61話、葵と御一行の今日の宿
鍛錬場に案内してもらって、私とスノーとノアは隅っこに移動する。
執事さんが審判?するらしい。
「ここのところ毎朝鍛錬はしているようだったが、1人でするのとは訳が違う。ジルにとってもこの手合わせはいい事だろう」
ってスノーは言ってます。
ちなみにノアちゃんはスノーの頭の上で寝てる。すっごいバランス感覚で落ちないの。
「スノー、ノア寝てるし私、抱っこしようか??」
「ん?そうだな。ちと頭わ動かしにくかったのだ。頼む」
頼まれましたぁーっ!!
爆睡してるノアちゃんをそっと抱き上げてジルの方を見る。
伯爵様と向かい合ってるジルはピリッとしてる。
この感じはワイバーンの時に見た以来ですね。
普段は抜けてはないんだけど、ほわぁーっとした雰囲気で居るからちょっと見慣れない。
執事さんの「始め!」を合図に打ち合いが始まった。
木剣のカンカン言う音と、「はっ!」とか「うぉーっ!」とか言うジルの声だけ聞こえてくる。
伯爵様は真剣な顔してるけど、余裕そう。
ま、私剣道さえ見た事なくてわからないからなんとなーくでしか言えないんだけどね!
打ち合いは15分程続いたかな。
執事さんの「止め!」の言葉で止まった。いや、違うね。
私が見えてなかっただけで、ジルの首筋に木剣があった。
「「ありがとうございました!」」
って言い合って打ち合いは終了。
途中スノーは「ほぉ!」「今のは惜しい!」とか言ってたけど全くわからない。
「お疲れ様でした!」って言いながら近寄った。
「お前はまだ動きに無駄があるが、かなり筋がいい!楽しかったぞ!ベンのところを辞めてまでなったと言う話を聞いていなかったら、俺の騎士団に誘ってたとこだ!わっはっは!」
バシバシ!叩きながら言う伯爵様に
「そう言って頂けて嬉しいです。伯爵様の剣筋はとても勉強になりました!」
実に嬉しそうな顔でジルが返してた。
やる前までの嫌そうな感じどこ行った?
「お二人とも汗を流された方が宜しいですな。ジル様には客間の浴室をご案内致します。アオイ様のと従魔のお二方は先程の応接室でお待ちください」
って執事さんが提案して、ジルと私達はメイドさんにそれぞれ案内してもらった。
待ってる間、私とスノー、それから匂いに釣られて起きたノアはケーキを頂いた。美味しいなぁ。街中でも食べられたらいいのに、勿体無い。
戻って来るのはジルの方が早かったんだけど、まさかの騎士服で???浮かべてたら
「着替え全部トランクだったから貸してもらったら、伯爵様の服か予備の騎士服って言われて」
って小声で教えてくれた。なるほー!
手合わせじゃなくても何があるかわからないから、アイテムボックスかバッグかで持っとかなきゃだねぇ。そうなると
「ジルのバッグが要りますね!この街で探しましょう!」
「そうだな。まさか手合わせする事になるとは思ってなかったから、服の事なんて考えてなかった」
「誰かに水をぶっ掛けられるって事もあり得ますよ?」
「それもあるな!考えたらキリなさそうだけど、荷物少しくらいは持ち歩くか」
「バッグに入れた状態でアイテムボックスに入れる事も出来ますし!」
「バッグは自分で持つよ、流石に!」
ガチャッ!
「待たせて悪かったな!」
さっきと違う服になった伯爵様が執事さんと入って来た。
やっぱり高そう!貴族なんだから当たり前だけど!!
立とうとしたら手で静止されて、そのまま待ってたら、ソファーにドカッと座った伯爵様は
「でだ!お前達はどのくらいここに居るつもりだ?」
って質問された。これは正直に答えて良いのか??
迷ってたらジルが答えてくれた。
「日数は決めていないのですが、そう長くはないと思います。道中に狩った魔物をギルドに持って行ったり、街の観光をしたら次の街に行こうかと思っております。私は少し冒険者ポイントを稼ぎたいとは思っていますが…」
なるほど、最初に日数決めてないって言えば良いのか!!
そうです!って感じでコクコク頷いてたら
「ふむ。なら宿はうちの離れを使え。入ってすぐ連れて来させたんだ、決まっとらんだろう?」
……はい?伯爵様や何をおっしゃってるの??
「一介の冒険者である我々が伯爵様のお屋敷に泊めて頂くなど、滅相もありません!宿はこの後探します」
ジルさんありがとう。
「なに、遠慮するな!居る間にまた手合わせ願いたいしな!わっはっは!フェンリルたちも中に入って構わんからな!」
私は全力で遠慮したい!!!
「なんだ、小屋で寝なくて良いのなら我は良いぞ?」
「ニャー!」
おい、こら!基本的に黙ってるくせに何いきなり会話に参加してんの!?私も黙ってるけど!
「よし、決定だな!メイドを何人か付けよう!食事も一緒にどうだ?」
どうにかして欲しくてバッとジルを見たら、執事さんとアイコンタクトしてた。執事さん首振ってる。まじか。
「メイドとは世話係か?お主を信用出来んと言うわけでもないがケット・シーのノアが居る。出来れば知らぬ人間を近寄らせたくないし、食事も主が緊張で落ち着かんだろう」
およ?スノーくんありがとう!!
「うーん。ならば離れには誰も近づかせんようにしよう。だが、今日の夕食だけでもどうだ?いや、最終日の夕食もだ!頼む!!」
伯爵様、必死だなぁ!!!




