64話 『たまには』
もう7日経つのか...
お待たせしました。
「ん〜!美味しいのじゃ〜!」
「美味しい...!」
「とっても美味しいです」
「そいつは良かった。」
口に合わなかったらどうしようかと思っていたんだが。
そうじゃ無くて安心した。
だが、少し空気が重い...ピリピリとしている。
気まずい。いや、俺が悪い訳では無いのだが...
と思っているとエルが内田に話しかけた。
「そこの娘。」
「は、はい。なんですか?」
「もう決めたのか?」
「それは...」
「何故お主はそんなに中途半端なんじゃ?」
「それは...どっちも大事だからです。天秤にかけることなんて出来ません。」
空気が重い...誰か助けて欲しい。そんな目でセアルの方を見たが...
「これも美味しいですね。勉強になります。」
と言って食事の感想を述べてきた。違うそうじゃない。
ってか嘘だろおい。この雰囲気でよく平然と食えるな。肝が据わってるってレベルじゃないぞ
「じゃあこのままズルズルと停滞するのかの?」
「...それは...」
「お主はこの半月の間何をしておったんじゃ?」
「私は!私なりに悩んで!」
「そう、言い訳しているんじゃろ?」
「違います!」
「娘よ。お主の目には焦りが無い。」
「っ!!」
「このまま曖昧にここに居れば何とかして貰える。そう思っておるんじゃろ?」
「それは...そんな事は...」
「甘えるな!」
「っ...!」
「自分の道くらい自分で選べ。そうでなければお主はただの人形じゃ!」
「わ、私は...」
それっきり、内田は黙り込んでしまった。
「なぁ。食事中だぞ?何も楽しい雰囲気をつくれとは言わないが、態々雰囲気を悪くする必要も無いだろ?」
「ぅ...すまん...」
ちょっと威圧スキル出してしまったか?
「はいはい、じゃあこの話は終わりだ。せっかくの料理が冷めるからさっさと食べてくれ。」
「う、うむ。」
「う、うん。」
「もぐもぐ...美味しいです。」
セアルはブレないな...
こんな肝が据わったやつだったか?
あ、でもちょっと冷や汗かいてるな。
何がしたいんだかわからんが、まぁいいか。
そのまま気まずい状態で食事を終えた後
セアルは内田を送って行き、俺とエルの二人きりになった。
「なぁエル」
「なんじゃ?」
「何であんなに内田に厳しかったんだ?」
基本的に温厚なエルにしては珍しい。
普段エルは基本身内には甘くて他人には無関心ってタイプ何だがそれでもわざわざ喧嘩腰に相手を挑発することはしない筈だ。
「あー。まぁ、気に食わなかったんじゃ...」
「もしかしてどうぞくけ...」
「いや、そうじゃないのじゃ。なんというか、絶対に相手が望んでいないのは分かっていてるのにそれを押し通そうとするのはなんと言うか嫌じゃ。それに、どっちつかずの状態でフラフラしている所も嫌いなのじゃ。」
あれ?でもエルと初対面の時って確か半ば無理矢理...
「なぁ、それってやっぱりどうぞくけ...」
「違うのじゃ!」
「あー、うん。そうか。」
「違うぞ!?」
「分かってるって。」
と詰め寄ってくるエルの頭を撫でてあやしておいた。
「むぅ〜」
と言って膨れている。可愛い。
「主はあのままで良いのか!?」
「んー、まぁ。時間が経てば強制的に帰らせるから俺としてはどっちでもいいんだ。アイツが後悔の残らない選択をして貰えればそれが一番だ。」
「いや、主。あの娘、絶対明日も来るぞ?」
「いやいや、喧嘩した次の日にもう一度来るほど図太くは無いだろ?」
「あの目は諦めて無かったのじゃ。」
「何を?」
「アニメで言うハッピーエンドって所じゃの」
「...どういう事だ?」
「確認するが主はお主の居た世界とこの世界を繋げるのじゃな?」
「ああ。そもそも電波何かは向こうから引っ張ってるしな。」
出なければインターネットも出来ないしな。
「と言うことは向こうの世界にゲートを創れるんじゃよな?」
「あー、そういうことか。何となく分かった。
つまりは内田がゲートを使って向こうとこちらを自由に行き来する生活を実現させようとしてるって事だな?」
「うむ。まず間違い無いじゃろうな」
「その件ならあっちに送るのはどんなイレギュラーがあるか分からないとは言ったと思うんだがな。」
「可能性があるのに諦める訳無かろう...
そこは無理だと言わないとダメじゃろうに...」
「それもそうだな。あーあ、失敗した。」
「今から無理だと伝えたらどうじゃ?」
「嘘だと思われるに決まってるだろ...少なくとも俺ならそう思うしな...」
「で、実際どうなのじゃ?」
「さぁな。あれから帰った事は無いから分からんな。」
「そ、そうなのか?」
「ああ。あ、でもつい最近買いたいものがあるからどうしたものかと思ってたんだが。」
「...帰るのか?」
うるうるした瞳を向けるのはやめてくれ。
「帰らない。それにもし帰るならエルも必ず連れていくから安心してくれ。」
「そ、そうか...ふふ...」
「あれだな。向こうで旅行何かをしてもいいかもな。」
「うむ!それは楽しみじゃな!」
その為にはやっぱり自宅登録とか証明書とか色々必要だよな。創るか。
次に金はほら、錬金でもしてダイアモンドと金の延べ棒を創って売れば問題無いだろ。足がつきそうな金だからそれを元手に株でもやって職業を投資家にして置くのが無難だ。
その後は日本各地を車か電車に乗ってのんびりと旅をするのも悪くないな。と言うかむしろいいな。
問題があるとすれば、誘拐犯と間違われないかって事だ。
アイツら事情も知らないのに意味のわからない正義感で通報とか平気でするからな。しかも、その後に謝罪何かはしないクズが大半だな。
まぁ、そんな所も嫌でこっちに来たんだが。
それに...うちのエルに色目を使うクズも居るかもな。
まぁ、そんな奴が居たら土に埋める自信がある。
後は盗撮だ。
アイツらの頭の中には肖像権やプライバシー何か無いからな。すぐにネットに載せる馬鹿ばっかりだ。
よし、写真撮ってきたらその機器がぶっ壊れる魔道具創るか。それがいい。そうしよう。
「の、のぅ主?」
「ん?どうした?」
「さっきからチラチラ殺気が漏れて怖いのじゃが...」
「あ...すまん。ちょっと前の世界のことを考えていたら嫌気が差してな。」
「そうか...よく分からないが主も大変だったんじゃな...」
と言って頭を撫でられた。
「あー、これじゃあ立場逆転だな。」
「ふふふ。何時でも甘えて良いのじゃよ?」
「ははは。いつも甘えてくるのはエルだろう。」
「む!そ、そんな事はないのじゃ!」
でもまぁ...たまにはこんなのも悪くない。
これからはもっと遅くなるかも...




