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鳥の国から  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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100 鳥の国から 鳥をま下から見上げると  1996年4月

鳥の国から すずがも通信97号 1996年4月


ヒュヒュヒュヒュ、大きな羽音といっしょに頭上すれすれのところを鴨が飛びすぎて行きました。はばたきで起きた風が頭をかすめ、しぶきが顔に当たります。2羽、また2羽、4羽、6羽。最初のはオカヨシガモ、今度はヒドリガモ、またオカヨシガモ、あれっ、これはマガモ。結局のところ、各種とりまぜて30羽ほどのカモが、何に驚いたのか、千鳥橋の前の幅50mほどの護岸に囲まれたせまい水面から飛び立ち、千鳥水門の高さ2mの護岸壁をかすめるようにして、保護区の海面に入ってきました。水門操作のために護岸堤のすぐきわを歩いていた私は、ただ目をみはるばかりで、すぐ目の前を飛んで行くカモのお腹を眺めていました。そう、カモはま下から見上げても種類の識別ができるのです。3月12日のことでした。

 鳥をま下から見上げるといえば、なんといっても餌場にセグロカモメの餌をやるときがきわめつけ。翼開長140㎝もある大きなカモメがすぐ上をぐるぐると飛びまわります。降ってくるものがこわいので、たいていはさっさと退散しますけど。この間から、「翼を下から見上げると先端の黒い部分がない」というカナダカモメってどんなものだろう、セグロカモメにまじっていやしないか、と気にしています。セグロカモメも下から見上げると、黒い部分の大小の差がずいぶんあることがわかりました。ぜんぜん黒くないというのはまだ見つかりません。

 あいかわらず、見られる鳥の方はいっこうにぱっとしない鳥の国。2月中に餌場に若いオオバンが1羽来てしばらくいついてくれました。バンとオオバンをならべて見ていただくことができて、解説するのに張り合いがあったこと。あいにく16~18日の降雪の翌日から姿を見かけません。しばらく1羽しかいなかったみなと新池のオオバンが、そのすぐ後で2羽になっていました。たぶんそれだよね、雪で弱って誰かに食べられたのじゃないよね、と思っています。

 鈴が浦で餌づけをしているオナガガモは、日中は見られたリ見られなかったりですが、おもしろいことがありました。毎日餌をやっている場所が、みるみるうちに大きな水たまりになり、今では潮がひいても池のようにそこだけ水が残るようになったのです。10m×5mくらいの広さがあり、深さ30㎝くらい。カモたちは餌のお米やパンを食べるついでに干潟の泥まですすりこんだり、くずして流し出したりしていたというわけ。このごろは「カモが掘った潮だまり」にアオサギがよく着ています。魚でも残っているのでしょうか。

 野鳥病院から放した若いアオサギが、毎日餌をもらいに来るようになりました。すぐそばを自転車が通っても平気な顔。古顔のダイサギよりも体が大きいので、まっさきにアジをぶんどります。同じく毎日来ている「うちのコサギ」はとても意地が悪く、自分が食べるよりも「よそのコサギ」を追うのに夢中。「よそのコサギ」が1羽のうちはよかったのですが、このごろは3羽にふえたのでたいへん。サギは一年中残ってくれるので、よくならして見世物にしようと、このところサギたちをせっせと甘やかしています。

 ユリカモメの群れが吹雪のように舞うようになりました。沈丁花が咲きました。まだまだ寒くてコチドリもツバメも見ないけれど、春はもうそこまで。



「鳥の国から」のタイトルでの連載は、100号となる今回でひと区切り。続きは「現在進行 鳥の国 1」として掲載いたします。いよいよ行徳鳥獣保護区の再整備工事がはじまり、管理作業もこれまでとはがらりと変わってきました。その様子を続編でご覧ください。

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