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科学の極み! (連載版)  作者: 芝高ゆかや
4章 選ばれし騎士と魔術師の子孫
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32 もう一人の魔術師の子孫

 キリュウとトアリー、フレイリアの3人は、中央塔を出て、レイトーリア魔法学院の図書館に急いだ。

 図書館に入ると、授業中のせいか誰もいなかった。貸し切り状態だ。持ち出し禁止エリアに行き、関係ありそうな本を片っ端から取りだし、テーブルの上に積んでいく。それを3人で手分けして、しばらく読み漁った。


「キリュウ、ある程度わかったことがあったら、書いていってください」


 フレイリアが椅子から立ち、本が積んである場所と反対側に地図を拡げ、商業エリアの店に年代を次々書き込んでいく。トアリーも、フレイリアの横に立ち、自分が調べた分を書き込んでいたが、ふとその手を止めた。


「やはり、専門店街に比較的古い店が集まっていますね?」


「そうですね。建物自体は、立て直しなど、よくメンテナンスされているので、わかりませんでしたが……。ですが、建国時からとなると、どの位置にあるかまだハッキリしませんね。その店が現在あるかも分かりませんし……」


 フレイリアの呟きを聞いて、キリュウの本をめくる手が止まった。



 ―――『建国時からある』って……もしかして、そのまんまなんじゃないのか?「はじまりのパトロナス」からのメッセージは、パトロナスであるフレイリア様じゃなく、オレ達「選ばれし騎士」宛てだった。その理由が、選ばれし騎士しか知りえないことだからだとしたら……。



「場所がわかった!」


 キリュウがガタンと椅子から立ち上がった。


「えっ!?」


 トアリーとフレイリアが、驚きのあまりビクッと体が揺れる。


「ロサ・カエルレアのアドホックピアスがあった場所、つまり『ラドルのアドホックピアスの店』だ」


 キリュウは、読みかけの本を閉じ、早速、本の片付けに入った。


「確か、このロサ・カエルレラのアドホックピアスを以前ラドルさんから譲っていただいたときにキリュウが言ってた『7人の偉大なるはじまりの魔術師』のことですか?」


 フレイリアの問いにキリュウが頷いた。


「はい。……ボクの予想が正しければ、ラドルさんは『魔術師の子孫』だ」


 キリュウの話を聞き、トアリーとフレイリアが顔を見合わせた。


*****


 キリュウ達は、専門店街のラドルの店の前にいた。キリュウが店の扉を開けると、ルキだけが店のカウンターに座っていた。


「こんにちは」


 ルキがニッコリ笑ってキリュウ達を迎えてくれた。


「「「こんにちは」」」


 3人が挨拶すると、ルキが立ちあがり、奥の部屋への入口の前に行った。


「ラドルに、今朝、キリュウくん達に会ったことを話したら、そのうち店に来るから、来たら奥の部屋に来てもらうように言われてたのよ。ラドルに会いに来たんでしょ?」


 キリュウ達は、顔を見合わせて、頷いた。


「今朝、私が余分なこと言っちゃったから、心配して来てくれたのね? ありがとう。ついでに申し訳ないけど、ラドルの様子も見て来てくれないかしら?ラドルったら部屋に引きこもっちゃって出て来ないのよ……」


「わかりました」


 トアリーは、そう言うと、フレイリアとキリュウを連れて、ルキの案内の元、奥の部屋へと入って行った。おそらく工房と思われる部屋の扉をルキが叩いた。


「ラドル! キリュウくん達が来たわよ?」


ルキが声をかけてからしばらく経ち、ガチャと扉が開き、疲れたような表情のラドルが顔を出した。


「よく来てくれたな。待っていた。ルキは戻っていい」


「そう……、食器は?」


 ルキの問いに、ラドルが部屋の扉の近くにある机から重ねた空の食器を出した。全部食べ終わっているのを見て、少し安心した様子で表情が和らいだ。


「じゃあ、またね!」


 ルキは、空の食器を抱えて、その場から去った。

 キリュウ達は、工房に足を踏み入れた。


「あの……、お疲れのところ、すみませんが……」


 トアリーがラドルに話しかけたところで、ラドルが切り出した。


「……アドホックピアスが使えなくなった。おそらく、侵入者の仕業だ。だから、ここに『選ばれし騎士』が来た……お前たち2人は、『選ばれし騎士』だろ?」


 ラドルが静かに話す。こちらがどう反応をするか見ているようだ。


「そうです。『はじまりのパトロナス』より、ここに地下道へ入る入口があると……」


 トアリーが答えた。


「ラドルさんは、『魔術師の子孫』ですよね? 入口について、何か知ってるのですか?」


 フレイリアが、トアリーの言葉に続いてラドルに質問する。


「知ってる……だが、『選ばれし騎士』にしか教えることができない。……大型魔法陣のパトロナスは、驚かないのだな。本来ここには来れないはずの『選ばれし騎士』がここにいることを……」


 ラドルが、普通に驚きもせず、話についていってるフレイリアに、怪訝な表情を浮かべて疑問をぶつけた。


「普通なら……驚くでしょうが、キリュウと会ってから、今まで起こり得なかったことばかり起きているので……。そもそも『選ばれし騎士』が2人いる時点でおかしいのです。今回も『またですか』と思うぐらいですね……。もう、馴れました」


「なるほど……」


 ラドルが妙に納得している。


「えぇーっ!? ボクのせい?」 


 キリュウが不満げに訴えたが、3人に無視される。


「では、私は中央塔に戻ります。いつまでもロイ1人にはしておけないので。トアリー、お願いしますね?くれぐれもキリュウが暴走しないように……」


 フレイリアからの信用が全くない。ひどい言われようだ。

 トアリーまでも、わかりました、と返事をしている。フォローが全くない。


「それでは、『選ばれし騎士』達、こっちに来てくれ」


 ラドルに連れられてやって来たのは、小さな部屋だった。ただ、暗い廊下から木造の扉を開けたときは、部屋も木造だったのだが、扉を閉めた途端、継ぎ目のない真っ白な部屋に変化した。


「ここから地下道に行ける」


 ラドルが部屋の扉を閉めるなり、そう言った。


「ラドルさんは、地下道へは行かないのですか?」


 トアリーが聞いた。ラドルは、入口を知っているのに、入ったことがないようだ。


「オレは、ここで待機している。『魔術師の子孫』は、『はじまりのパトロナス』が関わる場所以外を監視する役割がある。地下道から侵入者が出てくれば、我々『魔術師の子孫』が捕まえて、隔離する。地下道は、『はじまりのパトロナス』の管轄だ。そのために君達がここに来た」


 ラドルは、そう言いながら、扉と反対側の壁の一部を片手で押し込んだ。壁がへこみ、そのまま壁が横にスライドする。そこには、パネルがあった。


「……君は、てっきり移住者だと思っていたよ。パトロナスとなり、この地で暮らすのだと思ったんだが。まぁ、あの大型魔法陣のパトロナスの話を聞いた様子だと……帰ってくれて良かったかもな」


 パネルを操作しながら、キリュウを横目で見てラドルが独り言のように言った。それを聞き、キリュウが肩をすくめた。トアリーはクスッと笑いながら、キリュウの顔を下から覗く。


「そうですね。キリュウの場合、長い間ここにいると、いつかボロが出て隔離されそうだもの」


 トアリーがキリュウを見つめながら、そう言った。

 パネル操作が終わったらしく、ラドルがパネルのある壁から離れると、さらに壁が奥にへこみ、横にスライドした。ヒトが通れるほどの空間が現れた。


「『選ばれし騎士』、頼んだぞ! オレはこの国が好きだ。目の前で国が壊されていくのは辛い……」


 ラドルが寂しそうな表情を浮かべた。キリュウ達は、強く頷き、背を向けて地下道へと急いだ。


 ラドルが、道具をかけてある板を掴み、外した。そこには暗闇の空間があった。キリュウ達は、フレイリアを置いて暗闇の空間へと入った。

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