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討魔戦鬼ブランク〜手名芽市神魔討伐譚〜  作者: 九頭龍
第三話 ココロの形、歪んだセイギ
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3-5


「くうぅっ!」


 頭を抑え智秋が立ち上がる。どうやらいきなり誰かに頭を蹴り飛ばされたようだ。膨れ上がった頭部は瞬時に元の智秋の頭へと戻っている。

 痛みではっきりと戻った意識で見ると、男女二人組があの男達を、智秋とは逆方向へと逃しているようだった。

 異質な、まるで現実離れした二人だ。

 女……少女の方は、巫女のような格好に、両腕を包帯でグルグル巻きにしている。

 しかし、より異常なのは男の方だ。全身を白い金属装甲で覆った姿は、まるで智秋が目指したヒーローのような姿だった。


「ようやく覚醒した……ようだな。喰われる前に、ギリギリ間に合って良かったぜ」


 男達を逃した後、こちらに向き直った白いヒーローが智秋を見つめて呟く。その言葉に智秋はムッとした。


(間に合った? 何が間に合った、だ! ……あいつらを君達が逃したら、誰がこの落書きを消すっていうんだ!)


 意識のはっきりした智秋は、自分が今さっき、男達に何をしようとしたのかを、全く覚えていなかった。

 当然、彼がヒーローみたいだと思ったブランクが、何に間に合い、誰を助けようとしているのか、想像もつかない。

 ただ、妙な空腹感と焦燥感、そしてそこから生まれるイラツキだけは、はっきりと認識していた。


『せっかくのチャンスだったのに……くっ、貴方の邪魔をするなら、この方達も悪です! 私達の力で懲らしめてしまいましょう、智秋』


(うん! そうだね、アキト)


 アキトの言葉に頷くと、智秋の全身に今まで以上の白い光が溢れ出す。それを見たブランクが警戒し構えた。

 今まで誰にも見られなかったアキトの光が見える存在の出現に、智秋は小さな疑問を感じたが、構わず苛つく心に任せ、ブランクへ向かって走り寄る。

 

「やぁっ!!」


 ブランクへと殴りかかった智秋の動きは、およそ格闘技と呼べるレベルではない。しかし、その体には今まで何人もの悪を倒した、アキトの力が込められている。力もスピードも、既に常人の範疇を超えた智秋の拳が智秋へと迫る。


「えっ……!?」


 その拳が今、ブランクの掌によって簡単にいなされた。更に伸びた腕を捕まれ、智秋が反応する暇も無く、まるで天地が一瞬でひっくり返るように素早く投げられた。


「ぐぁっ!」


 アキトの力に守られ、地面との衝突はそれほど痛みは無い。智秋はゴロゴロと転がり、ブランクから距離を取って起き上がった。


「マズイな、あの力……予想以上に神魔と融和しているようだ。急げよ、新!」


「ああ、わかってる」


 八葉の言葉に頷くブランク。智秋は、自身の拳を簡単にあしらわれ、どうするべきか戸惑う。

 そんな智秋に向かって、ブランクが語りかけた。


「えっと、確か長根智秋君……だったね。君の中に居る奴は、君に害を為す危険な悪魔だ。今、助け……」


「嘘だっ!!」


 ブランクの声を智秋の叫びが搔き消した。


「アキトが悪魔? 危険? そんなわけあるもんかっ! アキトだけが僕を守ってくれた! アキトだけが僕と一緒に居てくれた!」


 ブランクの言葉に反発した智秋は、怒りのままに叫ぶ。怒れば怒る程、心の奥底からグツグツと新たな怒りが沸き起こり、怒れば怒る程、智秋の意識は熱にあてられたように混濁していく。

 そんな智秋を後押しするように、アキトも智秋の内側で叫び煽る。


『そうです、智秋! もっともっと怒るのです! もっともっともっと私の力を必要とし引き出しなさいっ!』


「力……アキトの力をもっと! あいつも誰も敵わない力をっ!」


『彼等は智秋の事を知っています。ここで倒さなければ、智秋の家族にまで危害が及ぶかもしれませんよ! 私の力で彼等を倒す……いいえ、殺すのです!』


「殺す……殺す! 殺して! 殺して! 殺して、食べる!!」


 智秋が天に向かって吼えるように叫ぶ。それに呼応して智秋の全身が急激に肥大化し異形を形造った。

 巨大な蹄が大地を踏みしめる。その姿は、人型の前肢を有する二足歩行の巨大な馬だ。更に頭部には巨大な白い一本角が生えていた。


「ユニコーン……か」


「グォォォッ!」


 ブランクの言葉を肯定するように、ユニコーンが低く唸る。その瞳の奥、ユニコーンの奥底で智秋は悶えていた。


(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い……)


 体が膨れ上がった瞬間から、智秋の魂は酷い苦痛を感じている。まるで、智秋という存在そのものを、少しずつ乱暴に毟り取られ咬み裂かれるような痛みだ。

 同時にどうしようもない飢餓感をおぼえる。それはユニコーンの目を通して見える、ブランクと八葉を早く喰らえと責め立てた。


(痛いよぉっ! アキト! アキトッ!)


『少しの辛抱です、智秋。私が今から彼等を食べれば、その痛みもすぐに収まりますよ!』


 内側で響くアキトの声に、智秋は悶え震えながらもユニコーンの中で頷く。アキトだけは絶対に嘘なんてつかない。絶対に自分を裏切らない。智秋はそう信じ切っていた。


「ようやく表に出てきたな! くっ……さぞ痛いだろう、苦しいだろう、智秋君。今、俺が楽にしてやるっ! チャージ!!」


 ブランクの構えた右腕が、先程の智秋と同じように白い輝きを放つ。その光を目にしたユニコーンは、一声大きく(いなな)くとブランクへと突進した。

 

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