↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうぶつたちのキャンプ 2  作者: 葵むらさき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
35/35

第115話

「コードルルー、応答せよ」

 出し抜けにギルド本部から通信が入った。

 ルルーははっとして応答信号を発信しようとしたが、すんでのところでそれを制止し、地球時間で一秒間の考察を行った後するりと上空へ飛び上がった。

 モサヒーの突発的発言に驚愕していた他の者たちが、今度はルルーのそんな突発的行動に続けて驚き上空を見上げた。レイヴンに至っては中枢帯にて多くの発火を必要とした。警戒と注意集中のためだ。

「コードルルー」本部から再び応答への催促が来る。「現況を報告せよ」

「はいこちらコードルルー」ルルーは地上百メートル余りの地点まで来てやっと答えた。「現在インドの草原地帯にて捕獲動物と共に行動中」

「コードルルー」本部の者はその名を呼んだが、その声は決して『無事で良かった』と思ってくれている様子のものではなかった。「君は現在、別の捕獲対象と共にいるようだが」

「──」ルルーの頭頂にしびれに似た刺激が走る。

 別の捕獲対象、とは──いわずもがなだ。しかし何故本部がそれを知っている? 無論明確だ。

 誰かが、この近くを『通りかかった』のだろう。そして見た情景、推測可能な状況をそのまま本部へ垂れ流した。

 だが『そいつ』は、ルルーを手助けしようなどとは露ほども思いつかなかったというわけだ。ルルーは双葉をチッと弾き鳴らした。「それで自分はギルドの役にたってるつもりなんだろうな、大方」

「何か言ったか、コードルルー」本部が鋭く独白に反応する。

「──」ルルーは素早く返答語句を構築した。「現在、多くの地球生物たちに取り囲まれている。大変な危機だ。大至急、近場にいるギルド員を応援に寄越してくれ」

「了解」本部の者は珍しく即答した。「捕獲生物は無事か」

「ああ。問題ない」ルルーは遥か下の地上を見下ろしながら頷いた。「レイヴンの捕獲は現時点では難しい。分解能電子銃のバッテリーも切れそうだ。至急応援頼む」そう繰り返してからルルーは通信を切った。

 地上へ戻る。

 近づくにつれ、何か言い争いをしているような雰囲気が感じられ始めた。

 ──なんだ? もううちの仲間が到着したのか?

 一瞬そう思ったが、ルルーはすぐにそれを否定した。まさか。『うちの仲間』がこんなに素早く行動するはずはない。

 では一体?


「あっちへ行ってよ、でか牛」

「あんたこそどっかへ行きな、ちび鹿」


 甲高い二つの叫び声が同時に聞こえた。

 ルルーはひとまず降下速度を緩めた。ミルキィの存在を確かめる。彼は無事でいるようだ。すぐ近くに忌まわしきレイヴンが漂ってはいるけれども──

 そのレイヴンは、何故か非常に困惑している様子が見て取れた。

 そろそろと降りてゆく。

「うるさーい!」突如襲い来る絶叫に、全身が痙攣に似た震えを起こす。「あんたなんか要らない!」

 これは──インドキョンだ。

 別名ホエジカと呼ばれるその動物は、なりは小さいが声だけは大きい。自身うるさい動物がそれを棚に上げ「うるさい」と誰かを非難している。

「あんたこそ要らないわよ」

 それに対し怒鳴り返すのは、ブラックバックだ。

 倍ほども体格の違う偶蹄目の雌同士が、睨み合っていた。

「コス君のお嫁さんには私がなるんだから!」インドキョンがまた絶叫する。

「ほほほ、馬鹿言ってるんじないわ。彼のお嫁さんはもう私に決まりよ」ブラックバックがせせら笑う。

「私よ──!」インドキョンの叫びは最大級となり、ルルーだけでなくその場に存在する恐らくすべての生物が縮み上がった。

「ははは、ま、まあまあ」なだめ役としてレイヴンがしゃしゃり出て来る。「お二方とも落ち着いて。コスはその、地球の動物ではなくて」

「ぼくは二人ともとても美しいと思うよ」コス、地球産偶蹄目に似たレイヴンの連れの生き物が口を挟む。「二人がよければ、ぼくは二人ともと結婚してもいい」

「ええっ」キオスが驚いてコスを振り向き、

「あはははは」楽しそうにオリュクスが笑い、

「な、何を言ってるんだコ、コス」レイヴンがおたおたとみっともなく騒ぐ。

「あら、そんなことしたら」ブラックバックがコスに意見を述べるが、その声にはどこか甘えるような響きがあった。「大切な遺伝情報がおかしなことになっちゃうわ」

「大丈夫さ」コスが気取ったウィンクを返す。「ぼくらの子には繁殖能力がないからね」

「私よ──!」インドキョンがまたしても絶叫する。「コス君と結婚するのは──!」

 何回聞いても皆の細胞はぶるぶると震え、びくびくと慄いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。