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天空のリヴァイアサン  作者: 朧塚
混沌の世へ。
121/121

聖なる神殿へと続く道へ。

 時間は少しの間、遡る。

 アネモネが積極的にジャベリンで動き始める前の時期の話だった。


 ベドラムは、一人自らを見つめ直す為に、ディザレシーに責任を任せて、真紅の空中要塞を留守にして世界放浪の旅に踏み切ろうと考えていた処だった。

 冒険者の憩いの都であったバグナクの様子を見に行っていた。

 完全に焼け跡ばかりだった。

 そこでと留まっている青年を見つけた。

 頭が若いのに白髪で、何処か飄々とした青年だった。


「戻ってきてみれば、この有様か……。見ろよ、お前ら空中要塞が起こした世界征服宣言によって、エル・ミラージュの怒りを買い、俺達の街は破壊された」


「お前、何処かで会ったか? 何故、私を尾けていた」

 ベドラムは、この青年が自分を見つけて尾行している事には気付いていた。放置していた。どうやら青年の方から現れたみたいだった。


「俺は冒険者をやっているカーディと言う。エレスとサラナは無事か?」

 青年は何処か気まずそうな顔をしていた。


「ん? 知らんな。自分で確認しに行け」

 ベドラムは、出された名前の人物達の事をよく知らないみたいだった。


「いや。俺は会わせる顔が無くてな。ジャベリンの冒険者のギルドに行くのも、気まずくってな。俺は亡命して戻ってきたからな」


 ベドラムは少しだけ何かを考えているみたいだった。


「この街、バグナクには一度戻ってきただけか? またこの街を、ジャベリンを離れるつもりだな?」


「そうだな。沢山の仲間達が此処で黒い炭や、灰になった。取り合えず、仲間である二人の顔を確認したい」


 ベドラムは顎に手を添える。


「お前。カーディと言う名か。覚えておく。よければ、お前、この私を亡命先に案内してくれないか? 私も亡命しようと思っている」


「…………。おい、竜の女王がか? あの空のデカい天空の城はどうなる?」


「大丈夫。私が一番信頼出来る兄弟であるディザレシーという男に最高責任者を任せている。……今のままの私では、一国のトップを務められないような気がしてな」


「身勝手だな。この俺もだが」

 彼は酷い罪悪感に駆られているみたいだった。


 二人の間で、何だか同じような空気が流れていた。



 結局、カーディは、生き残った他の冒険者達の話を聞いて、エレスとサラナの二人には直接、会わなかった。二人の無事が確認出来たならいい。


「会わなくて良かったのか?」


「いや。マジで今更、会わせる顔が無ぇえ。二人の無事を確認出来ただけでもいい」


 スカイオルムの造船所は、今、メチャクチャな状態だ。

 しかも、世界中の海は魔王サンテの不在により海の魔物達の制御が効かず、海洋の貿易面で致命的と言える程の大打撃を追ってしまった。人間を憎み続けていた魔王サンテは、皮肉にも海域の魔物達を押さえる統治者として、つまり“人間達の守護者”として海に秩序をもたらし君臨していたのだ。


 ベドラムは仲間のドラゴンの一体の背中の上に乗る。


「帰りは何とかして帰ってくる。お前は私の所在地を教えないで貰いたい」

 ベドラムがそう言うと、そのドラゴンは頷く。


「お前も乗るだろ? カーディ」


「…………。そうだな。乗せて貰おう」


「場所は何処に行きたい?」


「焔の都市、コンロンの街中だな。スラムになっている場所がいい」


 二人を背に載せたドラゴンは、世界地図の空間に描き出す魔法を紡ぎながら、コンロンの場所を見つけ出しているみたいだった。


「そう言えば、お前はどうやってバグナクに戻ってきた?」


「エル・ミラージュが幾つか軍用ヘリを焼けた都市三つに向けて派遣させているだろう。その一つに密航した」


「お前、中々やるな。気に入った」


 そうやって、互いに余り面識が無かった二人は、同じ“亡命者”という理由で共に旅をする事になった。極めて偶然の出会いだった。



「紅蓮の国コンロンが実質的に、植民地状態にして抑圧している国に『ラギル・マカム』という国がある。大神殿の街であり、大量の宗教家がいるらしい。頭を剃って、衣を纏った坊主ばかりだな」


「うん? そこが気になるのか?」


「なんでも、巨大神殿の一つには“伝説の勇者の剣”が納められているらしい。かつて世界に君臨した大魔王を倒した勇者の剣だ」


「その勇者の存在も、大魔王という存在も知らん。私が生まれる前の時代だろう? もはや、神話の世界じゃないのか?」


「はは。そうか。俺達は何も知らないんだな」

 カーディは呆れたように言う。


 お互いに顔を隠したローブとフード姿で、街路を通り抜け、スラム街を歩いていく。

 途中、カーディは露店に立ち寄って様々なものを購入していく。

 それは身体に付ける軟膏だったり、塩味の効いた焼き鳥だったりした。


「ほらよ。魔王様は、庶民の食い物は喰わねぇえのか?」

 カーディはベドラムに焼き鳥を渡す。


「ああ。喰うよ。ありがとうな」

 渡されて、ベドラムは焼き鳥を頬張る。


 此処から、機関車に乗ると『ラギル・マカム』の大神殿へと向かえる。二人は、そこへと向かう事になった。


 街中は酷い光景だった。

 大気汚染が空を濁しており、路上では薬物中毒の者達が寝転がって道行く人々に金をせびっている。カーディは溜め息を付きながらベドラムと一緒に列車へと乗った。


 大神殿の街。

 伝説の勇者の剣が納められている場所。

 ベドラムにとって、何か奇妙な響きを持ちながら二人は列車に乗っていた。


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