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僕の麗しき箱庭  作者: まくのゆうき


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簾作り教室

僕がお昼を済ませて門のところに行くと、何と彼の声掛けと、子供の伝言によって貧困地区の子供のほとんどが集まっていた。

結構な大所帯だ。

採集日に集まる子供の数より多い気がする。

この区画にはこれだけの子供がいたのかと正直驚いた。

とはいえ皆森には僕より慣れているし、誰かが迷子になるとかいう心配はない。

迷子になって探されるのはむしろ僕だろう。

とりあえず僕は門を出たところで今日は何をするのか説明することにした。


「とりあえず、これから材料探して実物を作るのは無理だから、簡単にやり方だけ教えるよ。とりあえず森に行こうか。使い物にはならない小さいやつでも、作っているのを見た方が、やり方わかりやすいと思うし」


本当に教えてもらえるのだと僕の話を聞いた子供たちが目を輝かせた。


「おう!」

「そうね」


その返事を聞いた僕は森に足を向けていった。


「じゃあ、森に向かうよ」


子供たちはワイワイと話しながら僕の後についてくる。



「なあ、何を拾ってるんだ?」


僕が足を止めては小枝を拾い集めていることに気がついた兄貴分が僕に聞いた。


「落ちてる枝だよ」

「それが材料なのか?」

「これだけじゃないけどね。あと、こんなに細くて短いので作っても、洗濯物は干せないよ。でも見本を作るのにはちょうどいいから」

「そうか……」


自分たちに教えるための材料を一人に集めて持たせていることを気にしたのだろう。

彼は突然皆に向かって声をかけた。


「皆、ちょっと聞いてくれ!なんか俺たちに作り方を教えるために必要なものがいくつかあるらしいんだ。皆で手分けするなりしてそれを集めたいんだけど協力してくれないか?」


彼がそう声をかけると、僕がそんなことをしていると知らなかったらしい子供たちは驚いて僕を見た。

そこで彼の提案を受けて見本となる小枝を見せて皆にお願いすることにした。


「作り方を教えるために、これくらいの小枝と、ツタが必要なんだ。僕だけだと皆の分は持ちきれないから、手伝ってほしいけど……」


僕がそう声をかけると子供たちが一斉に散らばって小枝を集めはじめた。

僕も拾いに行きたかったがすでに結構手元に小枝があるため、それを抱えるのが精一杯である。

だがここの子供たち、さすがに毎日のように遊んでいるだけのことはある。

ほどなくして子供たちは僕の見せたのと近い小枝を拾って帰ってきた。

見る限り全部合わせれば皆に教えるのに充分な量である。

拾えなかった子ももちろんいたが、それに関しては皆で再配分すればいいだろう。

拾ったものは僕が教えるために使うと言ってあるので、拾った分だけその子が使うとは言っていない。



「ツタも使うのか?」


僕の足はツタの取れる崖下に向かっている。

彼はまた皆で裁量を集めようと思ったのか、僕に必要なものを訪ねてくれたので、僕は材料について答えることにした。


「うちはロープとか糸とか買えないから、僕はツタを使ったよ。これはヒモとして縛ることができるものなら何でもいい」

「じゃあ、ツタになるな」


彼のところもやはりこのためにロープを購入できるわけではないようだ。

説明すれば同じ結論にたどり着く。

そこに僕は一言付け加えた。


「ツタは小枝ほど必要ないから、皆で集めに行かなくても大丈夫だよ」

「そうか」


考えを読まれたことを理解したのだろう。

彼は皆に声をかけることなく僕が必要な量のツタを引っ張り下ろして切っているのを黙って見ているだけだった。


「とりあえず、これくらいあれば説明できるかな」


僕がツタを集め終わったと聞いて彼は目を輝かせた。

ここまでは材料集めしかしていないので当然だろう。


「いよいよだな」

「どこか広い場所で、みんなが僕の作業を座って見られるとこに行こう。けっこう歩いたしね」

「じゃあ、川に行くか。喉も乾いたし」


川ならば河川敷で教えればいい。

大きい石は作業台にもなるし、椅子にもなる。

下に置いても土の上に置くより汚れは少なくて済む。

とても良い選択だと僕は思ってうなずいた。


「そうだね。じゃあ、川に行って休憩したら始めよう」


僕が彼に話しているのが聞こえたのか、別のところにいたはずの子供からも歓声が上がった。

僕は緊張しながら彼らの先生役をしっかり努めなければと考えるのだった。



僕は小枝を抱えている子供たちに拾った小枝を一か所にまとめておいてもらうように頼んだ。

そして、皆が川で水を飲んだり休んだりしている間に子供たちの人数を確認して、皆で使えるように再配分して固め直してから声をかけた。


「準備できたけど、はじめていい?」

「よろしくお願いします」


皆どうしていいのか分からないためとりあえず集まって立っている。

僕はとりあえず一回やっているところを見せることにした。

座ってもらってもよかったがそんなに説明は長くない。

それにこれから材料を配るのだから、一度座らせてまたこっちに呼び戻すのは面倒だ。


「じゃあまず、必要なものから。家にあるのは、太い木の枝と、使う木の枝より細くて木を縛っても緩まないヒモの代わりにツタを使ったものです。今日はこの細い木の枝と、木より細くするために、ツタを縦に細く割いたものを使います」


僕は枝をツタで縛って繋げる方法を彼らに教えた。

繋いだものを横にして、本来の簾のような形になるようにして見せた。


「これをどんどん長くすれば完成。皆の分も用意したから一緒にやろう。実際にやってみた方が覚えられると思うし教えやすいから」

「はい!」


前世でも人に教えるようなことはしたことがないのでこれは初めての経験である。

前でしゃべるのだって本当は勇気がいるのだが、そこは何とか頑張ってみた。

まずは固めて置いた小枝とツタのセットを一人ずつ持っていくように指示する。

そして僕が見える作業のしやすい場所を探して座ってもらうことにした。

皆が着席して僕の方を見ていることを確認してから、子供たちに見本を見せてはやらせてということを繰り返し、後は同じことの繰り返しだよと伝えて、僕の説明なしにできるようになっているかどうか、渡した小枝とツタセットを使って実践してもらう。

その間、僕は子供たちを見て回り、作り方のアドバイスをしたり、できないところを手伝ったりしていた。

感じは小学校の工作教室に似ているかもしれない。

そうこうしているうちに皆が無事に教えたものを形にすることができた。



「こうやって作ったの持って帰れば、作り方忘れても、見本を見て思い出せるでしょう?」


小枝で作ったものは味わいのあるコースターのようになった。

乗せる面が平らではないのでコップを乗せたら倒れるだろうが、それでも今日教えた子供たちはできた者を見て満足そうにしていた。


「じゃあ、あとはそれを大きい枝で根気よく、すごく長く作るだけだから、もう大丈夫そうだね。何か質問はある?」


そう聞いたら一人が手を挙げて発言した。


「本当にこれで布が干せるの?」

「もちろんこの長さの枝じゃ駄目だよ。もっと長い枝をこれよりたくさんつながないと。たくさんつないで大きなものになる前に布を乗せたら折れちゃうからね。他に質問は?」


とりあえず手元にできたものを見たり、僕を見たりしながら何か考えているようだがすぐに浮かばないらしい。


「じゃあ、今日はおしまい。後は長い枝を探す根性と、長い枝をこれと同じようにつなげていく根気があればできるよ。だって、皆それ、自分で作れたでしょ?それが大きくなっただけだから」


こうして僕の簾作り教室は終了した。

僕はそのまま帰ったが、一部の子は枝を拾うために森に入って行ったらしい。

早速作り始める子と、そこに至らない者はどこにでもいるのだ。

それがこの先の明暗を分けることもあるのだが、そんなことは、大人を経験していない子供には必要のない情報だろう。

好きなようにやって自分で経験した方がいい。

僕はそんな保護者のようなことを考えながら家に帰ることにしたのだった。

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