90話 『ここは地獄か天国か』
お久しぶりです。
長々と語るのもアレなので本編をどうぞ
仕方なくドワーフ達を工房に入れた。
このまま帰ってくれなさそうだったからだ。
「鍛治を見せたら帰ってくれよ。俺も暇じゃないんだ。」
「約束は出来ねぇ…」
めんどくさいおっさんだな。
「と言うか見るのはお前1人で良かったのか?」
他のドワーフ達はタケルに任せている。
飯でも食わせてやれと言ったので多分食堂だろう。
「ああ。あのロングソードを見たのは俺一人だったし、それに何よりも」
他の連中がアレを見ておかしくなっちまうのが怖ぇ
と呟く。
「そんなもんか?」
ただの鉄の剣だろ?
「…俺らは職人である前に戦士だ。武器の善し悪しは分かる。そんでもって思っちまうんだよ。こんな名剣を自分の物にしたいってな。それでアイツらが殺し合い何てしちまったらもう終わりだ」
仲間内で武器を奪い合って殺し合うのは怖ぇだろ?
とドワーフは苦笑しながら言う
「それは…怖いな」
「ああ……怖ぇ」
「……もうそろそろで着く」
「……ああ」
*
俺の鍛冶場は石造りで風通しの良い普通の鍛冶場だ。
まぁ、ワークデスクと銃器用の加工機械何かはあるが、それだけだ。
ドワーフは興味深げに周りを見ていたが、それでも鍛治が気になったのだろう。俺に頼むと一言告げると技術を盗もうとする職人の弟子のような顔になった。
そうとなれば異論は無い。早速、俺は剣を打つ。
と言っても材料は鋼だ。鉄の剣はもう必要無いからな。
それでもいいかとドワーフに聞くと
構わないと答えた。
本当にはミスリルとかヒヒイロカネとかの合金で造りたかったが、それだと鍛治の方法が全く違うので参考にならないと思って止めた。
まぁ、厳密には鋼と鉄も性質が違うのだが、まぁそれは良しとしよう。
鍛治中は後から恐ろしくなる程に無心になる。
無我の境地ってやつかも知れない。
周りの音が聞こえない。鋼を叩く感触と音しか感じない。それが酷く心地良い。
身体が無意識に動く。鋼の声が聴こえる。
何処をどう打てば良いか分かる。
どうすれば良いかは鋼とそして己の身体がわかる。
後はそれに全てを委ねる。
そして時間が経ち
*
「完成だ」
あれからどれほど経っただろう。
日が暮れている。いつの間にか外が真っ暗だ。
いつの間にか少し離れた位置で見ていた筈のドワーフがすぐ側まで来ている。火傷するぞ。
何故か目元が赤い。泣いているようだ。
声もなく泣いている。男泣きってやつか。
「出来たぞ。これで良いか?」
「…………」
ドワーフは答えない。
「これはお前にやる。後は自分で何とかしろ」
ドワーフに出来た剣を渡すと片膝を落とし、まるで物語の騎士のように恭しく受け取る。
「銘は……そうだな。蛍火」
「蛍火……」
「ああ。冷めても尚淡く光るこいつに相応しいだろ。」
そう、この剣は特に材料に変わったものを使っていないのにも関わらず淡く光っていた。
その光の色はまるで蛍のような色だったから蛍火と名付けた。まぁ、安直だろう。
魔力の影響か。あるいはこの剣の原石がそう言う性質なのかは分からないがそこはファンタジーって奴なのだろう。
先程の鉄の剣が魔性の剣ならこれは神聖の剣と言った所か。人を狂わせるよりも敬わせる類の剣だ。
儀礼剣って奴か?いや、アレは刃が潰してあった筈だから違うのか?まぁ、良いか。
「祀るなり目標にするなり好きにしろ」
どうせ俺が持っていても本気で振れない物だ。
渡しても別にどうってことは無い。
「……師よ。感謝する」
「お前の師匠になった覚えは無い。」
「いいや。貴方が認めなくとも俺は貴方を師と仰ぐ」
「……どうせ言っても聞きはしないんだろう?
…好きにしろ。」
「ああ」
「鞘は自分で用意しろ。流石にそこまで作るのは面倒だ。」
「……全霊を賭して作る」
「たかが鞘だ。そこまでする必要は無いだろ。」
「いいや。これほどの剣の鞘とあれば生半可な物では許されん」
「……好きにしろ」
「ああ」
「とりあえず飯にするか」
めちゃくちゃ腹減った。
*
とりあえずドワーフを他の連中の所に置いて来て一旦帰宅した。
あいつは他のドワーフから色々と質問攻めにされていたが、とりあえず放置だ。
タケルには彼等を旅館に案内するように告げて一度帰宅する事にした。
「遅いのじゃ!」
うちのエルさんが御立腹だ。
「悪い。手間取った。」
とりあえず寂しん坊のエルを撫で回してからお姫様抱っこしてリビングに向かう。
こういう時に家を広めに作っておいて良かったと思う。お姫様抱っこで壁に当たらないからな。
「おかえりなさい。丁度ご飯が出来た所ですよ」
「ああ、ただいま。すまない、遅くなった」
「いえ、史記さんから聞いていますので大丈夫ですよ。」
「そうだったのか」
「はい」
史記が気を回してくれたのか有難いな。
「じゃあ、飯にするか」
「はい」
「飯じゃ〜」
*
飯をすませた後は、とりあえずドワーフ達の様子を見に行く為に旅館に足を運んだ。
エルは家で待ってると言ったので置いてきた。
てっきり着いてくるのかと思ったのだが
「ドワーフ達は我を見ると拝んでくるから嫌じゃ」
だ、そうだ。
火竜はドワーフの信仰の対象だったのか
そう言えばメルも確か人魚とリザードマン達に信仰されてたよな。それと同じか。
旅館に着いた俺は、ドワーフ達と合流する。
するとドワーフ達とタケルが酒を片手に宴会をしている。まぁ、そんな事だと思った。
すると向こうが俺に気付いたのか一斉にこちらを見る。
圧がすごいから見ないで欲しいんだが?
「おおっ!我が師よ!やっと来られましたか!」
先程のドワーフが酒を持ってこちらに向かって来る。
そう言えばこいつの名前とか聞いてなかったな。
「ああ。ここの酒はドワーフから見てどうだ?」
ドワーフって確か火酒とかってめちゃくちゃアルコール度数の高い酒を飲んでるらしいから純粋にウィスキーとかの感想は気になるんだよな。
「最高だ!これ程の品質の物は我が国でも100年に一度出来るか出来ないかの出来だ!」
それ適当に作ったやつ何だけどな。
やっぱり蒸留機とかの問題か?いや、酒の保存方法とかも有るかもな。あと保存する樽の種類とかで風味が変わるらしいし。
「そうか。それは良かったな」
「ああ!ここの温泉も最高だったし!俺も若返った気分だ!」
実際若返り効果あるらしいからなぁ。あの温泉。
「それはそれとして、だ。」
俺が本題に入ろうとした気配を察したのかドワーフの顔が真面目に変わった。
「ああ」
「この国、と言っても人口は少ないが。まぁそこはいい。この国とドワーフとの同盟の事だが。」
「皆まで言われなくても分かってる。正直言って我が国から差し出せるものは殆ど無いだろう。精々が魔道具の輸出か我が国の火山でのみ採れる鉱石の輸出くらいだ」
だけどと付け加え
「貴国の安全性の保証は出来る」
「どういう事だ?」
「この国、いえ性格には師には危険性は無いと言う保証を他国に示せる。」
「なるほど、俺は魔王と言われているからな」
「ああ。と言ってもあの剣を打てる師を危険だと考えるドワーフは居ない」
「鉄は…いや剣は嘘をつかない」
ドワーフ特有の考え方って奴か?
○○好きに悪いヤツは居ないみたいな?
「師よ、剣を造る上で重要なものは?」
「鉄と真摯に向き合う事だ。」
「その通り。だが、心の歪んだ者にはそれが出来ない。歪んだ者には歪んだ剣しか打てず。決して鉄は靡かない。」
だがと続ける
「師の剣は神の領域にある。故に貴方程に真摯な人は居ない」
きっぱりと反論を許さない様に告げる。
「残念ながら俺は人では無いぞ?」
「だから何だ?俺は貴方が神と言われてもこれっぽっちも不思議に思わん。それどころか納得しちまう。」
「神でも無いが」
「まぁ、師が何であれ。俺には師だ」
「ああ、そうかい」
「はい」
「と言う事で師よ。俺に師の保証をさせて貰いてぇ!」
それはつまり他国から魔王討伐と言って全面戦争をされるリスクが減ると言う訳か。
正直保証は欲しいんだが、それで交易が条件とか言われてもなぁ。めんどくさい
「師よ。貴方の国には住民が足りてないんじゃないか?」
「まぁ、急激に人を増やしても管理が面倒だからな」
「それは勿体ない!こんな良い街があると言うのに!」
「まぁ、それは趣味で創ったものだから正直創って満足した。」
「師よ、これを機に住民を増やす気は無いか?」
「いや、急激に増やすのは面倒だから嫌だ。
「じゃあうちから10人程出そう」
「うちのメリットは?」
「師とうちの国の友好関係を他国に示せる」
「保証だけでは弱いと?」
「そうだな。正直に言うとうちの若いドワーフ達にこの国の建築や鍛治技術を学ばせたいのもあるんだが…」
「確か魔道具を作っているんだよな?」
「ん、まぁ。ここの設備には及ばないけどなぁ」
「じゃあその技術と雑務とかの労働力としての契約としよう」
俺のは魔道具と言うよりも付与ゴリ押しのなんちゃって魔道具だからな。魔術回路とか使って無いし
「師匠、雑務っていうのは?」
「んー。そうだな。魔物の解体とか城壁周りの警備とか周辺の調査とかかな。」
「それならばうちの若手でも出来るな」
「じゃあそんな感じでいいな?」
「おう。じゃあ俺らは明日朝一で帰ってこの事を国王に報告してくる。返事は後日届けさせて貰うぜ。」
「ああ、分かった。」
そう言ってドワーフは他の連中と一緒に宴会に参加した。
久しぶりに筆が乗りました。続けて次話投稿します。




