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永遠の愛を刻み続ける  作者: 美雪
新婚旅行編

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ロデウス視点 ③ ヴェルート

 明け方、列車は地方の大都市の駅についた。現在、鉄道は王都(の隣町)と地方の大都市を結ぶ路線ばかりだ。大都市というのも、元々大都市だったわけではない。小さな都市、町だった。


 王都と同じく、地方の主要都市の城壁を壊すかどうかで揉め、結局、壊さなくていいような案となり、城壁の外側やすぐそばの都市や町に駅が作られた。列車で大量の物資がやり取りできることから、駅周辺はどんどん開発され、あっという間に大都市に変貌した。街道も大都市になったおかげで整備されたため、現在は非常に重要な輸送拠点となっている。


 僕達はここで列車を降り、馬車に乗り換えて国境を目指す。ほぼ、一日中、ひたすら馬車で移動することになる。


 僕とレティは故郷からこの国までずっと馬車で来た。故郷の国境までは、父が手配してくれた馬車、国境を越えてからはクライスター公爵家の馬車に乗っての移動だったため、普通の馬車に比べれば、ずっと快適だった。それでも何週間もかけての移動だ。大変だった。


 故郷には列車がなかった。列車の存在は知っていたものの、本国民の身分証明書がないと、切符を買えない。他国の者は利用できないため、最初は駅に行っても乗れなかった。


 現在は本国民の資格があるため、身分証明書があれば、問題なく切符が買えるし、乗ることができる。僕は公爵家の養子ではあるが、貴族籍には違いない。レティもその配偶者のため、貴族籍に入れた。列車には特別な列車や客車があり、貴族しか使えないものもある。平民は全く乗れないわけではないが、貴族に同行する世話役や護衛などの関係者だけで、一般の平民は乗れない。そういったところにも、身分社会、格差が表れている。


 副大臣の話によると、鉄道をどこに新設していくかは非常に重要な国家計画だ。鉄道省は国内各地を視察し、現在の工事の進行具合や、今度、新設される予定地などを確認している。


 実を言えば、元々、属国や併合地に向かう鉄道を作ってはどうか、という案も出ていた。しかし、利権が絡むことでもある。国内の主要都市などが優先という者達が多く、多数決で負けてしまい、却下になってしまっていたらしい。


 副大臣は僕が鉄道を属国や併合地に向けて作ってはどうかという草案を出したことで、王太子が乗り気になり、国王と話し合いをした結果、試しにどこか作ってみるかとなったことを教えてくれた。候補地はいくつもあったものの、結局は二つに絞られ、王太子の側妃の祖国であるヴェルートが属国の中から選ばれ、併合したばかりで軍も駐留していることから、建設工事の人員や用地が確保しやすく、監督もしやすい僕達の故郷が選ばれた。


 国内において、鉄道ができた場所は発展し、栄えている。ヴェルートも、僕達の故郷も、鉄道が建設されれば、発展し、栄えるだろうと言われた。


 僕としてはそうなって欲しい。でも、こればかりはわからない。副大臣は、できれば僕にもヴェルートとの折衝会議に出席して欲しいと言われたが、僕は断った。これは王太子からの命令だ。新婚旅行のためではない。僕が出席すると、会議に出席する全員は僕の意見を重視する。王太子の側近だからだ。王太子の代理のようなものとして見られてしまう。しかし、僕はこの件に関しては、僕が直接担当するよう言われてはいない。別の側近の担当だ。担当ではない僕が口を出すのはよくない。使節団のトップである副大臣や他の高官達が軽視されないようにする目的もある。僕が出席できない理由を伝えると、副大臣はそれなら仕方がないと了承してくれた。


 移動は順調だった。野盗や強盗に襲われることもなかった。僕とレティは大丈夫だとは思いつつも、やっぱりどこか心配していただけに、無事首都についてほっとした。


 ヴェルートの首都はグウィネス。やや発音しにくい。さすが他国だ。言語はヴェルート語があるものの、属国になった頃から、本国語が併用され、教育項目でも二カ国語が必須となっていることから、全く問題ない。地方ではヴェルート語の方が優勢ではあるものの、発達した都市や国境付近では本国語の方が日常的に使われているらしい。


 僕もレティも本国語は問題ない。故郷でも大国の言語を学んだ方が得だということから、多くの者達が自国語と一緒に学ぶ者が多かった。少なくとも、貴族は教育項目の必須教科だった。レティは平民だったが、王宮の侍女になるため、必死で勉強したらしい。


 王宮の採用試験には外国語もある。ここで点数を取れないと、総合点が低くなる。総合点が高いほど採用されやすく、また、採用後の配属先や、出世街道に乗れるかどうかに影響する。貴族や裕福な者の方が外国語をきちんと習えるため、有利になっているのだ。平民でとなると、本当に努力して勉強した者、優秀な者となる。


 レティは発音がうまくできなかったものの、試験は筆記しかない。まあまあ解けたらしい。無事採用後は、発音について勉強しなおしている。講師は僕とレギだ。レティが王宮の中庭で発音練習をひたすらしているところにレギと僕が通りかかり、おかしい、と指摘したことがきっかけで知り合ったともいう。


 振り返った侍女が凄い美人だったため、僕もレギも驚いた。こんな美人なのに、あの発音では不味いだろうと互いに思い、暇な時にレティの発音を正しく修正することにした。正直に言うと、僕は一目惚れだった。そして、一緒に過ごすうちに、レティの優しさ、温かさ、女性らしさ、レティの全てがどんどん好きになった。恋は盲目だとレギにからかわれたが、そんなレギもレティに魅了されていった。本当に素晴らしい女性だ。僕の女神だ。


 とにかく。難しい会話でなければ、本国語は問題なく話せる。発音も流暢だ。本国民でも、発音が綺麗ではない者もいる。地方の出身者や、併合地の者、属国の者などだ。そういった者達は、身分や地位だけでなく、きちんと教育を受けていない、勉強をしていないと見ることもできるため、差別されたり、馬鹿にされたり、軽視されることにつながる。


 この国は大国であり、併合をしてきたこともあり、国内にいる貴族の数が多い。ほんのちょっとしたことから、差別につながる。領地が王都から離れていなくても、発音がおかしいだけで、田舎貴族、田舎者だと言われてしまうこともある。言葉はとても重要だ。


 手荷物にヴェルートの観光書を持ってきたものの、ほとんどみることなく、ヴェルートの首都グウィネスに到着してしまった。


 国境を越えた際や駅で歓迎を受けたものの、正式な歓迎の式典は王宮でもある。まずはヴェルート王に謁見し、挨拶をするとともに、歓迎の言葉を受ける。夜には歓迎する大舞踏会があると説明される。歓迎されてばかりという印象だ。


 僕達は視察団として来ているため、王宮に滞在することになる。僕とレティはようやく二人きりになれ……ない。部屋付きの者達が常にいる。更に、大量の荷物があるため、全て届いているかどうかの確認もしなければならない。


 レティが世話役となっており、発送の手続きもしたため、僕は手荷物の方を確認し、レティが先に発送した荷物の確認をすることになった。荷物が届いているのを確認すると、滞在中に着替えなどをしやすくするため、荷解きをし、部屋付きの者に指示しながら、衣裳を衣裳部屋の方に移したり、貴重品を金庫にいれたりしているうちに、時間が過ぎる。


 あっという間に夜の舞踏会のために準備をしなければならなくなった。


 レティが先にシャワーを浴びて出て来た。どんなレティも綺麗だ。むしろ、ガウンだけというのが……僕は首を振った。これから大舞踏会だ。交代でシャワーを浴びる。レティは衣裳部屋の方で着替えている。僕は寝室に出しておいた衣装を取り、バスルームで着替えた。


 着替えが終わると、部屋付きの侍女が、居間で飲み物を取るよう薦めつつ、僕を寝室から追い出した。ドアをきっちり閉められる。夫でもあっても、妻の着替えを覗くことはできないということだ。


 僕はここに来るまでにも、着替えのために、レティに追い出されている。レティは部屋で着替え、僕はバスルームだった。列車のバスルームは狭かった。そう思いながら水を飲み、レティの支度が終わるのを待った。




 何度でも言うが、レティは美人だ。何を着ても似合う。しかし、僕は息をのむ美しさというのは、まさにこれだと思った。


 結婚式でも、昼食会でも、披露宴でも、それ以外の時にも、何度も感じたけれど、今夜のレティの装いもまた、言葉では言い表せないほどの美しさだった。


 女神の美しさを称えるのに、言葉は全く役に立たない。僕の本国語のボキャブラリーが少ないせいではない。


 僕は青騎士の礼装をすることになっていた。青騎士の礼装は青い。名称通りだ。但し、青騎士は特別な騎士爵であるため、制服は三種類ある。青以外にも、白と黒もあった。


 最も着用が多いのは黒。男性の礼装は黒が圧倒的に多いため、黒を着用すると、目立ちにくい。目立ちたい場合は、別の色になる。王太子の礼装に合わせて決めることもある。


 属国などに行く場合は、青騎士という名称から、青の礼装が最もわかりやすく、納得しやすいのもあり、青の礼装を着用することになっている。大抵は最初と最後が重要な式典や祝宴になるため、最初に青、最後は白、それ以外は黒、というのが定番だ。


 レティは僕の礼装に合わせた青いドレスだった。


「綺麗過ぎるよ。誰にも見せたくない位」

「ありがとう。でも、本当にそう思う?」

「え?」


 僕は驚いた。


「どこに問題があるの?」


 僕の質問に、レティはすぐには答えなかった。部屋付きの侍女達がいたからだ。


「奇抜なデザインにして、悪目立ちしたら困るわ。定番のデザインにしたの。だからよ」


 レティの言葉で僕は理解した。このドレスはセミオーダーだ。よくある形のドレスのデザインになる。それしか選べない。生地や色なども、ある程度は選べるか、すでに決められたものの中から選ぶというようなもののだ。フルオーダーではないことで、不安なのではないかと思った。


「レティは派手なドレスよりも、エレガントなドレスが好きだからね。ドレスだけでは少し寂しいと思う者もいるだろうけど、アクセサリーとのバランスもある。大丈夫だよ」


 レティは青いドレスに合わせ、サファイアの宝飾品を身に着けていた。僕が青騎士になった際に得た金を元に、オークションで購入した。これも相当な金額のものだった。レティには一切、金銭的なことを教えていない。教えたら不味い気がして。


 でも、僕が青騎士である以上、青いドレスをよく着ることになるのはわかりきっている。青いドレスに合わせる宝飾品が必要になることはわかりきっているため、買うしかない。他の青騎士達も同じように青い宝飾品を購入したと言っていた。


 騎士の場合は制服が支給されるが、騎士に同行する妻のドレスや宝飾品は支給されない。自腹だ。だからこそ、制服代わりに、宝飾品を購入するのだ。安物を何度も身につけるのは貧乏臭くなってしまうが、非常に高価なものを見せびらかすために何度も身につけるのはおかしくないとなるため、できるだけ凄いのを買えとアドバイスされたのもある。


 実際、青騎士の妻達は、大きなサファイアや、ダイヤモンドが沢山あしらわれた豪華な宝飾品のセットを必ず一つは持っている。


「時間だ。行こうか」

「頑張るわ」


 レティは緊張気味にそういった。


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