉強したのに今は何もできていない。


俺は途中でなんだってダメにしてしまう。動けないんだ。まるでガソリンが切れた車のように動かなくなってしまった。


頑張ろうって思っても中々、体が動かない。無気力なのかもしれない。

そんな自分が嫌で勝手に机の上ノートから目を背けていた。


そんなことを考えているとスマホが震える。


「かわいかったよ!」


白川さんの顔は見えないが無邪気に笑っているところが想像できた。


楽しそうだ。その思いが頭の中で回る。

俺だってこんなことで笑いたかった。でも心から笑えない。それは心の奥底で人が怖いっていうのがあるからだと思う。


羨ましかった。白川さんやいつも通り学校に行けて笑える人たちが。


こんなこと思うのはよくない。よくないってわかっているのにそう思っちゃう。

白川さんはただ楽しいことを話しているのに…


あの頃は今の白川さんのように何でもないことで笑って過ごせていたな…

だからこそ羨ましい気持ちが出てくるんだろうな…


そう考えると何も返信できなかった。素っ気なくなって傷つけてしまう。嫌な気分にさせたくない。そんな気持ちのせいで送信のボタンを押すことが怖くなった。


結局、何も返信できなかったのだった。

見てくれてありがとうございます。

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