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討魔戦鬼ブランク〜手名芽市神魔討伐譚〜  作者: 九頭龍
第七話 祈りより生まれしモノ、戦鬼ブランク復活
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7-3


 何の進展も得られないまま、新がダンナチに来て一ヶ月余りが経過した。しかし、以前と同様に新には一カ月間の詳細な記憶が無い。ただ一月経ったと自覚出来るだけだ。


(おかしい、やっぱりこの状況は普通じゃない)


 夜、自身の寝床に寝転びながら新が苦悩する。


(まるでポイントからポイントを、飛び飛びに過ごしているようだ……なのに思い返せば、確かに一カ月以上過ごしたと思える。この感覚……何かで経験したような……)


 だが、考えようとすればするほど、思考はあやふやになりまとまらない。新が諦め、小さく溜息をついた瞬間、慌てた様子でトカクが家に入ってきた。


「ん、トカクさん。どうしたんですか?」


「落ち着いて聞いてください、新さん。敵襲です。すぐにアサとツンを連れ、ここより逃げて下さい!」


「なっ、敵襲!?」


「相手は異形の悪鬼を連れた男が一人ですが……今ダンナチの男衆が戦っています。私もすぐにそこへ戻るので、早く逃げるのです」


「ま、待ってください! それなら俺も一緒に……」


「新さんだからこそ、娘達を託すのです。ひとまずオオグチマカミ様のお社へ!」


「くっ……わかりました」


 新が頷くとトカクが新の手をしっかりと握り出ていく。新はツンを起こさないようにアサを起こし、トカクとは反対側へ、山のオオグチマカミが祀られた祠へと向かった。

 以前通った山道をアサの案内で進む新。途中、ダンナチの老人や女子供とも合流でき、無事祠へと辿り着く事が出来た。


「お父さん……大丈夫だよね?」


 祠を取り囲むように立つ石版の一つ、その根元に座り込んだアサが、腕に抱いたツンの寝顔を見ながら不安そうに呟く。

 新はキュッと唇を結び、大丈夫だとアサの頭を撫でた。



「新さん、八葉さん、入りますよ!」


「八葉! 新は目覚めたかい!?」


 そう叫びながら、慌しく病室にやってきた哲也と智秋に、八葉は眉をひそめた。


「どうした、二人共。新はまだだが……そんなに慌てて何があった?」


「……騒がしくしてすまなかった。とりあえずこれを見てほしい」


 哲也が取り出した端末を操作し表示された映像を八葉に見せる。

 そこには、何処とも知れない部屋の中、一人喋るブライの姿が映っていた。


『あ〜、テステス。聞こえるか、神魔狩り。三日前、お前達から受けた借りを返してやる。明日、深夜零時、この間の高速まで来い。来なかった場合…………考えてなかったな……まあ、適当に目に付いた何十人か喰う事にするか。以上だ』


 そこで動画の再生が終了し、哲也が溜息を吐く。


「ついさっき、あの高速を管理している会社に送られた物だよ。前回の戦闘で損傷が激しかったから、今現在も通行止めなのは良いとして……」


 チラリと哲也が新を見る。八葉は俯き肩を落とした。


「なるほど……事情はわかった。が、今の新を戦わせる事は不可能だ」


「あ、あの! それなら僕が行きますっ!」


「駄目だ、智秋。あのブライという奴は、新と私が苦戦を強いられる難敵。お前一人を行かせるわけにはいかない」


「でも……このままじゃ何人も犠牲になるじゃないですか! 八葉さんはそれで良いんですか? もし新さんが僕の立場だったら、黙って見ているんですか!?」


「ぐ……むぅ……」


「……もちろん無理はしません。新さんが目覚めるまで、しっかりと時間を稼ぎますよ。この間の逆ですね」


「そうか…………わかった。ならば私も同行しよう」


「いや、八葉は新の側に居た方が良いだろう。智秋君のサポートは、僕が遠隔で行おう……智秋君はそれでいいね?」


「はい! それじゃあ八葉さん。ブライについては任せてくださいね!」


「うむ……だが決して無理はするなよ。新が目覚めた時に、悲しませたくはないからな」



「ようやく見つけたぞ、ここがそうか」


 新達が祠に着いてから程なくして、祠に突如一人の男が現れた。黒く染め上げられた獣の毛皮をコートの様に羽織り、顔の上半分は鬼を模った面で隠され、笑みを浮かべる口元のみが露わだ。

 見慣れぬ男の登場にダンナチの村人達から小さな悲鳴があがる。それを見た新はアサに後ろへ下がるように指示し、男の前へ進み出る。


「お前か……村を襲ったっていうのは。他の皆はどうした!」


 新の声に、鬼面の奥の目が光る。じろじろと新を眺め、腕を組んで考え込んだ。


「貴様、変わった格好だな。私に刃向かった奴等がどうなったかだと? ククク、安心するといい。皆今頃静かに眠っているだけだ」


「何だと!?」


「そいつ達もお前達も、これからこの私、アガルテに従うという重要な役目がある。無駄に死なせはせんよ」


「はっ、従うだって? 誰がお前みたいなのに……」


「従うのさ。コイツの力で生まれ変わってなっ!」


 そう言って鬼面の男アガルテは、外套の中から何かを取り出した。

 アガルテの掲げる物を見た新は言葉を失う。

 大きさはちょっとした盆栽程度の、一本の小さな木だ。枝には葉や花の代わりに、不思議な光沢のある黒い石が生えていた。


「嘘……だろ……」


 思わず呟く。その声は、驚きからか酷く掠れていた。

 しかし、それも無理はない。アガルテの持つ木こそ、新が長年探し続けている、全ての元凶である虹魔木だったのだから。

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