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天空のリヴァイアサン  作者: 朧塚
王都ジャベリン
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森の村『グリーン・ノーム』 2

 ロゼッタには幼い頃から親しくしているイリシュという少女がいる。

 彼女は教会に務めている修道女なのだが、幼い頃のロゼッタとは縁あって親しい仲だ。

 ドラゴンの魔族の脅威を伝えなければならないと考えて、訪れた。


 王都ジャベリンから離れた森に囲まれた辺境の村である、グリーン・ノームに来て、ロゼッタは幼馴染達に会いに来た。ロゼッタが、もっと幼い頃、たまたま辺境の村にやってきて、意気投合して仲良くなった二人だ。


「あら。今日はエートルと一緒じゃないの?」

 ロゼッタは、イリシュに訊ねる。


「えっと。エートルは……その、村外れにいつものように剣術の修行に出かけていて…………」

 イリシュは困った顔になる。

 いつも彼女の表情を見ると、恋する相手に対して心配そうな顔をしている。

 彼女は肩まで伸びた金髪の髪を靡かせながら、憂鬱そうにしていた。


「あら。そう」

 ロゼッタは、エートルという少年に眼をかけている。彼は次期、騎士団の新兵になるか、魔導部隊に入ろうと言っている少年だ。


 彼は、かなり筋がいい青年だ。

 どちらにせよ、王都にとっていい戦士になれると思う。

 ロゼッタも、イリシュ同様に彼の事は応援している。


「ロゼッタ様。最近、エートルが頻繁に森の奥の方に行って、私は心配で仕方無いんです…………」

 イリシュは不安そうな顔をする。


 先日、王宮の騎士団の宿舎がドラゴンの息吹によって焼かれた。

 この重い事実は、イリシュも知っているだろう。


「フリースの言っている事は納得いかない。ずっと、このジャベリンはドラゴンの魔族達に抑え付けられていた。そんな事は許される筈なんて無い」

 ロゼッタは呟く。



「こんな処にいたのね、エートル。ロゼッタ様がお見えだよ」


 森の入り口付近で、エートルは剣を振るっていた。


 ロゼッタとイリシュとエートルの三名は、幼馴染という立場だった。

 といっても、ロゼッタはイリシュを通してエートルを知っているというくらいの関係だったのだが……。幼馴染には変わりはない。


「森で訓練を積むのはお勧めしないわね。最近、サイクロプスなどの強力な魔物が徘徊しているとも聞くし、強大な魔王が潜んでいるという噂も耳に入ってくるわ」


「すみません。……ロゼッタ様。それでも、俺は強くなりたいんです」


 それはイリシュの為だろう。

 そして、難航している空中要塞との政治交渉に居合わせたい為だろう。

 以前、エートルはベドラムさえ倒せる戦士になりたいと望んでいた。


 まるで、伝説に登場する勇者のように、見事に魔王に打ち勝ちたいのだと。


「本当に頑張っているわね、イリシュの大切なエートルは」

 ロゼッタは笑う。

 英雄になりたい。

 その一心でエートルは励んでいる。

 ロゼッタも彼には負けていられないと思った。


「でも、余り危険な事には手を出さないでね。森のモンスターは今の貴方の手に負えるかどうか分からないから」


「大丈夫ですよ。俺一人で頑張れます。もう俺は19歳になります。もうすぐ、ロゼッタ様、貴方達、王都ジャベリンの騎士団の役に立てますから」

 エートルはそう言って笑った。

 正式には、20歳になれば騎士団の入団試験を受ける事が出来る。

 それまでは、見習いのようなものだ。

 見習い期間の間は、個人で己を高めたりしている者達や、騎士団所属の見習い兵になる者達も多い。エートルは前者を選んだみたいだった。


「そうなの? もし、森に修行に行くのなら、私も一緒に行ってもいいのだけど」


「よければ、私も一緒に行きます!」

 イリシュは二人に声を掛けた。

 彼女は見習い修道女をしている回復魔法の使い手だ。

 癒しの魔法の才能を見出されて、彼女は修道院でシスターをやる事を決めている。

 魔物討伐の際には、大いに戦力になるだろう。

 心強いものだった。


「イリシュ。お前は俺が守ってやるからな」

 エートルは笑う。

 そして、イリシュの手を握り締める。


 その光景を見ながら、ロゼッタはとても微笑ましく思っていた。

 早く、ドラゴン達を退けたい。

 そして、真の平和を取り戻したい。


「とにかく、一緒に森に向かいましょうか」

 ロゼッタは、みなのリーダーのように振る舞う。


 そして、三人のパーティーは森の中へと向かっていった。



『グリーン・ノーム』の周辺には、変容した牛や狼などの魔物が現れる為にそれらの脅威を排除するのは騎士団のやっている事だった。

エートルは魔法使いを志望していたが、剣術や弓術は覚えていて損は無いものだ。


 狼のモンスター達に襲われる。

 エートルは、てきぱきと剣でモンスター達を斬り付けて倒していく。


 ロゼッタは、杖を振るいながら、自身の『固有魔法』である水のカッターを使って、敵を切り刻んでいく。


「やるじゃない。エートル」

 ロゼッタは賞賛の声を上げる。


「そろそろ、休憩しませんか? イリシュが作った料理が食べたいな」

 エートルはそう言って笑う。

 彼の周りには、狼のモンスター達が一面に倒れていた。

 

かつて魔族達の手から、人間を守る為に、強大な強さを持つ勇者が現れたのだと聞く。

 だが、かつての悪魔の王を倒した後に、勇者も共に倒れた。

 ただ、勇者は死ぬ間際に、この世界の神から力を借りて、二つの領域を分断する光の壁を作ったのだと聞く。この世界には、人間界と魔界の二つの領域がある。


 あくまで、伝説上の話なのだが。

 三人共、この世界の事はよく知らない。


 王都ジャベリン。そして、辺境の村々と、エートルとイリシュが暮らす小さな村であるグリーン・ノームの事しか知らない。

 ある意味で言えば、狭い世界で生きている。


「私も、いつか王女としてこの国を守る為に、世界中を旅したいのよね」

 

 焚火を囲みながら、ロゼッタは未来の目標を語る。

 その時には、エートルやイリシュも連れていこうか。

 ロゼッタは、自分が王女をしている国家ジャベリンの同盟国である海の国の事に想いを馳せながら、三人での船旅を想像した。


「ロゼッタ様なら、本当にいい王女に、この国を守る為の王女になれますよ」

 エートルは焼けた肉をぱく付きながら告げる。


「そうですよ。幼い頃から王女の身でありながら、騎士団に所属しているって、本当に尊敬します」

 イリシュは調理道具を取り出して、シチューを作っていた。

 肉とクリーム・スープの香ばしい匂いが立ち込めてくる。


 ロゼッタは、二人からすると勇猛果敢な王女だった。

 王女の身でありながら、騎士団に所属して、剣を覚え、今は騎士団の魔導部隊に所属して魔法の腕を磨いている。


『固有魔法』というロゼッタにしか使えない水系統の魔法を覚えたので、今は前線で活躍しているらしい。


「エートル。早く強くなって、私の隣を支えてね。貴方なら、魔王ベドラムも倒せる勇者になれる可能性があるわ」

 ロゼッタはそう言って笑う。


「ありがとう御座います! 俺はもっともっと精進します!」


「じゃあ。私の隣で戦ってね。貴方ならきっと、ドラゴン達相手でも死なずに生きる英雄になると思うわ」

 ロゼッタは最大限にエートルを褒めちぎる。

 そう言われて、エートルはまんざらでも無い顔をした。


 長閑だ。

 三人の時間がずっとずっと、続けばいいと思った。

 この時間は、戦争が終わった後にも続けばいい。

 今はそう確信したい。


「私はこの世界の外の事を沢山、知りたい。教育係のフリースも、お父様もお母様も、この世界の外に関しては、余り教えてくれない。ただ分かっているのは、ジャベリンは小国で、大国には武力面でも、経済面でも、技術面でも何もかも劣っているのだと教えられている。だからこそ、この世界の外を見てみたい。見て、この世界がどんな風になっているのか知りたい。それから、人間の事も、私達と敵対して、私達のジャベリンを属国化しようとしているドラゴンの魔族達の事も………………」


 フリースからの話では。

 この国には“魔王ジュスティス”なる存在が、暗躍していると聞かされている。

 魔王ジュスティスは“倫理の魔王”を標榜し、以前、この国を裏から操っていたらしい。……詳しい事は分からない。どんな存在なのかも、ロゼッタは知らない。


 ただ、腹が立つ存在なのだろうというのは漠然と思った。


 きっと、自分がもっと大人になれば両親やフリースなどは教えてくれるのではないか。


 ドラゴンの影さえなければ、みなで平和に暮らしていけるのに。

 そう思いながら、ロゼッタは食事を終えた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] すみません、私のような不勉強な者には読めない漢字が多いのでルビ振っていただけると助かります。
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