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永遠の愛を刻み続ける  作者: 美雪
新婚旅行編

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ロデウス視点 ⑤ 財産

 グウィネス二日目。


 視察団は早速、話し合いに入った。僕とレティは関係ないため、自由行動ができる。


 とはいえ、予定は決まっている。事前にどういったことをしたいかはリクエストしてあるため、外務省の担当者が僕とレティを案内してくれることになっていた。


「外務省のメルイーゼです。よろしくお願い致します」


 担当者は若い男性だ。僕と同じ位か少し上ではないかと思われる。メルイーゼ伯爵の息子で、子爵を名乗っている。現在、外務省の官僚として勤務しているとのことだった。


「グウィネス観光の前に、買い物に行かれたいとか?」


 到着した際、僕の方からリクエストした。レティの外出着を買い足すためだ。


「ヴェルートは初めて来るから、僕達の装いが目立たないか心配でね。滞在中は、現地の者らしい服装をしてみるのも、変装するみたいで楽しいかもしれないと話していた。それから、昨夜宰相や外務大臣夫妻達と一緒した際、宝飾品も薦められたよ。金製品が有名なのは知っていた。そういった店も少し見てみたい」

「わかりました」

「後、個人的なことでも、手配を頼んでいたよね?」

「はい。財産の名義を書き換える手続きなどをされたいとか」

「それも先に済ませたい」

「はい。教えていただいた銀行や管財人に連絡した結果、時間を調整し、午後に時間を取ることになりました。本日、手続きができるように手配しています」

「よろしく頼むよ」


 午前中は買い物になった。


 僕とレティは最高級品を扱う店をはしごした。レティは自分ではほとんど買い物をしないが、友人達と一緒によく外出している。友人達が買い物をするのを見て、本国の貴族の女性達がどういった店で買い物をするのか、どういったものを買うのかを勉強しているのだ。


 本国とヴェルートでは通貨が違う。価格はヴェルートだけでなく、現在の相場に合わせた本国の価格も提示された。支払いに関しても、ヴェルート紙幣に限らず、本国の紙幣、小切手でも問題ない。非常に買い物がスムーズにできるようになっていた。


 レティは提示される金額が本国で買い物をするよりもかなりやすいため、驚いていた。既製品は勿論のこと、フルオーダーメイドでも安い。体裁もあるため、既製品を購入するだけでなく、フルオーダーメイド、セミオーダーメイドのドレスも購入することにした。長い目で見れば、本国でドレスを買うよりも、相当安いため、得になる。


 レティは同じ上質な素材が使われていても、本国製、属国製というだけで、これほど違いが出るのかと驚いていた。実際には素材だけでなく、人件費の安さなども反映されている。


 宝飾品に関しても同じだった。昼食後に宰相に薦められた店に言ったのだが、やはり、本国で金製品を購入するよりも安かった。しかし、そこでは買わず、リンリーヌ子爵に薦められた店で、金製品を購入した。その方がかなり得だったからだ。


 宰相や外務大臣が薦めてくれた店は、最高級品を扱う店なのだが、それだけにプライドがあり、あまりサービスなどをしてくれない。リンリーヌ子爵が教えてくれた店は、有名店ではあるものの、顧客の紹介であること、一定以上の買い物をすれば、かなりサービスしてくれる店だった。


 価格はそれなりにするのだが、実際はそれに無料で色々なサービスをつけてくれるため、結果的には相当得になり、レティが喜んだ。レティの笑顔にやられた店員が、更にサービスしてくれる。美人は得だ。ややむかついたが、サービスは勿論、受けることにした。


 思ったよりも時間がかかってしまったため、やや遅れて銀行に行くことになってしまったが、頭取や担当者達は笑顔で出迎えてくれた。


 そして、すぐに父名義の財産を僕の名義に変える手続きをしてくれる。必要な書類は全部揃っているため、問題はない。生前贈与になるため、少しだけ税金がかかる。そして、手続きに関わる費用がそこから引かれることになる。それは必要経費であるため、仕方がない。


 現金はかなりあった。ヴェルートの財産の管財人が、うまく運用していたため、相当な益をあげていたからだ。管財人への報酬は定額分に加え、運用の益が大きければ大きいほど、入るようになっている。そのため、管財人が自分への報酬を増やすために、かなりうまく運用してくれていたのだ。


 ところが、ほとんど価値がないと思っていた田舎の土地に関して、予想外のことになっていた。父は農業用地として賃貸されていると思っていた。僕もそう聞いていた。


 しかし、実際は違った。側に鉄道が通っていたせいで、賃貸内容が変更されていたのだ。元々は父の土地を国が買い上げようとしたのだが、所有者が他国にいる者であるため、面倒だとして隣の土地を買い上げ、鉄道を開通させてしまった。


 売り損ねたわけだが、その方が得だった。買い上げて貰ったとしても、当時の相場では、かなり安かったらしい。田舎の農業用地だからだ。


 しかし、今は違う。駅が作られ、町が作られた。大量の輸送倉庫が立ち並ぶ、中継都市に発達しているらしい。最初は周辺の土地ばかりが開発されたが、どんどん町が大きくなった結果、父の土地も農業用地から賃貸用地に変更された。その方が儲かるからだ。現在は中継都市で最も高級な地区になっているらしく、僕はその土地の名義を取得することになる。莫大な財産を手に入れることになるらしい。


 普通に考えれば、かなりの贈与税や手数料を取られるはずなのだが、ヴェルートは相続や贈与に関しては驚くほどの優遇制度がある。貴族は更に優遇される。僕は本国の貴族籍を持っているため、優遇を受けることができた。


 僕は事前に土地を売ることも考えていると話したが、売るとなると、現在の賃貸契約を解除しなければならない。契約の違約金などがかかる。そういった場合の試算もされたが、かなりかかってしまう。最終的には相当な金額を手に入れることができるが、どうしてもということでなければ、このまま土地の名義は保持し、賃貸料で儲けた方が利口だということだった。


 とりあえず、僕は父の名義を僕の名義にする手続きだけし、売るかどうかはじっくり考えることにした。


 銀行や管財人は、大富豪となった僕に、更なる財産を増やすべく、様々な運用方法を提案してきた。その方が手続きに関する説明よりも長かった。


 銀行の特別室で行われた話し合いが終わり、僕とレティは色々な意味でぐったり疲れて王宮に戻った。


 部屋に戻るはずが、そうはいかなかった。


「もう一つ予定があります。夕食会です。ヴェルート王がクライスター卿と奥方を招待されていますので、ご出席下さい」


 僕達は驚くしかない。それは事前に説明されていない。


「その予定は聞いていない。副大臣達も知っているのかな?」

「いいえ。こちらは個人的な招待ですので、基本的に視察団の方は知りません」

「急に言われても困る。密談をしていると思われかねない」

「御心配には及びません。リンリーヌ子爵夫妻も招待されています」

「そうなのか」

「先に申し上げておきますが、個人的な招待をされたのは、銀行の方で手続きをされた件について、話があるからです。クライスター卿は手続きをした結果、ヴェルートに莫大な財産を保持することになりました。しかも、所有されているのは、王都や中継都市の不動産です。その件について、少しご意見があるとか」


 僕はため息をつくしかない。


 僕とレティは急いで身支度をし、国王主催の夕食会に出席した。


 夕食会では、僕が手続きを無事終えたこと、莫大な財産を手に入れたことを祝し、乾杯が行われた。宰相や外務大臣、国土大臣など、ヴェルートの要人が出席する中、ヴェルート王は僕に土地を売る気があるのか尋ねた。もし、売るのであれば、ヴェルート王に直接売却して欲しいらしい。王家の個人財産として取得したいということだった。


 また、本国とヴェルートの国交は安定している。本国貴族、しかも王太子の側近が、ヴェルートの莫大な財産を処分し、自国に移したと知られると、何かあるのではないかと勘ぐる者が出てくる。不安材料として、経済に影響が出る可能性もあるため、そうならないように対応して欲しい。銀行や管財人から説明されたように、特にどうしてもという理由がなければ、このまま保持したほうが、益が大きいと説明された。


 僕は理解した。ヴェルートは王太子の側近である僕が、何らかの情報の元、ヴェルートの財産を事前に処分しようとしているのではないかと懸念しているのだ。


 例えばだが、今回の視察団の話し合いの結果次第では、ヴェルートに対し、何かしら制裁をするなど、ヴェルートにとって好ましくない状況となりえるのを僕が知っており、資産価値が減少する前に対応しに来た可能性なども考慮しているのだ。


 勿論、そんなことはない。僕は何も知らない。恐らくはヴェルートも、他の者達が同じように一斉に動いていないために、大丈夫ではないかと思いつつも、僕の行動を注視しているのだ。


 僕は正直に答えた。


「正直に申しますと、王都の不動産などはともかく、キャンティーヌの土地は農業用地だと思っていたので、あれほどの価値になっているとは思いませんでした。そのため、すぐに処分するかどうかについては、よく考えたいと思っています。今のところは、処分するのをやめ、このまま賃貸による収入を維持しようと思っています」

「そうか。その方がいい」


 ヴェルート王が言った。ヴェルート王は僕の土地が欲しいというよりは、市場に出た際の影響を考慮してということと、個人取引するには、相当な資産がある者でなければ、さすがに一括は無理だとなるため、切り売りすることになる。どうしても市場に流れてしまう。その結果、情報や憶測も流れてしまうことを懸念して、買い取ることを申し出ただけに過ぎない。僕が売らなければ、その方がいいのだ。


 これで問題は片付いたと思ったが、違った。更に別の不動産を売却する気があるかどうかという話になる。


 僕は首都グウィネスにいくつかの不動産を持っている。大きな屋敷もある。土地も少し。現在は全て賃貸に出している。それを欲しがっている者達がいた。


 まず、国土省のそばにある大きな屋敷を欲しがっているのは国土大臣だ。理由は単純で、現在、そこを賃貸しているのは国土大臣らしい。通勤に便利であるため、売るつもりがあるのであれば、買い取りたいということだった。


 更に、商業地区の近くにある屋敷を、外務大臣の息子夫婦が欲しがっている。現在そこを賃貸しているのは、外務大臣の息子夫婦で、非常に立地が気に入っているものの、屋敷が古く、建て直したいらしい。許可さえ出れば、土地を賃借したま、建て直し、あるいは一部だけを改装することなどもできるのだが、僕がここに来た機会を利用し、土地も買い取る話をするのはどうかとなったようだ。


 更に、首都の端の方にある土地を欲しがっているのは宰相だった。平民が住む地区にある。宰相の娘は平民の商人に嫁いだらしく、その周辺の土地を買い占めている。そして、大きな土地にして活用したいらしい。僕の土地も、相場よりも高めに買い取るため、譲って欲しいということだった。


 僕は重臣たちが、キャンティーヌの土地のことで同席していたと思ったが、それだけではなかった。それぞれに欲しい不動産があり、僕に話をするためだったのだ。驚くしかない。


「急な申し出に、すぐに返事をするわけにはいきません。今日、名義変更の手続きをしたばかりですので、少し考えたいのです。時間を頂いてもいいでしょうか?」

「勿論。滞在中でなくても、問題ない。ただ、互いにいい機会ではある」

「クライスター卿、あの屋敷はかなり古い。次の契約では、賃貸に出すとしても、かなりの修繕費用や改築費がかかるだろう。そういった出費がかさむ前に、手放した方が得だと思う。息子の肩入れをしていると思われるだろうが、実際に足を運ぶとわかる。応急処置だけで済ませているが、さすがにどうかと思う」

「クライスター卿、国土省のそばの屋敷もかなり古い。あの一帯は大きな屋敷が少ない。いくつか見た目がいい賃貸用の屋敷が、順番に国土大臣の屋敷になっている。今は貴殿の屋敷の番だということだ。私が任期中はいいが、その次は別の屋敷になる。なぜなら、引っ越すのに時間がかかるからだ。大臣が交代しても、公邸ではないため、屋敷まで交代する必要はない。そのまま居座ることも多いが、大体は賃貸料が高いため、契約更新をする前に出ていく。恐らく、次の賃貸契約では、古さを理由に、賃貸料の値下げは避けられないだろう。土地の価値は問題ないが、屋敷の価値は年々減っていく。手放すのにいい時期ではないかと思うが」


 かなり欲しいのか、次々と僕に売って欲しい、売った方がいいアピールが来た。宰相も、孫娘のために一肌脱ぎたいらしく、熱心にアピールしてきた。


 こんな展開になるとは、全くの予想外だった。


 僕は適当に受け流しながら食事を終えたものの、食事の後も男性専用の部屋に拉致された。レティはリンリーヌ子爵夫人と共に、王女がぜひ個人的に会いたいという理由で、別になってしまった。


 なんだか大変なことになってしまったと感じながら、夜が更けていった。



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