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討魔戦鬼ブランク〜手名芽市神魔討伐譚〜  作者: 九頭龍
第六話 戦慄! 獣将戦鬼ブライの脅威
72/130

6-11


「これが、封印解放したグレイバーの力……」


 走りながらグレイバーが呟く。第一封印を解放した事で、その速度は以前と比べ大きく上昇し、また姿も変化していた。

 元々ブランク同様、曲面の多いスラリとしたシルエットの金属装甲は、中世の騎士を思わせる鎧然とした形状へ変わり、また頭部はユニコーンの頭を象った兜となり、額の角もより大きくなっている。


「アキトの力をより引き出した結果か……でも、これじゃあ、まだまだ足りないっ!」


 解放前と比べ、スピードは確かに数段上がっているが、それでも前方のデュラハンには届かない。


「もっと、もっとだ! もっと僕に力を寄越せ、アキトッ!!」


 グレイバーが天を仰ぎ、夜空に、そして自身の内側に向かって吼える。その声に応える様に、再度装甲に変化が起きた。

 両足の装甲が細く長く伸びる。更に腰を覆う鎧が大きく後方へ肥大化し、そこから新たに一対の脚を成す装甲が現れた。

 二足から四足へ、神話のケンタウロスの様な姿になったグレイバーがスピードを増して夜道を駆ける。


「これは……!? はは、凄いぞ、後脚もイメージ通りに動く! それにこの速さなら!」


 グレイバーの言葉通り、前方を走るデュラハンとの距離がどんどんと詰まっていき、今にも手が触れそうだ。


「むっ、執念深いなっ! 吾輩は忙しいと言ったであろう!!」


グレイバーの接近に気付いたデュラハンが、どこにしまっていたのか、再びあの大剣を手に取る。

 先の戦闘で、グレイバーによって折られたはずの刀身は、デュラハンの力によってか、復元され元の輝きを放っていた。


「ハァッ!」


 その大剣を近付くグレイバーへと振るう。風を巻き上げ迫る刃を、並走したまま僅かに身体を逸らし躱すと、グレイバーは自身の背に右手を回す。

 カチャリと小さな音を立て、背面の装甲が一部外れ筒状のパーツがグレイバーの手に落ちる。


「ヤッ!」


 金属筒をグレイバーがビュンと振るうと、太さはそのままに長さが1メートル強程に伸びた。


「チャージッ!」


 グレイバーが金属筒を構え叫ぶ。すると白い光が金属筒の先端に集い、刃を構成し光の薙刀グレイブとなった。


「おのれっ! その様な棒切れ一本で吾輩を止められるものか!」


「止めてみせるさ……はっ!」


 体格差を利用し、デュラハンが横手からグレイバーに馬ごとぶつかる。一瞬グラつくグレイバー。

 そこを狙い、上から突き刺そうとするデュラハンの攻撃を、グレイバーの薙刀が絡め払う。大剣の質量と比べるとマッチ棒に等しい細さしかない金属筒が、折れず欠けず、ただしなやかに震えた。

 予想外の結果に、今度は驚きと共にデュラハンの思考が途切れる。


「何っ!?」


「隙ありっ!」


 光の刃がデュラハンの騎乗する馬を刺し貫く。黒毛馬は短く嘶くと、細かな塵になって掻き消えた。

 突然、騎馬を失ったデュラハンが、走行していたスピードのまま、大きく前方へ勢いよく投げ出される。


「ぶっ……ぐっ!」


 ゴロゴロと転がりようやく止まると、慌てて立ち上がり周囲を見渡すデュラハン。すぐ背後に高速道を支える橋脚がある事に気付き、すぐさま跳び上がり橋脚をよじ登り始める。


「な、何とか……ブライ様の元まで戻ればっ!」


「く、ブランク達に近付き過ぎたか……なら! エクセス・チャージッ!」


 グレイバーが走る。その四脚を光が包み込み、なお速度を上げさせる。手にした薙刀の刃が輝き形状を変え、ユニコーンの角を模した円錐状のランスになった。

 光のランスを脇にしっかりと構え、橋脚を垂直に駆け上るグレイバー。


「いくぞっ! 神馬しんば突貫とっかん!」


「な? ば、ばぐぁなぁっ!」


 グレイバーのランスが、デュラハンの胴、その真芯を捉え深々と突き刺さる。それでもグレイバーの勢いは止まらず、デュラハンの巨体を槍先に刺し掲げたまま、一気に橋脚を登りきり、高速上空へと跳び上がった。

 と、同時にデュラハンが、貫かれた胴から灰へと変わり崩れさる。灰の中から現れ落下する黒い結晶を、空中で器用にキャッチすると、グレイバーは高速道の上に着地した。


「ふぅ……デュラハンはこれで良し。後は……ブランク、今行きますっ!」


 グレイバーがケンタウロス形態のまま走り出す。向かう先はすぐ近く、ブランクとブライが戦っているはずの場所だ。


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