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「へんっ、こうして会うのは初めてだな、ブランク」
右肩から先を巨大な神魔の腕に変え、ブランクのバイツ・ストライクを真っ向から受け止めた大男が不敵に笑う。その顔は、紛れもなく多聞から知らされた男のものだった。
「大橋剛太……」
「あぁ? 誰だ、そいつは? 俺はブライ、虹枝の会の幹部だ。よろしくなぁっ!」
「クッ! アラクネ・ソウルコネクトッ!」
ブライが腕をグルグルと大きく振り回し、ブランクを放り投げる。ブランクは水切り石の様に回転し水平に飛ばされながら、指から大量の蜘蛛糸を放出した。それを高速のあちこちに結び付け無理矢理減速させてなんとか着地する。
「へぇ、やるじゃねえか」
アスファルトに擦られ、火花を散らしながらも無事に着地したブランクを見て、ブライが嬉しそうに呟く。そんなブライの後ろから、その巨体に似合わない気弱な態度でデュラハンがそっと声をかけた。
「あ、あのう……」
「ん? ああ、お前か。さっきは危ない所だったな」
いくら大男とは言え、それは人間の規格では、だ。自身を見下ろすようなデュラハンに全く気後れなく、ブライが巨大化していない左手で神魔の鎧をペシペシ叩いた。
対照的にデュラハンは大きな体を小さく縮こませ恐縮する。
「は、ありがとうございます。ブライ様は、虹枝の幹部というお話でしたが、本日は如何なる用件でこちらへ?」
「おお、そうだった……ほら、これをくれてやる」
ブライはそう言うと、ジャージのポケットからブラックギアを、カチャリと音をさせながら抜き取り、無造作にデュラハンに放り投げる。
「おっと……これは?」
「お前の力を底上げするもんだ。腹一杯以上の魂を溜め込み使用出来る。そうして強くなれば、俺達虹枝の会はお前を歓迎しよう」
「おお、そのような物を吾輩に!」
「期待してるぜぇ、デュラハン。が、その前にまずは奴だ」
ブライがジロリと鋭い視線をブランクに投げかける。一方のブランクもまた、素早く起き上がるとブライの動きに反応出来るよう構えた。
「くっ、あんな中途半端な顕現なのに、なんつう馬鹿力だ……けど、見たか八葉? あいつが今、デュラハンに渡したのは、間違いなくブラックギアだ。やっぱり、虹枝がアレを神魔に広めてたのか!」
『うむ……そうだな……』
「おい? どうした、八葉?」
『……いや、あれだけの力を発揮したのに、奴からは神魔の臭いが今もなお殆ど出ていない……それが気になってな』
「またケルピーの時みたいに結界か?」
『いや……一応、その類の力は特に感じんな。それにこの臭いの薄さ、奴は神魔ではなく人間だと言われた方が、まだ納得できる』
「人間!? おいおい、あんな腕生やした奴が人間だって言うのか?」
『む〜、あり得ん事だとは私もお……』
「ははは、良くわかったな!」
ブランクと八葉の会話に割って入るように、ブライの大きな笑い声が響いた。
「今お前が言った通り、俺は神魔じゃねえ……人間だ。だが、ただの人間ってわけでもねえけどな」
「ブ、ブライ様!? それはどういう意味で……」
「うるせえっ、テメエは黙って後ろで見ていろ、デュラハン! 虹枝幹部の戦い、そうなかなか観れるもんじゃねえぞ!」
「は、はっ!」
言葉と共に、ブライから発せられる圧力に、恐れ知らずな神魔であるデュラハンは身体を震わせ、数歩後退りする。
そのデュラハンに対し、つまらなそうに鼻を鳴らすと、ブランクへ向かい構えるブライ。
「待たせたな。そんじゃあ始めようか!」
ブライが腰を落とし中腰の姿勢をとる。と、次の瞬間、踏み込んだアスファルトを跳ね上げ、ブライが超加速でブランクへ突っ込んできた。
『来るぞ、新っ!』
「応っ!」
短く応え、ブランクもまたブライに向かって走る。
「オラァッ!」
「ハァッ!」
打ち出された、ブライの巨大な右拳に、ブランクが自身の右拳を打ち込む。
━━ガンッ!━━
両者の激突により激しい音が鳴り響く。両拳はぶつかり合ったまま静止し、互いの力でブルブルと震える。
「ふん、なかなかい〜いパンチ持ってるじゃねえか。だが、この程度じゃあ、俺は止められねえぞ?」
「くっ、チャージッ!!」
ブランクの引いた右腕に力が宿る。ブライは口端を持ち上げながら、ブランク同様に腕を引いた。
ブランクとブライ、申し合わせたかのように再び右拳を繰り出し、またもや両者の拳が正面からぶつかる。
先の数倍、重い音が発生したが、結果は変わらず二人の拳は合わさったまま停止した。
「さっきのよりは、だいぶマシだな。だが、これが限界ってわけじゃないだろう?」
『新っ、忘れたのか!? 奴はエクセス・チャージすら受け止める。ここは一度距離を取れ!』
「ちっ!」
八葉の声に、ブランクが後方へと飛び退く。それを追おうとせずに、ブライが右拳を開いた。
「オオオッ!」
開いた右手で力強く路面をブライが叩く。その瞬間、空中に居るブランクに向かって、コンクリートを突き破り巨大な象に似た生き物が突っ込んできた。
「なっ、くっ!?」
逃げ場のない空中での、突然の攻撃に対応出来ず、巨獣の体当たりを受けて吹き飛ぶブランク。獣はそのまま溶け込むように虚空へと消える。
ブランクは何とか体を捻り着地すると、ブライがゆっくりとブランクへ向かって歩き出す。
「なぁ、ブランク。テメエは花を育てた事あるか?」




