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87話『幕間』

これだけ投稿して今日の分は本当に終わります。

また次回(*'-'*)ノ"


彼等は街の物陰から恐る恐る、顔を出す。

どうやら脅威は去ったらしい。

ホッと一息を付く。

そして恥じに気付く。

己は忠義に反したのだと。

逃げ出したのだと。

周りには敗残兵。と言っても死者は居ない。

飛ばされた大盾兵も血を吹き出した大剣兵も生きているようだ。


あれは何だったのだろう。

彼等は思う。


「魔王」


誰かが呟く。

でもと続く。

おかしいのでは無いか?

何故、彼は何もしなかったのだろうか?

殺そうと思えば幾らでも殺せた筈だ。

雑草の様に、刈り取れる筈だ。

歯牙にもかけなかったのだとある者は言った。

しかしある者は奴は人を殺したくなかったのかも知れないと言った。

ならば、我らは……とある者が答え、口を閉じた。

言えなかった。


一切の攻撃してこない無抵抗な者に攻撃し、あまつさえ負けたのだから。

聞けば彼は襲ってきた兵士を誰一人傷付けず壊れた街を直したと聞いた。

もちろん、彼を襲った兵士達は今回の作戦には参加していない。理由は様々だが、また彼と敵対しても勝てない事を悟っていたからであろうと今なら分かる。


本当に彼は魔王だったのだろうか?

事実、彼が持つ力は異常だろう。武器は効かず、我が国最高にして最強の国宝を無傷で壊したのだ。

だが、もしかしたら……いや…しかし……


彼の声はまだ若い少年の様に聴こえた。

もしかしたら、彼はただ力を持っただけの人だったのかもしれない。

誰も傷付けたくないだけの優しい人だったのかも知れない。だとすれば


あぁ……これは恥だ。この汚名をどうそそげばいいのかも分からない。死んでしまいたい。彼は思った。

周りの兵は皆、似たような目をしていた。

きっと自分もそうなのだろう。



なんだアレは!何なのだ!アレは!!!

あの怪物は!!!!


恐い!彼はそう思った。

城の地下、下水道の中で汚泥に塗れ、必死の形相で走り回る彼は恐れていた。

報復に!復讐に!!反撃に!!!

少なくとも自分が同じ立場ならばそうするからだ。


「ヒィ!!!」


ありもしない幻覚に怯える。

恐怖と言う影が自分をどこまでも追い掛けて来ている。彼には死神が鎌を持って近付いているのを感じでいた。


逃げなくては!何処に!?何処かに!!


「あぁっ!ごぼっ!」


盛大に転び、下水が身体中を這った。

普段ならばこんな無様を晒す事は無いだろうが、彼は生憎とそんな精神状態では無かった。

必死に這いずり逃げ惑った。


傍らには妻と思わしき女と子供が3人居る。

彼女はあの場に居なかったが非常事態である事は理解していた。だが、思う。

かつて、夫がこれ程取り乱し、錯乱するような事があっただろうか。いや無いと断言出来る。

怯える子供達を宥め、彼等は先を急ぐ。

幾ら呼び掛けても夫はまともに返事をしない。

彼の心はもうここには無いのだ。

彼との別れが近いことを、彼女は悟った。



これが物語に出てきた恐ろしい魔王なのだ。

初めて彼を見た時、私は思った。


彼を前にした時、私は生きた心地がしなかった。

人生であれ程恐ろしく、死にたくないと思ったのはあれが初めてで、あれ以上の事はこの先無いと思える。


侍女が呼び止める声に耳を貸して入ればあんな事にはならなかったかも知れない。

でも、しなかったでしょう。

と彼女は思う。


何故なら彼女があの時取りに行った物は

彼女が最も大事だったブローチだったからだ。

決して高価では無い。珍しくだってない。

そこら辺の露店を見れば幾つも見つかるだろう。

でも彼女にはそれが大事だった。


だって、彼から貰った初めてのプレゼントなのだから、置いて行ける訳が無い。


でも、彼のお陰でまた貴方とまた出逢えた。

それも、私の望む形で再開出来た。

だからアレで良かったの。


ああ、でも兵士達には悪い事をしたかも知れない。


え?家族は良かったのかって?

えぇ、良かったんですよ。

父は判断を誤った。その結果だから。

国を動かす国王はその結果に対して責任を負う、それが王族の務めだから。


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