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僕の麗しき箱庭  作者: まくのゆうき


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新築住居内覧会

僕はこの世界の建築に衝撃を受けていた。

まさか家の建て替えで想像を超えることが起こるとは思っていなかった。

今回ばかりは、父親が誘ってくれたことに感謝しなければならない。

ここは前にいた場所より文明が発達していない、教育が行きわたっていないというのはおそらく間違いない。

けれど僕はさっき、文明以上のものを見た。

家が一瞬で撤去され、新しい家が空から降りてくる、そんな光景を見たのは初めてである。

そしてここに暮らしている住人たちからすれば、それはごく当たり前のことで、完成は上がるが、それ以上のものはないらしい。

前世の世界で言うなら、花火大会を見るのと同じ感覚なのだろう。

そして、この世界にはまだ僕の理解していない制度や仕組みがあるのではないかと考えを改めた。

最近、僕はこの世界に馴染んでしまっていたこともあり、知らないことはないような気になっていたのだ。

帰り道だけでは質問し足りないくらい聞きたいことがたくさんできた僕は、気がつけばずっと父親に話しかけ続けていた。

僕も今日の建て替えを見て興奮してしまっていたのだ。



興奮冷めやらぬ中、昼食を済ませた僕と父は、今度は新築の家に向かった。

見学は家の人の好意なので、職人の作業が終わり、住人が確認した後、荷物を運びこむ前のタイミングにだけ見せてくれることが多いという。

もちろん、家の中に入られるのが嫌だという住人の場合は見せてもらうことができないそうだが、大抵は見学の時間を作ってくれているそうだ。

そして、新しい家を見学し、自分が家を建て替える際の参考にしたりするのだという。

僕は父について歩きながら、たくさん話をした。

父は僕が新しい家に興味を持ったことが嬉しかったのか、今日は口数が多い。


「ここだな」


新築の家の前に着くと、すでに数人が入口と思われる所から少し離れて列を作っていた。


「もっとたくさんの人が来るのかと思った」


高台のお祭り騒ぎを考えたらかなり少ない。

もちろん住宅地だから食べ物の販売が来ているわけでもない。

長時間並びたいわけでもないし、人ごみの中で見たいわけでもないのだから人数が少ないのが悪いことではない。

僕が不思議そうにしていると父は言った。


「そうだな。内覧に参加するのは、家を建て直す予定があるとか、関わった職人の技術を学びたいとか、そういう人が多いからな。それに知り合いなら後日、家に呼んでもらえるだろうから指定された時間に来なければいけない内覧会に参加する必要はないんだ」

「父さんは職人になりたかったの?」


僕の質問に驚いたのは父だった。

想像もしていない言葉だったようで、内容を聞き返された。


「いや?何でだ?」

「だって……」


家に建て替えのお金などないし、今の生活を見ている限り、これからもそんなにお金を貯められるとは思えない。

生活に必要な狩りの道具ですら妥協したものを使用し、その分、身の危険と引き換えにしているくらいだ。

だから、僕は父が先ほど言った後者に該当するのではないかと思ったのだ。

もし父が職人になりたかったのに、生活のために諦めたのだとしたら、それでも職人の技術を見たいと考える気持ちは分からなくない。

しかし、帰ってきた答えは意外なものだった。


「それはだな。いつかは、と、まあ、夢はあるからな。新築なんて叶わないかもしれないけど、こう、もしこれが自分の家だったらとか考えながら見ると、楽しい気分になれるんだ」

「そうなんだ」


父はどうやら、買うつもりもないのにモデルルームをやたら見に行く人や、新聞のチラシとして挟まれている物件情報や間取り図を見ながら妄想をするタイプの人間らしい。

この世界でそのようなものは見たことがないが、きっと賃貸情報紙を渡したら一日中、それだけで時間を潰すことができるに違いない。



内覧を行っている家だが、一度に入れる人数は限られているため、希望者の数人が中に入るよう案内された。

列を管理しているのは作業をした職人の関係者らしい。

慣れているのか無駄がない。

そしてしばらくして、出てきた人数に合わせて、次に待っている人が中へと案内される。

列はどんどん短くなり、いよいよ僕たちの順番がくる。


「よろしくお願いします」


案内してくれた人にそう言って、家のドアをくぐった。

さすが真新しい家、物は何も置かれていないが、棚などが備え付けられていて便利そうである。

玄関以外に、ドアはなく、代わりに建物の真ん中に間仕切りの代わりになるような壁があり、その壁が収納になっていた。

壁は太い丁の字になっているようで、広いところがリビング、狭い片方が寝室、もう一つが子供部屋、もしくは客室だろうか。

この造りだと、そのくらいしか浮かばない。

ちなみにうちとは違い、天井は平らで、柱などは見えないので、おそらく壁面と中央の丁字の壁が柱の代わりになっているのだろう。

一通り、自由に見せてもらった僕は父親のところに戻って言った。


「父さん、僕、外側も気になってるんだけど」

「そうか……」


そう言われ、父は僕が帰りたいと思っていると感じたのだろう。

父が名残惜しそうにしていると、そんな僕たちに職人らしき男が話しかけてきた。


「外側が見たいかあ。俺が案内してやるよ。ぐるっと一回りしたら父ちゃんとこに戻してやる。どうだい?」

「いいんですか?」

「おうよ!あんたはどうだい?」


僕が思わず興奮して返事をすると、男は父親にもきちんと確認する。

すると父は男の身なりなどを少し見てから頭を下げて言った。


「すみません、お言葉に甘えます。息子をお願いします」


父は身元が分からない男に息子を預けることに不安を覚えたようだが、敷地の外に行かなければ問題ないと判断したようだ。

それにせっかく来たのだからもっと妄想を膨らませて現実逃避を楽しみたかったのだろう。

僕は僕で、敷地の中ならば他の職人の目もあるし、何かあったら外で列を作っている人たちの目にも止まるに違いないから危険はないと判断した。

未だ外に人が並んでいるということは入口に誘導をしている職人たちもいるのだ。

何かあっても声を出せれば問題ないし、少なくとも自分を案内した職人なら僕の父がこの男ではないことくらいは分かるはずである。

突然現れた男はそんな僕たち父子の考えになど全く興味がないかのように話を進めた。


「よし!じゃあ、さっそく行くか!」

「うん!」


こうして僕は知らない職人っぽい男と建物の庭に出ることになるのだった。

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