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鳥の国から  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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83 鳥の国から   セイタカシギは残念ながら  1994年8月

鳥の国から  セイタカシギは残念ながら   すずがも通信87号 1994年8月


 いやあ、暑いですねえ!7月の平均気温がこんなに高い年は初めてじゃないかしら。観察舎は海風が実に具合よく吹きぬけて行くので、めったなことでは「クーラーつけよう」ということにはならないのですが、まだ7月もやっと半ばというのに、冷房ぎらいの私でさえ、スイッチ入れようかな?と迷うことがしばしば。

 傷病鳥救護棟(野鳥病院)の建物は観察舎と少々違う角度で建てられているせいか、もののみごとに風がぬけません。特に治療室と呼んでいる手前の部屋はものすごく暑いです。冬はその分しっかり寒いです。がまん強い性格を築き上げるのに向いています。仕事の内容も忍耐心を要するので、観察舎のアルバイトさんがみんなものすごく性格がよいのはそのおかげではないでしょうか。

 今年は窓を一つつけ足してもらえたし、廊下に換気扇もついたし、いくらかしのぎやすくなりました。それにしても暑い!一昨年の猛暑の夏は、帰宅すると必ずどの猫かがひざに乗ってきて、うれしいような、たいへん迷惑なような思いをしたものですが、今年は猫さえよりつきません。ただ猫に飽きられただけでしょうか。

 前号で、みなと新池のなかにセイタカシギの巣が作られたことをお知らせしたと思います。ベテランのつがいで、これまでの繁殖例とはがらりと態度を変え、人がそばを通ってもけたたましい警戒の声を上げることもなく、すっと巣から離れて澄まして餌をとっていました。この分ならなんとかカラスの目をごまかしてヒナをかえすかな、と期待していたのですが、ふ化を1週間後に控えた5月30日、4個の卵が1個に減り、なおも抱き続けているのを見ました。せめて1つだけでもと思いましたが、翌日には穴をあけられたふ化間近な卵が1個残るだけで、親たちの姿は消えていました。

 この時の経緯。卵がなくなる前々日の28日の土曜日、いつも物静かにしていた雄親が上池で執拗に鳴きたて、見ると池の中の松の木にハシボソガラスが2羽止まって、なんとなくあやしげな様子をしているところに行きあいました。わずか15分前に4個の卵がそろっているのを確かめたばかりです。私が見た直後に取られたとはちょっと考えにくい(親がまったく騒がなかったし、カラスの影も見えなかった)ので、ふ化日が近づいて気が立っているセイタカシギがカラスに気付いてつい騒ぎすぎて、巣があることを知られてしまったのではないかと思っています。とても残念なできごとでした。

 7月7日ごろから、保護区に子連れのセイタカシギが何組か戻ってきました。葛西の野鳥公園では3つがいがヒナをかえし、そして中央防波堤外の埋立地ではなんと10組もの親子(計51羽!)が見られたとのことです。セイタカシギの将来はけっこう明るいみたい。

 このごろ、みなと新池をのぞきに行くと、池の中の2本の松の木に若いカワウがびっしりと止まり、ロータリークラブで田植えをされた3枚目の棚田のまわりにはアオサギ、コサギ、ダイサギ、カルガモがごっちゃりと並び、池の水面にはウミネコやカワウが群れているという光景をよく見かけます。顔を出すと、何十羽ものサギやウがわらわらわらわらと舞いたちます。カワウがいつも止まる松の1本は、てっぺんがひしゃげてしまったので、観察舎から見てもそれとわかるようになりました。せっかく入れたメダカやフナが無事だろうか、と水生生物採集の遠征に出た人たちが気をもんでいます。でも、水鳥のいる風景、やっぱりいいですねえ。


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