40 鳥の国から 新池にサンカノゴイ! 1989年10月
新池にサンカノゴイ! すずがも通信58号 1989年10月
いきなり、ほんの2mと離れていないところから、大きな茶色の鳥がふわっと飛び立ちました。新池の中央土手岸、上池側。歩きにくいアシの刈りあとにふみこんで、がさがさと岸の方に戻ってきたところです。ゴイサギの若鳥と思って何げなく見ると、見慣れたゴイサギの褐色地に白斑という羽色のかわりに、黄褐色地に黒の杉綾模様が目にとびこんできました。サンカノゴイ! ふわふわした飛び方や体形は、ちょうどゴイサギをひとまわり大きくしたようです。双眼鏡を向ける間もなく、サンカノゴイは対岸のアシ原のかげに姿を消しました。9月15日の夕方、保護区初記録。もちろん私も生まれて初めて見る種類でした。遠くでちらちらするのを望遠鏡で必死に見て、図鑑と首っぴきで調べる、というような確認のしかたでなくて、肉眼でしっかり特徴が見えたし、おまけに新池でお目にかかれたなんて、願ってもないことでした。
サンカノゴイは印旛沼や茨城県などで繁殖が見られているそうで、この7月には浦安の埋立地でも、まるで餌でも運んでいるように、間をおいて同じアシ原に何度か入るところが観察されています。いつか保護区のどこかで繁殖してくれるといいのですが。わが愛読書「オオバンクラブの無法者」(アーサー・ランサム作)で、絶滅しかけたイギリスのサンカノゴイの話を読んで以来、ずっとあこがれていた鳥に会えて、大満足。あとは「霧笛そっくり」と言われる声を繁殖時期に聞いてみたい。
心配は青潮
暑い暑い暑い、と書くつもりでいたら、台風一過のさわやかさ。だらだら続く熱帯夜にグロッキー気味だったので、ほっとしています。でも、あーあ、こういう時って、きっと青潮が出るんです。幸いまだ北風も吹かないし、雨も明日からとのことなので、そんなにひどくならずにすむといいな、と期待はしているのですが。今年は水門のまわりにびっしりムラサキイガイがついて、今のところ元気にしているので、ひどい青潮(酸欠水の上昇)が来なければ、冬まで生きのびられるはず。ここ1週間くらいが峠だろうと思います。どうか、汀線一面に魚の死体が散乱する光景を見ないですみますように。
台風のすぎたあと、たいてい明るいオレンジ色をしたウスバキトンボを見かけます。南や西から渡ってきて、適当な池や沼に産卵し、ふ化したヤゴはひと月そこそこで大きく育って羽化するといういそがしい種類です。関東あたりでは冬の水温低下に耐えられず、越冬はしていないとのこと。水温が高い丸浜川で冬ごしでもできたら面白いですね。
渡りをするのは鳥やトンボばかりではありません。今この辺で一番数の多いチョウはたぶんイチモンジセセリだと思いますが、このチョウも渡ってきたものだそうです。うっかり禽舎に飛び込んだイチモンジセセリが、ユリカモメにパクリと食べられてしまいました。ごめんなさい。
ツバメやコアジサシが消えて、カモが日増しにふえて、ススキの穂が風になびき、あたりはすっかり秋。早いなあ。




