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僕の麗しき箱庭  作者: まくのゆうき


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夢のお告げ

勢いで開催することになった簾教室は思ったより好評だったようだ。

自分の子供が、僕が本当に簾の作り方を教えたこと、そしてこれを大きくすればいいと言われたと、作ったものを持ち帰ったことで親たちも子供が同じものを作れると喜んでいるらしい。

そして僕は時々途中でどうしていいか分からなくなったと作り方を聞きに来た子にも、僕なりに丁寧に説明をした。

僕の耳に直接入るわけではないが、どうも両親がそういう感謝の言葉をかけられるようで、鼻が高いと僕を褒めてくれた。

日頃の行いのよさが良い形で返ってきたのはとても嬉しく、僕は両親からの褒め言葉を素直に受け取ることにした。



そんな日々を過ごしていたある日、僕は突然前世の夢を見た。

前世でそれなりの大人となってから過ごしていた日のことだ。

時々、前世に部屋でパソコンや本に向かって過ごしていた日のことや、プラモデルを作っている時のことなどを夢に見ることはあったが、写真を見るくらい一瞬のことで、特別なエピソードを思い出すようなことはなかった。

夢に出てくる僕は、大抵自分の部屋にいて、そこには僕しかおらず、部屋以外の場所に出かけることもなく、ただ僕はその部屋でどう過ごしていたのかということが出てくるだけだった。

そのためか未だに前世の全人生について思い出すことはできないし、一緒にいた人たちの名前なども思い出すことはできない。

ただ、元々持ち合わせていた知識や技術には助けられている。

もしかしたら思い出したくないことでもあるのではないかと思うが、引きこもりだったという記憶はあるので、引きこもるきっかけを思い出すことを僕の脳が拒んでいるのかもしれない。



前世でも手先だけは器用だった。

人間関係の構築が苦手な僕が得意だったものは工作だ。

プラモデルを作るところから工作をはじめた僕は、いつの間にかあらゆるもののミニチュアを作るようになっていった。

僕自身の評判はともかく、作品の評価は高く、イベント会場や通信販売での売上も好調だった。

最初は用意されたもの、小物だけを作っていたが、気がつけば家、町並みと、だんだん規模が大きくなっていった。

そしてオリジナルの商品を作るようになり、僕はジオラマだけではなく、パーツを作って販売するようにもなった。

家一つだけ、家具一つだけ、その方が組み合わせが自由になるので購入者からすると都合がいいのだ。

そういう活動をしているうちに、時々大きな金額で頼まれた通りのジオラマを代わりに作成することもあった。

その際は、もちろんパーツで会っても中まで精巧に表現するようにしていたのだが、それが好評だったこともあり、同じ会社から何件もの依頼を受けたこともあった。

その努力の甲斐あって、僕は地味に知られる存在になっていった。

芸能人のように全国で有名になったわけではなく、ごく一部の狭い同じ趣味を持つ人たちの中でというだけである。

企業から声がかかったということが僕のステータスを大きく上げていたのだ。

ちなみに彼らも僕もお互いの本名など知らない。

ただ彼らは僕というよりも、僕の作品を愛し、大事にしてくれている人たちという感じで、僕は彼らと友人でも何でもなかった。

強いて言うなら、彼らは僕のファンであり顧客である。



僕は細かい商品を手作りして販売することでお金を得てきたらしい。

そんな記憶がふと蘇ってきた。

記憶は断片的だが、僕はどうやら引きこもってプラモデルを作ったりしていただけではなく、それを売って小遣い稼ぎをしていたようなのだ。

積極的に働いていなかったらしい僕は小遣いを稼ぐために人が苦手なのにイベントに出品したりしていた。

イベントに来る人は好意的な人が多かったのもあり、引きこもりの僕でも何とか対応ができたようだ。

それでも会場までの行き帰りの電車なんかはやはり苦手だった。

人ごみの中にいる多くの人が僕に好意的な訳ではない。

別に絡まれたり敵意を向けられたりしたわけではないが、やはり人が多いのも、知らない人が近くにいるのも苦手なのだ。

だからイベントに出品するとために僕が会場に行くことの苦痛、実物を見てもらいたい、見た上で決めてもらいたいという思い、人ごみにまぎれて怖いと思いながら会場に行く必要はないし通販で充分ではないかという思いが常にせめぎ合っていた。

今回の夢ではそんなイベントの風景や、嫌いな満員電車、そして僕の顧客たちが夢の中に現れたのだ。

正直、僕が覚えている限りの夢では初めてのことだった。

そうはいっても急に彼らの名前を思い出せるわけではないし、僕は夢の中で彼らの名前を呼んだりしていたわけではないので、完全に思い出したわけではない。



目を覚ましてから、前世の僕は本当にコミュ障だったんだなと、あまり残っていない記憶が少し戻ってきたことに思わず苦笑いした。

一方でそんな僕がよくご近所の子供たちと、この世界で初めて出会った両親と、程よい付き合いができているなと自分でも驚いている。

まあ、中途半端に記憶があって、人付き合いに関しては思い出せることが少ないのだ。

どこかに過去を変えたいという気持ちがあったのだろうから、できることが増えたのはいいことだと思うしかない。

引きこもりだったのはコミュ障だからだろうと、転生当初は思っていたが、もしかしたら本当はもっと根深い原因が潜んでいるのかもしれない。

だがそれはもうどうでもいいことなのだ。

今の僕は引きこもりではないし、引きこもっている場合でもない。

必要に迫られれば人付き合いもできるし、人前に出るのが苦手な自分が子供たちの工作教室の先生までやってのけたのだ。

今の僕は充分なくらい頑張っていると自分では思っている。

誰にも迷惑にならないのだから、妄想の中で少しくらい悦に浸っても許されるはずだ。



そしてこの夢を見たことで僕はこの特技をこの先の就職活動に利用してみようと思いついた。

こんな夢を見たのはきっとお告げに違いない。

僕はきっと前世のように仕事がしたいのだ。

それが職人街で見た職人の仕事をしている姿と重なった気がした。

街のジオラマほど大きなものを作ることはできないし、プラモデルのように存在しない者は無理だが、アピールできる作品があるならそれを見せるくらいはした方がいいだろう。

できればカバンに入れられるサイズで、軽いものがいい。

時間はまだある。

僕は早くその職に就くため、自分をアピールするために何を作ればいいのか、周囲を見渡して考えることのしたのだった。


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