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司令部 滞在

--- 司令部 


ゲート前に停まるとカーゴの周囲を兵士に囲まれる。 ここを押し通るには、本格的なミサイルが必要と思われるようなコンクリート製のゲートだ。


無線が入る。


≪ヒルベルト一行か? ≫

≪ああ。 銃弾の雨の中を越えて来たぞ! ≫


≪ゲートを開ける。前の兵士に従い、ゆっくり入場しろ≫


ゲートが開き先導する兵士の歩行速度に合わせてカーゴが進む。 周囲の兵士も銃口はこちらに向けたままだ。


ゲートが閉まる。


ダイゴが大きく息を吐き、カーゴの上から降りカーゴのコンテナ前に立つ。

兵士の警戒は解けていない。 彼らをかき分けて、管理者らしき人物が現れる。


「ヒルベルト商会だな」

「ああ。 ご要望の品だ」


ダイゴが、コンテナのレバーを降ろし、扉を開ける。中には、鄭がいるため全員そちらに銃口を向ける。 それに直ちに反応して鄭も手を上げる。


「待ってくれ! 彼は味方だ。 保険だ」


ダイゴの一言で、責任者が合図をして、兵士の銃口が鄭から外されるが、警戒は解けていない。 カーゴ内には大きな木箱がそれなりの数入っている。


「中身は、知らんが、これが御届け物でいいんだろ? 」


木箱には、焼き印が押してあり、それを確認し管理者が納得している。


「ああ。これだ。 間違いない。 構えを解け! 彼らは味方だ! 」

その一言で全員の銃口が下がる。 ようやくダイゴ達が一息つける事態に落ち着いた。


「ありがとう。 ここまでよく来てくれた」

管理者らしき男から労いの言葉が、ダイゴに掛けられる。


「まったく。 死ぬかと思ったよ」

「最前線だからな。 おい! 運び出せ」


鄭とダイゴが、コンテナ前を退くと、重機がコンテナ内の中の木箱を運び出していく。


「それしにても随分とカーゴはやられたもんだな」

責任者がカーゴ側面の凹凸を見ながら感想を洩らす。


「銃弾の雨の中を通って来ればこうなる。 帰りは、安全な道を教えて欲しいものだな」

「いいだろ。 後で教える。 惑星間貿易商でもきつい道中、よく来てくれた。 感謝する」


管理者からの労いの言葉が掛けられる。


「それが仕事だ。 金も前金だけで本契約分近く貰っている。 残りもちゃんと払ってくれよ」

「当然だ」


「深くは聞かねーが、まだやるのか? 」

「相手が降参しない限り続ける。それが本国の命令だからな」


「そうか……それと車両の修理は、どこに行けばいいんだ? 」


「兵站部に行ってくれ。 ここの先を真っすぐ行けば外見で分かるはずだ。 まぁ命がけで来てもらって悪いが、無償というわけにもいかないことも理解してくれ」


「構わんよ。 契約金額から引いてくれて」

「すまんな。 余裕がある物資であれば、弾薬も譲ってもらえるはずだ」


                 *


ダイゴが運転席に座り、鄭はまた、カーゴの中に入り、空になったカーゴを移動させる。

「で、ダイゴ。 なんだって? 」


「兵站部に行けば多少の補給と修理ができるとさ。ただし、作戦に支障がない限りだがね」


「吹っ掛けられるだろうな」


「すでに利益は十分に出ている。 この程度で赤字にはならないさ。それにそんなことをしたら、この業務を引き受ける奴がいなくなる」


「とはいえ、あの誘導ミサイルもかなりの費用が掛かっているんだがね」

「ミサイル一発や2発程度は、見積もりの必要経費に入れてある。安心しろ」


「見積上手なことで」


バルティスが、その手腕に関心している。 アリエフはそれを横で聞きながら、車両を出す。 カーゴは、基地内部を走行していく。


                 *


車両はドックにはいり、早速修理に取り掛かり始めている。 多数の補修待ち車両がいるが、それなりの金を積んで修理順番を早めに廻してもらういわゆるファストパスになる。


弾丸が貫通した箇所、へこんだ個所の補修と溶接が始まっている。


「セントリーガンの購入か……」

「そうだ。 可能かい?」

武器調達は鄭の役割になる。 兵站部の管理者と直接交渉を行っている。


「弾薬は分けられるが、セントリーガンは無理だな。 こちらの主力兵器だ」

「じゃぁこいつを直すことは?」


鄭が、壊れたセントリーガンを兵站部の熟練兵士に見せる。


「また。派手にやられたな――やるだけやれるだけやってみるが……全盛期までの性能は無理だな。 それでも良ければ――どうする? 」


社長(ダイゴ)。 全盛期までの性能は無理そうですが治せますって! どうします? 」


少し離れたダイゴに鄭が呼びかける。 ダイゴも周囲のジャンク品を見ながら使えそうなものを探している。


「じゃあ頼む! 」

返事も直ぐに返って来る。


「あいよ。 じゃぁ3日ほど貰うが、待てるかい? それとアンタも技師なんだろ? 」

熟練兵士が、鄭の身ながら質問してくる。


「ああ」


「少し頼みたいこともある。手伝ってくれるのであれば、修理費のディスカウントも交渉の余地ありだ」


「鄭。 頼む」

いつの間にか鄭の後ろにいたダイゴが、即決する。


「まったく。地獄耳だな、この距離で会話を丸聞こえかよ――へいへい。社長命令とあっちゃーお受けしますよ」


鄭は、その後車両のメンテナンス、セントリーガンの仮修理、加えて基地のインフラ整備までこき使われることになる。


もちろん、それらを鄭、一人では手が回らない。 アリエフを加えて基地内部に対しての労働が始まる。


一方、ダイゴとバルティスは、守衛としてコンバットスーツ装備での巡回業務に駆り出される。 


                   *


「ダイゴ! 3時方向! 敵4。 それとスナイパーだ! 」

「了解! スナイパークッソ! 味方が、1……2、3,やられた! セレン(シップマスター)聞こえるか!  」



≪なんでしょうか? ≫

≪俺達がやられた場所と弾丸の軌道からスナイパーの居場所を索敵! ≫


≪了解……おおよそのポイントをマーカーに落します≫


「大したものだな! 」

バルティスが、感心する。


「巡回舞台に情報を展開する。 スナイパーを排除する。 あれの放置はこちらの命に係わる」


生死の狭間の巡回業務。 こちらの防衛線を確保するためにも地味でありつつ危険な業務である。 


他の惑星間貿易商、PMC、そして正規兵の混成が部隊で実施する業務のようであるが、中々激しい業務になる。



市民がゲリラ化し、散発的な銃弾と迫撃砲が飛び交う状態。そこに正規兵が混じっているため余計に厄介である。 ここの領主が沈まない限りこの地の平定は厳しいように思える。


しかし、このように危険を冒す分、補修費や燃料費を安くしてもらえるようだ。

リスクを冒さなければリターンはない。


3日ほど戦前基地に滞在することになる。 基地内部だけあって、それなりの平穏が保たれているが、外部からは榴弾攻撃とミサイル攻撃音が続いている。


戦場を経験してない人間では不安でノイローゼになりそうな環境であるが、4名は修羅場を経験している為、それほど気にしていない。


かなりの頻度で、傷ついた兵士が運び込まれる。 医療現場は修羅場になっており、この地の激戦模様がよくわかる。


ともあれ、一刻でも早くこの場所から立ち去るため、鄭もアリエフも手を動かし状況を回復させていく。


3日目にしてセントリーガンも仮修理が完了した。 ようやく、前線基地からの出立する目途がつく。


出立の準備をしていると、真新しいコンバットスーツに身を包んだ部隊が出ていく。 

例のコンテナの中身だろうか。 慣らしが終わり、実戦投入の運びなのだろう。


「……」

「……」

「……」

「……」


ヒルベルト商会は、その光景に関して何も言わない。 客先の行動に感情を差し込むのは厳禁であり、それを客先に聞かれるのもまずい。 最悪スパイ容疑で拘束される恐れすらある。


出立の準備をしてるヒルベルト一向の前に、基地の管理者が現れる。


「ヒルベルト商会。 今日、出立かい? もっと長くいて貰ってもいいんだぞ」

明らかに裏がある提案。


「こき使いやがって。 これ以上いたら傭兵になっちまう」

ダイゴが、先方の意図を見抜く。


管理者の顔がニヤ付く。


「分かっているじゃないか。 あの戦場を生き残って来た奴は希少だからな。 といっても惑星間貿易商に無理強いが出来ないことも知っている。 実際、惑星間貿易商には、多数の物資も届けてもらっている。 ここでいざこざを起こす気もないから安心してくれ。 

それに荷物を届けてもらっただけでお釣りがくるさ」


「たしかに、巡回部隊にも他の惑星間貿易商がいたな。 まぁこんな仕事を生業にする奴らじゃなきゃ支援は仰げないか? 」


「ああ。次回も頼んだぞ」

「次回は勘弁して欲しいものだ。 それに次回までに決着をつけて欲しいものだ」


「ははは! 確かに。 こいつが帰りのルートだ」

一枚の紙が渡される。


「それなりに安全が確保されているルートだ。 気を付けて戻れよ」

紙を読み込むダイゴそしてアリエフに渡す。


帰路のルートを確認して出発の時間になる。


ヒルベルト商会の短くも濃密な基地内の時間が終わり、戦場通過の帰りの道へ と舞台が変わる。


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