62話、葵とジルは恐る恐る離れを使う
伯爵様の懇願によりこの街での最初と最後の晩餐は、一緒に摂ることになった。
だって必死で頭下げ続けるんだもん。
執事さんが「皆さん困っています。やめてください!」って言っても頭下げてたから、折れるしかなかった。
離れに案内されて部屋の説明受けた後リビングで、全員でっかいため息ついてぐったりするくらいには疲れた。
「ジル、伯爵様はなんであんなに必死だったんですか?」
「俺に聞かないで」
「んじゃスノー」
「我が知るわけなかろう」
「ノアちゃんは知ってる?」
『ノアわかんなーい!』
「だよねー。何もしてないのに貴族が頭下げるとか心臓に悪いからホントやめてほしい」
「てか、夕食を一緒にって言われてもマナーわからないんですけど」
自慢じゃないが、友達の結婚式で覚えたカトラリーは端から使うって事くらいしかわからない。
「俺だってそうだよ!いくら騎士だったってもそんな席出たことないし!必要なかったし!」
「我と居るのだ。主が困るような事を言うのなら全員消してやろう」
すぐそっちいくぅー。
「スノーくん消すのはだめだよ?」
「主が困るような事って、すでにここに滞在する事自体困る事だと思うんだけどな…」
「……ダメだったのか?」
え?貴族と関わりたくないってグタッてたの見てたし聞いてたよね!?!?
「いや分かってて言ってただろ。さっきの」
「小屋が小さいのが悪いのだ!」
「スノーくん!明日の朝ごはんお肉抜き!!」
ガーンッ!って絶望感漂わせた顔してるけど、これは素直に言えば良い事を一瞬わからないふりした罰だから許しません!
そんなこんなでダラダラしてたら、メイドさんが
「晩餐の準備が整いました」
って呼びにきて、カッチコチで向かってカッチコチのまま食べた。
伯爵様が「マナーなんて気にするな!」って言ってくれたけどそうもいかない!
おかげで味しなかった。
ジルも味しなかったらしい。
スノーとノアちゃんは
「肉の味がほとんどせん。あれは本当にギガントミノタウロスの肉か?」
『ぴりぴりばっかりでおいしくなかったー。あるじーおなかすいたー!』だそうです。
まぁ、見た目からして香辛料だらけだったしね。
ある意味味わからなくて良かったかも。
「香辛料も高級品だからな、使える量が多いだけ金がある自慢になるってなんかの時侯爵閣下は言ってたな」
「へぇー。」
「侯爵閣下は美味くはないって言ってたけど、食ってる時の顔からしたら伯爵様も多分美味いとは思ってないと思う」
『あるじー!おなかすいたーっ!!』
「あぁ、待ちきれなかったね!ごめんね!!」
話してたらノアちゃんに催促されたから、急いでトランクを出して中に入る。
スノーもジルも付いてきた。
「我もあれでは足らん!」って言ってきたけどどうしよう。罰は明日の朝ごはんって宣言しちゃったからしょうがないか!
しれっとジルも
「味わかんなかったどころか食べた気もしなかった」
って言うからみんなの分作りましたよ!
読んでたレシピ本に載ってたチーズとベーコンのチキンカツ!前は作る機会なかったけど作れて良かった!
スーパーでチーズとベーコンを買って、
コカトリスのお肉はブロックが大きいから薄く切って、お肉→チーズ→ベーコン→お肉みたいに挟んでパン粉をまぶす。んで揚げる。
ソースは…とんかつソースでいいや。
出したら出しただけ食べる。ノアちゃんは最初熱くて飛び上がってたけどよく食べた。スノーも言わずもなが。
ジルも3個食べてた。よく入りましたね。
「はぁー食った食ったぁ!」
ってそのまま部屋に行こうとするから
「今日はトランクじゃなくて案内してもらった部屋で休みますよ!落ち着かないけど使わないと怪しまれるでしょう!」
「あ、そっか。トランクで飯食ったから忘れてたわ」
あんたそんな抜けてる人じゃないでしょ!
片付けは粗方終わっててみんなの食器だけだから、さっとジルが洗ったのを見計らってグイグイ押しながらトランクから出した。
隣同士の部屋で場所だけ見せてもらったから、開けた瞬間後悔した。広すぎるんだわ!!
「うっわ!広っ!!」ジルも声上げてた。
取り敢えず中に入って中を見てみる。バスルームがあった。ここも広いね。トランクの中も色々広いと思ってたのにレベル全然違った。
ベッドにそのまま寝るのも怖いし、かと言ってバスルームが使うのも怖い。入浴も寝るのも全部恐る恐るになった。
スノーはジルのところで入ってきたんだけど、ジルも私みたいな反応だったらしい。なんなら
「1人で寝るとかなんか怖いから!一緒に居てくれ!」
って頼まれたけど断ったって。ドンマイ!
私は綺麗になったスノーとノアちゃんとベッドに入っておやすみ。恐る恐るだったのにベッドが心地良すぎて寝つきは良かった。
使ってないって言ってた離れにキングサイズ以上のデカベッドがあるの謎です。聞く気は無いけど。




