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討魔戦鬼ブランク〜手名芽市神魔討伐譚〜  作者: 九頭龍
第七話 祈りより生まれしモノ、戦鬼ブランク復活
82/130

7-7

◆


「チェンジッ!」


 病院を抜け出した新が白いブランクへと姿を変え、八葉を抱えて高速へ向かって走り出す。

 その腕の中で、八葉の頭から犬耳が飛び出しピコピコと動く。


「む……新、後方から何か来るぞ!」


「何っ!?」


 走りながらも、背後を振り返るブランク。微かな音を立てて、ソレは闇の中からヌッと顔を出すように現れた。

 一見すると、ソレは巨大な白い金属塊だ。しかし、下部に見える一対の太いタイヤが、辛うじてソレが重々しい金属の装甲をまとったバイクのような物だと教えていた。


「対神魔用装甲車マリスチェイサーだ。新、これで行った方が早く着く」


 ブランクの通信装置から哲也の声が聞こえる。だが、ブランクは並走するマリスチェイサーに飛び乗ろうとはしない。


「どうしたんだい、新。君の為に用意したんだけれど」


「いや……哲也さ。俺はバイクの運転なんて出来ないぞ」


「ああ、それなら安心さ。マリスチェイサーはとりあえず僕がリモートで操作する。後は新も乗りながら覚えてくれればいい」


 カチリ、まるでウィンクをするかのようにマリスチェイサーのライトが明滅した。


「なるほど、そういう事なら……頼むぜ、哲也」


 ヒラリとブランクが跳び上がり、チェイサーの座席に跨る。八葉を背後に座らせると、ハンドルを握り締めた。


「了解だよ、新。それじゃあ二人とも、しっかりと捕まっていてよ!」


 チェイサーのタイヤが、唸りを上げ速度を増すと、先とは比較にならないスピードで走り出した。


「くっ……分厚くてデカイのに何て加速だ! 大丈夫か、八葉!」


 ギアの力でようやく制御出来る程の加速に、ブランクは背後の八葉を気遣う。八葉は腕を狼首へと変化させ、ブランクの胴へとしっかり巻き付け、その長い白髪を風になびかせながら頷く。


「ふん、何とかな。それより心せよ、新。奴の……ブライの匂いが、この距離でもどんどん濃くなる。奴に前回のダメージは既に無いぞっ!」


「応っ、落とされるなよ!」


 頷くブランク。その時、チェイサーの金属装甲が一部カチャリ開く。


「これは……新しいギアか?」


 装甲の内部、そこに設置された腕輪状の金属輪を取り出すブランク。その呟きに応えるように、哲也の通信が入る。


「新、それはマリスチェイサーと共に、僕が作った君の新しい力だ。虹枝の幹部と戦うなら、そのブーストギアを、左腕のブランクギアと同様に右腕に巻くといい」


「なるほど。あいつ相手にこれは助かるぜ、哲也」


「ああ、とは言え時間が無い。説明は戦いながらするよ」


「ああ、上等だっ!」


 チェイサーが高速道を進む。その先に、ブライとグレイバーの姿が見えてきた。


◆


「なっ!?」


「ふん、良い攻撃だったが……惜しかったな」


 新が目覚める少し前。上空から放ったグレイバー必殺の一撃、神馬突貫はブライの広げた右掌を貫きこそしたものの、そのままランスをガッチリと握られてしまった。


「くっ、離せ!」


 ランスが放つ光を強める。並みの神魔なら即座に灰へと変わり滅びる魂の輝きを受けても、ブライは動じた様子もなく、握ったランスの槍先に力を込めグレイバーの光を押し消す。


「ははは、単なる力比べで俺に勝てるかよっ!」


 ブライが、光を失ったランスをグレイバーごと持ち上げる。

 そのままアスファルトへと、棍棒を振るうように叩きつけた。


「ぐぁっ!」


 咄嗟にランスを手放し、転がりながらも何とか立ち上がるグレイバー。そこへ瞬時に接近したブライのラリアットがグレイバーの顔全体に炸裂した。


「ォラッ!」


「うぐっ……!」


 金属同士の凄まじい衝突音を響かせ、グレイバーが吹き飛ばされる。

 再び立ち上がろうとしたグレイバーがガクリと膝をつく。グラグラと揺れる視界と猛烈な嘔吐感に動けないグレイバーを、ブライが襟元の装甲を左手で掴み無理矢理立たせた。


「まだ終わっちゃいねえぞっ!」


「ぐぶっ!?」


 ブライの右拳がグレイバーの腹部にめり込む。強力極まりないボディーブロウに、超常の金属で守られたはずのグレイバーだが、たまらず体をくの字に曲げようとする。

 しかし、それを万力のような力で締め上げてくるブライの左手が許さない。立たされ動けないグレイバーに、更にブライの右拳が襲いかかる。


「うぅ……」


 一発、二発、三発……まるでサンドバックのように打たれ続け、グレイバーの腕がダラリと垂れた。

 その様子を見たブライが、攻撃を辞めグレイバーの体を激しく揺する。


「はんっ、テメェの弱さが良くわかったか? どうだ、ブランクの野郎が何処にいるか吐け。そうすれば、命だけは助かるかもしれないぜ?」


「っ……だ、誰が言うもんかっ!」


「そうかいっ、じゃあ死んどけっ!」


 ブライがグレイバーの体を真上へ放り投げる。空高く飛ばされ落下するグレイバーを見上げ、ブライが右拳に力を集中させ始めた。


「あばよ、グレイバー! テメェはここでお終いだっ!!」


 バチバチと黒い光がスパークする凶悪な拳を、ブライが空中のグレイバー目掛けて放つ。

 黒い光はブライの拳から真っ直ぐに飛び出し、グレイバーへと突き進んだ。

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