傷一つない太陽
軽やかに走り囁く裸足のゆびさきに
哀惜を振り切る優美なひだり腕に
細い肩へ留まる青い光りに宿り
小鳥たちの喜びを音階の閃きに閉じ込めて
花々を揺らす風をオーク材の艶めきにして
澄んだ青のマンタの群れが踊る渦となり
繰り返される一瞬の静止と解放
断絶により紡がれうる楽譜
磨かれた球体の鏡
非言語より言葉は生まれた
今もなお抑えきれないものとして
尽きることなく我らを震わせるもの
それは
幼児のようにもどかしく
開かれるような喜びに満ちている
たとえば
井戸から綺麗な水が
こんこんと湧き出るような
真夏の朝に甘く
水の香りが立ち昇るような
夕ぐれに美しくカジカの鳴くような
たとえば
正午の丘から風が
しゃらしゃら涼しくて降りてくるような
春を待ちきれなくて
若葉がくすぐったそうに揺れるような
夜八時に
開けておいた扉から静かに闇の訪うような
たとえば
夜明けの山の間から
真っ直ぐにダイヤの鎖が放たれるような
黒い薔薇色の空に
金の夢が広がり薄青く溶けていくような
そしてゆっくりと
傷一つない太陽が眩く打ちあがってくるような
これは、「特別な街に住みたい」と異なる自作の詩を組み合わせています。しかし、テーマとしては近しいものがあり、言うなれば音楽的な部分と絵画的な部分を組み合わせています。序章から展開し、発展するというストーリーをとっていますが、核となるテーマは「繰り返される言語爆発」です。本来、商業誌へ投稿しようと考えていたのですが、他に相応しいものがあったので、こちらへ転用しました。




