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討魔戦鬼ブランク〜手名芽市神魔討伐譚〜  作者: 九頭龍
第三話 ココロの形、歪んだセイギ
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3-6


「おっと! 速いな!」


 八葉を抱き抱え、ブランクはユニコーンの突進をヒラリと跳躍して躱す。

 そのまま通り過ぎる巨体を飛び越え、着地し八葉を降ろすと、再び白く輝く右腕を魔馬へと向け構える。


「離れていろ、八葉」


「ああ、だが気をつけろ、新」


 頷く八葉を視界の端で確認したブランクが、今度は逆にユニコーンへと走り距離を詰めていく。

 対してユニコーンは、立ちはだかるように仁王立ちでブランクを迎え撃った。


「フンッ!」


 相手に比べて一回り大きな身体のユニコーンが、その強靭な脚力で、ブランクの右下方から抉るように鋭く蹴り上げた。

 唸りを上げ迫る豪脚を、スッとすり抜けるように躱すと、ユニコーンの左脇腹へとブランクが輝く右手を伸ばす。


「セパレス・インパクトッ!!」


「グゥォッ!」


 ブランクの右腕からユニコーンの体へと、白い輝きが突き抜ける。その光の奔流に流されるように、ユニコーンと結びついていた智秋の魂が、彼の肉体と共に大きく後方へと飛ばされた。


「えっ!?」


 痛みに苛まれていた智秋は、自身を包む暖かい白い光に気付く。視線を落とすと、巨大な馬の怪物が見えた。

 神魔と依り代である人間の結びつきを切り離す、ブランクのセパレス・インパクト。本来であれば、智秋はそのままユニコーンの体から放出されるはず……だった。


「新っ、まだだ!」


「ちっ!」


 八葉の声に舌打ちするブランクが、赤く光るスリットから睨む。

 その視線の先、白い光に包まれ宙に浮かぶ智秋の体には、ユニコーンの背中から伸びた何本もの触手が絡みついていた。


「ぐふふっ、残念でしたね」


 ユニコーンが、顔を醜く歪め笑う。


「私と智秋の繋がりは、そう簡単に断ち切れるものではありませんよっ!」


 ユニコーンが両腕を広げると、智秋を包む白い光が弾け飛び、触手に手繰り寄せられるように智秋がユニコーンの体の中へと潜り込んでいった。


「くっ、そうか……それが智秋君を丸め込んだ理由か」


「ふふん、いいえ。貴方のような、私達神魔から依り代を切り離せる存在は想定していませんでしたね。ただ、こうやって依り代自ら、その身を捧げてくれた方が……私はより強くなれるのですよ!」


 完全に智秋を取り込みなおしたユニコーンが、握りしめた拳をブランクへと打ち下ろす。

 その攻撃を、大きく後ろへ跳んで回避するブランク。着地した彼の左隣には、いつの間に居たのか、八葉が腕を組み立っていた。

 八葉は、正面を向いたまま、ブランクへと語りかける。


「倒すだけならば易し、されど……だな。かなりの難敵のようだが、少年の事は諦めるか、新?」


「まさか、な」


 ブランクもまた、ユニコーンから視線を動かさず八葉の問いに答える。


「まだ、彼はユニコーンの中で生きている。魂と肉体を神魔に蝕まれてなお、生きているんだ。なら、俺達が諦めていい道理なんて何一つないさ。それに……楓ちゃんとも約束しちまったしな」


 その言葉に、八葉が肩を竦め大袈裟に溜息をつく。しかし、顔には優しげな微笑みが浮かんでいた。


「やれやれ……だから私は、ああいう約束を軽はずみにするのは感心しないのだ。まあ、もっとも新ならば、約束しようとしまいと、結局は今と同じ事を言うだろうと思ったがな」


「はは、流石は八葉だな。俺をよくわかってるじゃないか。それじゃあ……頼むぞ。チャージッ!」


 ブランクの声に呼応して、白い輝きが辺りを照らす。左右両方の腕に纏った光の軌跡を、闇夜に残しながら、ブランクは再びユニコーンへと突撃した。


「くくく、片手で駄目なら、今度は両腕、ですか? 何と浅はか! まさに浅慮極まりなし!」


「それはどうかなっ!」


 嘲笑うユニコーンの繰り出す拳を、輝く両腕でガードする。動きの止まった腕を蹴り上げ弾き、ブランクがその隙に両腕をユニコーンへと押し当てた。


「智秋君、ちょいと強烈だが我慢しろよっ! セパレス・ダブルインパクトッ!!」


 先の数倍量に達する輝きが、ブランクの両腕から放たれる。再び智秋がユニコーンの背後より飛び出すが、やはり伸びた触手によってユニコーンから切り離せない。


「くっ……ふ、ふはは、だから無駄だと……」


「いいや、無駄なんかじゃない。狙い通りさ」


 輝きの中で首を振るブランクの言葉に、ユニコーンが戸惑う。その瞬間、ユニコーンと智秋を繋ぐ触手がブチブチと音をたてて千切れた。


「何だとっ!」


 驚愕するユニコーンが振り返るのと同時に、その隣をブランクが走り抜け、輝きの消失と共に落下する智秋を両腕で抱き止めた。腕の中で智秋が弱々しく首を傾けブランクを見る。


「どうして……僕は……アキトと……」


「悪いな、智秋君。全部、俺の自己満足だ」


 ブランクのその言葉に、一筋の涙を流し智秋は目を閉じた。


「とりあえず……上手くいったな、八葉」


「ふんっ、私の力をもってすれば容易な事だ。ただ、少々強引な切り離しだったのが気掛かりだが……一応、大丈夫なようだな」


 ユニコーンの触手を噛み裂いた、白狼の頭部そのものな腕を、ブランクに抱かれたまま、気絶したように眠る智秋に向け八葉が頷く。

 ブランクもまた、八葉に頷き返すと、物陰に智秋をそっと降ろした。

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