第19話 首都タナトスに辿り着く
「これを、首都の商業区にある冒険者支部長の『アルッセナ・フリート』さんに渡してくださいっす。2人を冒険者にする為の推薦状って奴なんで詳しい身分証明とか書類回りの手続きをパスできるっす」
長く続く林道を馬車が進む、もうすぐ首都タナトスが見える、と言う所まで来た時、ロスウェルから1通の手紙を渡される。
「色々お世話になり感謝します。首都についたらしばらくのお別れでしょうか」
「数日はのんびり過ごして、また依頼を探すつもりっす。だからもしかするとまた会えるかも知れないけど、出来ればまた、一緒に冒険したいっすね」
「そうか、今度会う時は絞首台じゃないことを祈るよ」
「いや燃えてる洋館には行きましたけど、俺が火点けた訳じゃなくて」
やいのやいのと話をしていれば、やがて林道を抜け街道の左右に広大な田畑が広がる景色が目に入る。
「……わぁ……!」
生まれて初めて見る景色に、私は感嘆の声を上げる。
「首都タナトスは人口がおよそ100万人と言われています、次に大きい軍事国オールドクリフでは20万人程度、他の国は10万人とされていますから、国の大きさは顕著ですね」
「首都っつーだけあって、ここには人族のあらゆる物が流通してるんす。人物、物品、魔物の素材も鉱石も、あとは悩みも事件とかも。……っと、城壁が見えてきたっす。それで、ちょっとお願いが……」
お願いが、と言いながらロスウェルは荷台の隅にあった毛布に包まり始めた、何をしているのか、と私とテスは不思議そうに見ている。
「城門を潜ると『兎獣人の女の子』がこの馬車に近づいてくるはずっす、その子は俺を探してるんすけど、見つかると色々厄介なので俺は城外に居る、とか言って誤魔化してくださいっす」
「お前やっぱお尋ね者なのか」
「まさか親の仇ですか?」
「違うっすよ! 英雄タナトスに誓って俺は潔白っすから! 火炎瓶の作り方の本書いて1回衛兵にパクられそうになったけど! でも違うっすから、信じてください!」
城門にどんどん近づく、御者が門兵と何か話を始めるとすぐ、馬車が動き始めた。
特に積荷を確認しないところを見ると、やはりロスウェルの名は人族の間では有名なのだろう、良い意味か悪い意味かはまぁ置いといて。
「そこの馬車、待て! おいロスウェル・クルー、そこに居るんだろう!」
まじで城門を通ってすぐ、女の子の声が聞こえてくる。
馬車の後方、人が乗り込むところから薄紫色のウサギの耳がひょっこりと現れる。
「む、君達は誰? ロスウェル・クルーはどうした? 友達?」
ウサギの耳の次は、紫色の髪、青い瞳、黒色のローブを身に纏った少女の姿、見た目は若いが兎種にしてはやけに背が高い。
年齢を推測できないのは獣人族が人族に比べると成長速度が違うから、少女とは思うが実際は既に成人かも知れない、そんな少女がやや睨みつけるようにこちらを見て、馬車に乗り込みながら質問を投げかけてくる。
「私はテス、こちらはララァと言います。旅の途中でロスウェル殿に出会い、厚意で馬車に乗せて頂いたのですが、ロスウェル殿は先ほど用があると言い、城門の外で馬車を降りました」
「う、うむ……そちらはロスウェルの友人か?」
「おっと失礼、私はロスウェルの、一応仲間ということになっている。私は『ロジャーローズ』、本名ではないがロジャーと呼んで欲しい」
ロジャーローズと名乗る少女は丁寧な挨拶と共に私達と握手を交わす。
だが彼女の目はチラチラと、ロスウェルの居る毛布を方を見ている、チラチラ見ている、と言うかほぼガン見に近いチラチラだ。
恐らくバレている、いや2人の関係は分からんが、ロジャーはこう言う事に関してはロスウェルより一枚上手なのだろう。
「しかし、こうなっては仕方ないな、先方には申し訳ないが私から断りの連絡を入れるしかあるまい」
「先方、彼は何か約束事でもしていたのですか?」
「ああ、首都を発つ前に奴は定食屋の看板娘を口説いていたのだが、先方はすっかりその気でな、ロスウェルが戻り次第教えることに……」
「え、まじっすか!? 全然脈なしって思ってたんすけど!」
毛布からすごい勢いで馬鹿、現る。
ロジャーは微笑みながら流れる動きでロスウェルの体を掴み、背面に倒れ込み、足で蹴り上げる。
「かかったな馬鹿めがぁ!!」
その見惚れるほどの綺麗な『巴投げ』によって、ロスウェルは砲弾の如き速度で馬車から飛び出していった。




