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永遠の愛を刻み続ける  作者: 美雪
新婚旅行編

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ロデウス視点 ⑥ グウィネス

 グウィネス三日目。僕達は首都観光に出かけた。


 レティとの新婚旅行を堪能するつもりでいたが、二人きりではない。メルイーゼがいる。案内してくれるのは嬉しいのだが、完全にくつろいで過ごすわけにはいかない。


 メルイーゼは好青年だ。だからこそ、僕は卑屈になってしまう。レティを渡したくないと嫉妬してしまう。しかし、今は違う。レティの反応がよくない。あまり楽しくなさそうなのだ。メルイーゼのせいではない。


 昨夜、僕はヴェルート王達とお酒を飲み、カードゲームをすることになった。ついでに賭けも行われた。よくあることだ。僕はさっさと負けて部屋に戻りたかったが、ヴェルート王達は弱すぎた。先にお酒をかなり飲んでいたせいだと思われた。なかなか負けることができない。ゲームに参加しない者から、僕がわざと手を抜いていると指摘されてしまい、酒に酔ったヴェルート王が本気で勝負しろと怒ってしまった。ギャラリーの監視もあるため、僕はしぶしぶ本気で勝負し、大勝ちした。おかげで祝いだといって酔い潰れる直前まで、酒を飲まされた。


 そういったこともあり、部屋に戻ったのは深夜で、酒臭かった。レティはすでに寝ていたが、朝起きた際、僕があまりにもお酒臭いことに呆れていた。シャワーを浴び、レティの香水をつけて誤魔化し、王都観光に出かけたものの、怒っている気がした。


「レティ」


 僕は思い切って言うことにした。


「怒っているよね。本当にごめん」

「怒ってなんかいないわ」


 レティは答えた。素っ気なく。


「でも」

「大丈夫よ。お仕事だもの。それより、昼食が楽しみだわ。少し変わっているお料理らしいし」


 ヴェルートの食事は本国とあまり差がない。しかし、地方に行けば、様々な郷土料理がある。今日の昼食は、地方の郷土料理を食べに行くようだった。


「お気に召されるといいのですが、嗜好が分かれる料理です。一応、食べやすいものにしていますが、せっかくですので、色々試されるのもいいかと」


 メルイーゼは微笑みを絶やさずにそう言った。レティに熱い視線を送っているのではないかと、最初は警戒したが、冷静になればわかる。メルイーゼは外交官だ。立場はわきまえていた。


 昼食は確かに嗜好が分かれる料理だった。辛い料理なのだ。しかし、辛さは好みに調整できるらしい。首都の一般人が食べる辛さと、その地方における一般の辛さのものを食べ比べたが、地方はかなり辛かった。首都で食べられるのはピリ辛い程度なので、普通に問題なく食べることができる。


 レティは地方の辛さに驚きつつも、発汗作用があり、健康や美容にいいと言われているという説明を聞き、少し興味を持ったようだった。ちなみに、普通に考えれば美容の部分に興味を示したと思うだろう。だが、実際は健康の部分だ。レティはかなりの健康志向なのだ。


 健康にいいというお茶を、レティは飲んでいたことがあった。僕も飲んだが、凄くすっぱかった。一度で十分、二度と飲みたくないと僕は思ったが、レティは慣れれば、さほど酸っぱさは気にならなくなると言って飲んでいた。今は別のお茶を試しに飲んでいる。


 レティは様々なお茶の知識がある。珍しいお茶や、効能などについては知りたくなってしまい、実際に飲んで試している。昔の職業病ではないかと僕は思っている。それで美味しいお茶を発見するのは問題ないのだが、非常に苦いお茶など、毒入りではないかと思えるようなお茶まで試飲しているのは、どうかと思う。


 口直しのデザートだけでは、なんとなく辛さが残っている旨を伝えると、メルイーゼは僕達を近くにあるアイスクリームの店に案内した。人気店らしい。しかも、立食しかできない。買ってその場で食べるのだ。持ち帰りも不可。この周辺は地方料理のレストランが集まっている。様々な味が堪能できるのだが、あまり気に入らない場合や、僕達が行った店のように、なんとなく口直しがしたいという客が、よく利用するらしい。


 僕はチョコレートとバニラのアイスにした。二つというわけではなく、二種類の味が混ざっているアイスクリームだ。レティは店で一番人気のレモンのアイスクリームにしていた。


 僕達は周囲の者達がしているように、お互いの味を一口ずつ交換して食べた。平民の食べ方だ。食べ方としてはマナー違反であるけれど、時々はこんな風にするのもいい。レティとの距離を近く感じることができる。


「もし、今レティに口づけしたら、レモン味かな?」


 僕がそう聞くと、レティは恥ずかしそうに言った。


「チョコレート味よ。ロディのアイスクリームの味の方が濃いもの」

「試してみる?」

「駄目」


 速攻で却下されたが、レティは微笑んでいた。少しは気分が和らいだらしく、内心ほっとした。


 僕はレティを沢山甘やかしてあげたい。でも、レティはなかなか甘えてくれない。旅行はチャンスだ。いつもと違う雰囲気になる。メルイーゼを邪魔に感じた。そこで、僕達は少しだけ、二人だけで首都を散策することにした。そして、時間を待ち合わせ、観光客に人気のあるカフェで待ち合わせすることになった。


 僕とレティは手をつなぎ、首都の町を散策した。馬車の車窓から眺めるだけ、ポイントだけ降りて観光したほうが楽で効率的ではある。しかし、こうしてなんとなく歩いて観光するのも悪くない。僕達は現地の服を着ているので、いかにも大貴族という服装をしているわけではないし、治安の悪い地区に行かなければいい。


 平民が利用する店も覗いてみた。最高級店でさえ品が安い。平民の店はもっと安いのではないかと興味を持ったのだ。


 予想通り、平民の店は激安だった。可愛らしい小物入れやアクセサリーを見て、レティはお小遣いでも買えると喜んでいた。


 レティは元侍女だけに、自分の能力に対する給与がこの程度というのを知っている。何もしていないなのに、沢山の小遣いを貰うのをよしとしないのだ。妻に与える小遣いが少ないと、夫の体裁にかかわるとし、それなりの額を無理やり渡しているものの、使わないため、預金額がどんどん増えている。


 僕としては、預金が増える方が嫌だったりする。レティが僕に愛層をつかして出ていくときの資金にしないか心配なのだ。


「レティ、悩むなら、全部買ったら? 普段はあまり買い物しないし、欲しいと思う時に買ったほうがいいよ。ここはいつでも来くることができる店じゃない。後で買わなかったことを後悔するより、買って後悔した方がいい。金額的にも、後悔するような額にはならないと思う」

「そうね。たまには思い切って買ってしまおうかしら」


 レティは悩んでいた品を全部買うことにした。下手に悩まれて時間がかかって困る。待ち合わせの時間があるからだ。多少遅れるのは問題ないが、かなり遅れてしまうと、僕達に何かあったのではないかと心配され、大事になりかねない。一応、僕達は国賓なのだ。説得がうまくいってよかった。


 一度買い物をすると、その後は財布の紐が緩んだのか、様々なものをレティは購入した。お土産にする品もあるらしい。かなり安い品のため、それを友人達に配るのはどうかと思ったが、平民の品をこっそり愛用する者がいると聞き、僕は驚いた。宿舎にいる青騎士の妻は、貴族ばかりだからだ。


 最初の頃は貴族の買い物するような店ばかりを教えて貰い、一緒に買い物に行っていたのだが、仲良くなると、平民が利用するような店にお忍びで出かけ、大量買いするような方法も教えて貰ったらしい。貴族の店だと一つ、二つしか買えないが、平民の店だと、何十個も買える。色違い、素材違いなどでも買えるため、買い物的に満足感を得られるらしいのだ。必要な物を買うというよりは、買い物したいという気分を満足するための買い物となり、貴族買い、金持ち買い、大人買いなどと呼ばれている。レティは驚きつつも、これが貴族なのかと思ったらしい。


 僕はその話にちょっと突っ込みたい部分もあったが、何も言わないことにした。これ以上、レティの買い物を減らす意味もない。むしろ、平民の店に行く機会ができ、そこでなら心に負担を感じることなく買えるというのであれば、それでいいと思う。但し、青騎士の妻として外出する際に、安物をつけるのは禁止だ。僕の名誉と体裁だけでなく、クライスター公爵家、ひいては王太子のそれにも関わる。王太子の側近の給料が安いと思わると不味いのだ。


 僕もついでとばかりに、いくつか買い物をした。女性用の品を購入した際は、レティに睨まれ、誰のものか詰問された。僕がキャピーにあげるものだというと、レティは納得した。キャピーというのは、僕が非常に親しくしている友人の子供だ。


 キャピーの本名はキャサリンで、周囲はキャシーと呼んでいたのだが、本人はキャピーという方が可愛いと主張、今は周囲もキャピーと呼んでいる。女の子らしい可愛い品が好きだった。安物ではあるが、キャピーはガラスでできたアクセサリーを沢山集めている。本物の宝石は小さいが、ガラスは大きい。その方がいいと喜ぶのだ。


 友人夫婦には別のお土産を買うつもりだが、キャピーには安物のガラスのアクセサリーの方が喜ばれるに決まっているため、購入することにしたのだ。レティもキャピーのためにガラスのアクセサリーを購入した。キャピーがどちらのデザインをより気に入るかで勝負することにもなった。そういうことであれば、もっと真剣に選ぶべきだったと僕が言うと、レティは勝利を確信したと言って笑った。


 すっかり気分がほぐれ、二人して大量に買い物をした。昔、故郷にいた頃にも、平民街で大量に買い物をしたことを想い出した。レギも一緒だった。僕がレギの名前を出したことで、レティがやや微妙な反応をした。調子に乗って、余計なことを言ってしまった。僕は反省するしかない。


 そろそろ時間だとなり、僕達はメルイーゼと待ち合わせしているカフェに向かった。



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