第十話 真実と決断
王宮からの急報は、塔の空気を重くした。
王太子殿下が毒に倒れた――その疑いが、私に向けられている。
「そんな……私は、何も……!」
声が震える。
けれど、誰もが私を疑わしい目で見ている気がして、胸が締めつけられた。
そんな中、ルークだけは違った。
強い瞳で私を見据え、きっぱりと言い切った。
「リリアナは無実だ。俺が保証する」
その言葉が、張り裂けそうな心を支えてくれる。
けれど同時に、胸の奥に小さな痛みが生まれた。
(私は……ただ守られるだけでいいの?)
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夜。
塔の上階、書斎の窓から月を眺めていると、ルークが背後に現れた。
「眠れないのか」
「……はい」
振り向いた瞬間、彼の腕に抱き寄せられる。
心臓が跳ねたけれど、その温もりは安心をもたらした。
「君を陥れようとしているのは、妹とライネルだろう」
ルークの低い声が響く。
「……やっぱり」
「毒など、王宮に出入りできる者でなければ仕込めない。
クロフォード家の名を利用し、君に罪を被せる。……浅はかだ」
冷酷な声音に、怒りが滲んでいた。
けれど、私は胸に手を当てて小さく首を振る。
「ルーク。あなたに守られてばかりじゃ、駄目なんです」
「……何?」
驚いたように見返す青い瞳。
けれど私は、勇気を振り絞って続けた。
「私はあなたの妻です。なら、一緒に戦いたい。
ただ庇われるだけじゃなくて……私も、隣に立ちたいのです」
言葉にした瞬間、胸の奥が熱くなる。
それが恐怖からではなく、確かな決意であることを、自分でも感じた。
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ルークはしばし黙り込んだ。
やがて、ふっと口元に笑みを浮かべる。
「……ようやく、俺の隣に来る気になったか」
「えっ……」
頬に手を添えられ、視線を絡め取られる。
「嬉しいよ、リリアナ。君がそう言ってくれるのを待っていた」
唇が重なる。
深い口づけに、心の奥が甘く震えた。
その後、彼は低い声で囁いた。
「決断したからには、覚悟をしておけ。
俺たちの前に立ちはだかるのは、妹やライネルだけでは済まない」
「……はい」
震える声で、それでもはっきりと答える。
(私はもう逃げない。ルークと共に、真実を掴む)
その決意が、私を強くした。
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翌朝。
ルークは私の手を取り、王宮へ向かう準備を整えていた。
「真実を暴く。君と共に」
その声に導かれるように、私は頷いた。
愛と決意を胸に――嵐のような未来へと、歩みを進めるのだった。




