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永遠の愛を刻み続ける  作者: 美雪
新婚旅行編

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ロデウス視点 ⑫ 夜会

 僕は白い礼装を着用し、夜会に出席した。レティは僕と色を揃えた白いドレスに、贈ったばかりのエメラルドの宝飾品を身に着けていた。綺麗だ。本当に女神のような姿だ。


 僕がカジノで大儲けし、それをつぎ込んで愛妻にエメラルドの宝飾品を贈ったということは、すでに知られてしまっていた。誰が情報を流したのかは知らないが、僕がいかにレティを溺愛しているか、ヴェルートでも十分、知らしめられたはずだ。


 夜会には第二王子夫妻、アル、第二、第三王女も出席していた。初日は正妃の子供だけ出席可能となっていたため、王太子が妻と共に出席していた。側妃の子供である王子王女は全員出席不可だった。だからこそ、アルもいなかったのだ。


 王女達は話題になっている僕とレティの姿を見たくて、こっそり見に来ていた。その時に僕に一目惚れしたらしい。僕の妻が貴族の養女、元は平民ということも知っていたため、政略結婚を思いついたようだ。


 正直に言う。王女は平凡な女性だ。何の魅力も感じない。見た目だけで女性を判断するわけではないが、溺愛する女性と結婚式を挙げたばかりの相手に一目惚れし、政略結婚を思いつくような発想がまずおかしい。王族の感覚では普通なのだろうか。少なくとも僕には理解できない。


「イザベラ、ファナ、ロディとレティに謝れ」


 アルに凄まれた王女二人は、しぶしぶといった表情がありありと浮かんでいたが、謝罪の言葉を口にした。


「ご迷惑をおかけしました」

「ご迷惑をおかけしました」


 王女達は属国のとはいえ、王族だ。僕は本国の貴族ではあるものの、非常に身分が高いわけではない。頭を下げるほどではないというのはわかるが、もう少し配慮があってもいい気がした。そのため、僕はにこやかに対応することはなく、厳しい表情で黙っていた。


「これでわかっただろう? ロディの本性が。いつもニコニコしているだけの男じゃない。時によっては非情なことも厭わない。王太子を守るために剣を振るったこともある。お前達が想像するような者ではない。見た目はいかにも温和で優しそうで女々しそうで軟弱で扱いやすそうだが、実際は全然違う。もっと男を見る目を養え」


 なんだか酷い言われようだ。しかし、ここはアルに任せておくことにした。


 王女との件はアルが潰す約束だ。だからこそ、こうして謝罪させるために連れて来たのだ。


「でも、ロデウスはどうみてもワンコ系だし」


 イザベラ王女が反論すべくそういった。ワンコというのは犬のことだ。僕を犬だと思っているのだろうか。しかも、名前もいきなり呼び捨てだ。ありえない。


「可愛いいよね。ぎゅってしたくなっちゃう感じ!」


 ファナ王女も発言する。可愛い。男なのに。それは誉め言葉とはいえない。しかも、僕は妻帯者だ。妻がすぐそばにいるにも関わらず、抱きしめたいという。明らかに失言だ。相当馬鹿としかいいようがない。僕はこれでも国賓だ。


 僕は速攻で視線をアルに移して睨んだ。


「ブック! ファナを連れてこい!」


 アルはすぐにイザベラ王女の手を引き、移動していった。ブックもファナ王女を無理やり連れだす。微妙な雰囲気が漂う中、フィリックス王子が困りきった顔をしながら僕に謝罪した。


「すみません。妹達はかなり自由に育てられたので、発想が豊かでして。あのような感じなので、公式の場に出るのも控えている次第です」


 どうやら教育が甘く、問題を起こしそうな人物であるため、あまり表に出さないようにしているらしい。


「フィリックス王子、さすがにあの発言は非常識です。僕を馬鹿にしているとしか思えません」

「私やアルは反対したのです。謝罪させるだけでも、何かやらかしかねないと。ですが、王が謝罪するよう命令したので」


 王の配慮がアダになったらしい。


「本当にすみません。側妃と妹達にはより厳しく叱責し、深く反省させます。ご不快に思われたのは当然です。ですが、あれでも一応王族なので、本当に申し訳ありませんが、ご配慮いただきたいのですが」


 僕はフィリックス王子の謙虚さと礼儀正しさ、王子らしくない腰の低さを見て、なぜ、王女達がきちんと教育されていないのか不思議に思った。


「王太子殿下の側妃になられたマルグリット様とは全然違います。王女として、同じような教育をされなかったのですか?」


 ヴェルートの第一王女マルグリット様は、非常に物静かな方だ。感情を一切表に出さない。


「姉は正妃の子であること、第一王女であることから、かなり身分の高い者に嫁がせることになることを考え、厳しくてられました。本国の王太子との縁談が調ってからは、それこそ問題を起こすようでは不味いとされ、何事も完璧にできるようにと、一層厳しく育てられたのです。そのせいで、常に冷静さを保つことができるのですが、感情をあらわさなくなってしまいました。それを見て、妹達はもう少し感情豊かに育てたいという教育方針になったのですが、豊か過ぎてしまったというか」

「なるほど」

「姉は元気でしょうか?」


 フィリックス王子はそう尋ねた。あまりして欲しくない質問だが、家族として心配するのはおかしくない。


「後宮のことはお話しにくいのですが、お元気だとお答えしておきます」


 元気は元気だ。他の側妃達と後宮で争っている。お茶会の際、下剤を盛られてしまい、治療中だったはずだ。命に別状はないため、問題ないことにする。


「取りあえず、王女達とは二度と会いたくありません。今後、本国から来る者達にも、会わせない方がいいでしょう。取り返しのつかないことになりかねません」

「私もそう思います。クライスター卿が寛大な方だということはわかっています。そして、非常に魅力的な女性を妻にし、心から愛していることも。非常に羨ましい限りです。ヴェルートの王族は自分で決めた相手とは結婚できません。政略結婚ばかりです。王女達はそれが嫌だとし、反抗したかったのかもしれません。嫁がせるのに問題があるとなれば、迂闊に相手は選べません。正直、一目ぼれというのが本当なのか、私は怪しいと思っているのです。もしかすると、この機会をうまく利用したのではないかと思います。いくら本国の貴族であっても、妻帯者では婚姻するのは難しいとなります。クライスター卿は愛妻家です。王女が望んだとしても、断ることを見越し、仕掛けたのではないかと」


 ヴェルート王の子供は、今の所全員が政略結婚だ。王太子は本国の大貴族の娘と結婚し、フィリックス王子はバイジャン王国の王女と結婚している。第一王女は本国王太子の側妃だ。


 フィリックス王子の弁解は絶妙だ。馬鹿な王女が、馬鹿なふりをした王女に思えてくるから不思議だ。しかし、僕はその考えを否定した。絶対にあの王女達は馬鹿だ。フィリックス王子は外交手腕が高いと言われている。この絶妙な話術と腰の低さに騙されてしまう者がきっと多いのだ。


「本国に行った際、美しい女性達と知り合ったのです。ですが、私はすでに政略結婚していました。正妃が王女では、どんなに寵愛する女性がいたとしても、側妃にしかなれないのは明白です。王女に邪険にされるのも目に見えています。そのせいもあって、冷たくあしらわれました。王子だというのに、さっぱりモテない人生です」


 フィリックス王子はため息をついた。そして、小声で言った。


「妻は気位が高く、本当に相手をするのが疲れます。クライスター卿夫人とはいい友人になれるのではないかと言っていましたが、私の方で却下しました。奥方にご迷惑をおかけするのは目に見えています。礼儀作法は問題ないのですが、妹達とは別の意味で問題があります。近づかない方が身のためです。ご留意下さい」


 フィリックス王子なりに、一応は配慮しているらしい。


 その後、アルが戻ってきて、悪かったと謝罪した。王女達は王の命令にそぐわない行動をした罪で、反省させるため、投獄させたらしい。さすがに反省するだろうといい、王族であることから、これで勘弁してくれとも言われた。


 正直に言えば、許したくはない。だが、王族に頭を下げられ、謝罪された。王子の方にだが。それでも強硬な態度を貫けるほど、僕の身分は高くない。僕は王女達をもっと厳しく教育し、国賓相手に問題を起こすようなことがないよう、注意した方がいいと助言した。そして、アルやフィリックス王子に配慮し、この件については二度と繰り返さないということで、終わりということにした。


 華やかな夜会はその後も続き、僕はフィリックス王子の妻で、バイジャン王国のレキーラ王女のダンスの相手を務めた。美人だが、かなり派手な感じだ。きつそうな性格にも見える。一見する限りでは完璧に女王様タイプだ。フィリックス王子が苦労していそうな気がした。


 レティはフィリックス王子とアルと順番に踊った。一曲だけという制約をつけたのはいうまでもない。


 僕はレティが戻るまで待っていると、大貴族達が寄ってきて、自分の妻や娘と一曲どうかなどと伺いをたててきた。僕は全て断り、ひたすらレティを見つめていた。そして、アルとのダンスが終わると、速攻で迎えに行った。




 翌日。僕達は帰国するために、ヴェルート王に謁見し、挨拶をした。ヴェルート王は視察団に本国の王や王太子、更には嫁いだマルグリット様への贈り物などを託した。視察団の者達にもお土産が用意されている。


 僕とレティにはそれとは別のお土産が用意されていた。二つある。


「一つは俺からだが、もう一つは王からの結婚祝いだ。色々な意味での謝罪と、取引を受けてくれたことに関する感謝も込められている」


 お土産は金とパールを使った優美で可愛い宝飾品だった。イヤリングとネックレスがある。アルからがイヤリング、王からがネックレスらしい。


「レティと土産を購入しに最高級店を巡ったのだが、レティがこれを熱心に眺めていた。そこで、結婚祝いに贈ることにした。これはその店を代表する有名なデザインであり、貴族の女性や裕福な者に好まれている人気商品だ。同じデザインでパールの部分が別の宝石になっているものもある。所持している者が多いため、公式な夜会などに身につけるのは微妙だが、普段使いにはいいだろう」

「レティ、欲しいなら買えばいいのに」

「エメラルドの宝飾品を貰ったから、また宝飾品が増えるのもどうかと思って」

「正直、他の男性から贈られた宝飾品を身に着けるのは気に食わないけど、結婚祝いだから、許してあげる。ヴェルート王からのだしね。イヤリングは身につけなくてもいいよ」

「あからさますぎる」


 アルが大笑いした。



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