表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
討魔戦鬼ブランク〜手名芽市神魔討伐譚〜  作者: 九頭龍
第四話 紅蓮の記憶と鬼師匠
36/130

4-11



「む、終わったようだな」


 三郎太の提供する料理を次々と平らげながら、夢幻門を覗き込んでいた八葉が呟く。夢幻門の光は消え、内部のミニチュアで戦っていた二人の姿が搔き消えた。同時に、眠るように瞳を閉じていた新と椿が目を開ける。


「だぁ〜〜、まだダメかぁ!」


 座ったまま両腕を上げ、新が後ろにバタリと倒れる。椿は腕を組み、ウンウンと頷いた。


「新っちの気付き、そのものは正解っす。実際、あれ以降は結構戦えるようになってきたっすからね。これから必要なのは息切れの無いように、持久力の増加と細やかなコントロールっすね」


「……なるほど、ちなみにその為には?」


 首だけを持ち上げ尋ねる新に、椿は輝かんばかりの笑顔で答えた。


「もちろん、鍛錬鍛錬、更に鍛錬あるのみっす」


「だよなぁ……悪い、椿。また手合わせ願いたいところだけど、まだちょっと無理っぽいわ」


「ふふん、直接魂だけで戦うからな。良い鍛錬にもなるが、それだけ負担も大きいだろう。なあ、三郎太」


「心得ております、八葉様。こちらをどうぞ、新様。心身の疲労に良く効く薬湯でございます」


 八葉に促され三郎太が差し出す湯呑みをゴクリと一口飲む新。薬湯というだけあって、キツイ苦味が口中に残るが、これも強くなる為の一環と、覚悟を決めて一気に飲み干し、三郎太へ湯呑みを返した。


「ありがとうございます、三郎太さん。……そうだ、ついでにこの辺りで、携帯電話の電波が届く場所ってありますか?」


「携帯電話……でございますか? それでしたら、おそらく登山道まで出れば可能かと思われます」


「どうかしたのか、新?」


「ん、ちょっとな。少し電話してくる……よっ」


 そう言うと、新が疲労で重い体を動かし立ち上がる。そのまま外に向かうが、やはり疲労からか体がふらついてしまう。


「くっ……これで山道に戻るのはちょっとキツイな……仕方ない、チェンジ!」


 気怠かった体も、ブランクに変身する事ですっと軽くなった事を実感する新。するとその背中を八葉がポンと触る。


「ふふん、どうせブランクになるなら、私と一緒の方が早いだろう?」


「八葉……助かる」


 憑依合身した二人が、青い輝きを突き抜けて登山道へ向かう。生身では時間のかかった道も、八葉と共に青いブランクとなった今ならばあっという間だった。

 登山道近くで人目につかないよう変身を解くと、新は携帯を取り出し電話を掛ける。

 数度の呼び出し音が止むと、新が先に口を開いた。


「……哲也か。俺だ、新だ」


「やあ、新。どうしたんだい? こっちの方は、ブランクギアの全体的な出力強化を試験中だけれど、実用化にはもう少し時間がかかると思うよ」


 通話相手である哲也は、眠そうに欠伸を噛み殺した声で応えた。おそらく寝ずに作業していたのだろう。


「別に催促の連絡じゃないさ。そのブランクギアに一つ、追加して欲しい機能があってね」


「君自らの提案とは珍しいね……聞こうじゃないか」


「ああ、追加して欲しい機能はな……」


 新が自らの希望を手短に伝えると、哲也にしては珍しく言いにくそうに応える。


「出来なくはない……技術的には充分可能だね。だけど、いいのかい? それを作動させるという事は……」


「勿論、全部覚悟の上だ。よろしく頼む、哲也」


「君がそう言うなら、了解だ。新の方が終わるまでに、納得のいく物に仕上げておこう」


「期待してるぞ、哲也」


 哲也と話し終え携帯を切ると、新は自分を見つめる八葉の視線に気付く。その瞳に何故か哀しげな色を見た新が首を傾げる。


「八葉……どうかしたか?」


「いや、なに……新が選んだ事とは言え、これでまた戦いが激しくなる。……そう思ってな」


「はは、今更だな。どんなに激化したって、最後まで付き合ってもらうぞ、八葉」


「無論だ。これは邪を祓う私の戦いでもある。私の事は良いのだ、新。ただ、な」


 再び八葉が、その大きな瞳で新を見る。八葉の言わんとしている事を察した新は、少女の頭をポンポンと優しく叩いた。


「なんだ、俺の心配をしてるのか? 八葉が居るんだ、俺なら大丈夫さ」


「ふ、ふん。別に新の心配なぞ……」


 腕を組み顔を背ける八葉。小さな相棒の口がピクピクと動いているのを見て微笑むと、新が話を変える。


「そう言えば、夢幻門の中で鬼神になった椿が気になる事を言ってたんだが……鬼神の力、今の八葉には不可能な神域の力だってな。それってさ……」


「奴め、余計な事を……うむ、別に隠していた訳では無いが、敢えて言わなかった話だ。確かに今の私は、真神としての力、そのほとんどを使用する事が出来ない」


「それはまた何故だ?」


 新の疑問に、八葉は俯きフウと小さく息を漏らすと顔を上げ答える。


「……言うても詮無い話だが……私や椿もまた、不愉快な事ながら、方法や程度の差こそあれ、あの神魔同様、依り代である人間の魂を力に変える。新はもう知っているな?」


「ああ、言わば魂は力を生む為の燃料、ガソリンみたいなもんだよな」


「そうだな。そして行使する力が大きければ大きい程、消費される魂も大きくなる。椿も夢幻門の中では、新相手に随分と暴れていたが……こちら側で無策にあの姿になった場合、そう長くは戦えないだろう」


「確かに……あれだけの力なら、そうなんだろうな」


 鬼神となった椿の、途方もない力を思い出し新が頷く。八葉もまた頷き返すと話を続ける。


「そして、私の場合、これはより深刻な問題になる。私の依り代である八葉……元の八葉が、今どんな状態か、という事だ」


「あ……」


「そうだ。魂の大部分を虹魔石に奪われ、残った残滓のように僅かな魂だけが、真神と混じり合い私を構成している。現状の私には、新が目にしてきた私の異能、あの程度の事が限界なのさ」


 そう言うと、八葉が新の左腕、ブランクギアを指し示す。


「勿論、憑依合身し新の魂を使用して力を引き出す事は出来る……が、今の新では、真神の力、その全てを出しきれてはいないな」


「なるほど、そういう事か」


「言った通り、詮無い話だろう? まあ、可能性があるとすれば、新が今より強くなり私の力を存分に扱えるようになることだろうな」


「結局、そこに行き着くわけだな。よしっ、哲也への連絡も無事済んだし、戻って椿にまたシゴいてもらうとするか…………ん?」


 再び、椿達の元へ向かう為、ブランクへと変身しようとする新。その時、新の携帯が低い振動音を発しながら震え、着信を告げた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ