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討魔戦鬼ブランク〜手名芽市神魔討伐譚〜  作者: 九頭龍
第二話 怪奇! 極楽町の消える首吊りホスト
14/130

2-7


『このままではマズイ……飛べ、新っ!』


 突然響く八葉の声に、ブランクは肩をすくめる。


「おいおい……飛べって、ここから飛び降りろってことか?」


『そうではない、グリフォンの翼だ』


「……そうか、なるほどっ! アレの吸収が間に合ったんだな!」


 八葉の言葉に合点がいったのか、ブランクが頷く。


「よしっ、そうとなれば……チャージッ! はっ!!」


 両脚に青い光を纏わせ、ブランクはその力を一気に放出して屋上を蹴り、高く高く跳躍した。


「グリフォン! ソウル・コネクトッ!」


 ブランクの声に反応して、体から緑の光が飛び出す。

 光は宙空に、あのグリフォンの姿を形作り、そのまま再びブランクの中へと入っていった。


「おぉぉっ!」


 全ての光がブランクの中へ入ると、続いて背部に緑の光が現れ集まる。

 光は姿を変え、装甲と同様の青い金属質な一対の翼へと変化した。

 金属とは思えないしなやかさで、バサリと翼が大きく羽ばたく。それによって空中に留まったブランクが、アラクネの居るビルを見下ろした。


「これは……随分デカくなったな……」


 ビルの屋上とほぼ同サイズまで巨大化した蜘蛛に、ブランクはため息をつく。


『奴め、男どもを喰って溜め込んだ力を解放したな……だが、これで奴の馬鹿げた再生力は、打ち止めだろう』


「だといいけど、なっ!」


 ブランクが空中で大きく飛び退る。ブランクの居た場所に、蜘蛛糸の塊が、まるで大砲の弾のように複数個通過した。

 見るとアラクネの巨大な腹部には、いくつもの突起物がある。おそらく、通常の蜘蛛が糸を出す、糸イボと同じような器官なのだろう。

 そこから生み出され射出された、今の蜘蛛糸弾の速度は、先程アラクネが両腕から出した糸よりも数段速い。

 それをブランクが回避出来たのも、偶然の占める割合の方が大きいだろう。その事はアラクネにもわかったようで、再び腹を持ち上げブランクに向けると、蜘蛛糸弾を射出する体勢をとった。


『新、一応飛べたとはいえ、まだまだ不完全な翼だ。そう長くは保たないぞ』


「そうか……まあ、どのみちあの巨体を長く放置は出来ないしな」


 八葉の言葉に頷きながら、ブランクはチラリと地上に視線を向ける。そろそろ巨大化したアラクネに気付く人間も出ているかもしれない。


「下手に騒ぎになって、奴に逃げられないよう、短期決戦でいくぞ、八葉」


『ああ、だが強力になった奴の糸はどうする。あの速さ、この翼では近づくのも難儀だぞ?』


「それなんだけどな……どんなに強力でも、蜘蛛糸は蜘蛛糸だろ? だったら……」


 そう言いながら、腕を前に突き出す。


「サラマンダー、ソウル・コネクトッ!」


 グリフォンの時と同様に、ブランクから赤い光が放たれ、光はトカゲのような神魔を思わせる像を描く。それは、サイズこそ小さいが、新が夢で見たあの異形に酷似していた。

 赤い光のトカゲがブランクへと吸い込まれる。するとブランクの四肢が、まるで赤熱化したように赤く染まった。


『……なるほど、炎か』


「ああっ、これなら蜘蛛糸だって……エクセス・チャージッ!」


 ブランクの叫びで右脚が強く輝く。しかし、それはいつものように純粋な光ではなく、激しく燃える真紅の業火だ。

 ブランクは翼を動かし、真っ直ぐ限界まで高度を上げると、空中でクルリと一回転する。

 そのまま伸ばした燃える右脚をアラクネに向け、一直線に下降を始めた。


「バイツ・フレイム・ストライクッ!!」


 ブランクの翼から、後方に向けて炎が凄まじい勢いで噴射した。それによって、ブランクの下降速度は瞬く間に増していく。速度が増すごとに今やブランクの全身を包む炎が真紅から黄色、黄色から白色へと変化した。


「いい加減、私の糸に捕まりなさぁいっ!!」


 アラクネから再び多数の蜘蛛糸弾が飛ぶ。しかし、ブランクは避けるどころか止まろうとすらしなかった。


「なっ! 何!?」


 ブランクへと近づくだけで、燃えず溶けず、ただただ蒸発していく蜘蛛糸弾に、アラクネが驚きの声をあげる。


「これで終わりだ、アラクネッ! 今、楽にしてやる……ハァッ!」


 更に加速し、まるで白く輝く流星のようになったブランクが、一瞬で巨大蜘蛛となったアラクネの体内を突き抜け、そのまま再びスィッと空中へ飛び上がった。


「い、嫌! 嫌よぉ……!!」


 アラクネの巨体から比べたら、遥かに小さな傷でしか無い、ブランクの通り抜けた穴から青白い炎が生まれ、全身へと一気に広がる。

炎はアラクネの巨体を隠すほどに燃え上がったが、数秒後に何もなかったかのように消え、後には灰の山だけが残っていた。

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