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兄は私の手を握った。  作者: 海月 楽
妹は知らない
19/19

9

父が出先の事故で亡くなってしまった。

いずれ殺そうとしていた相手だ。自分には何の感慨もなかったが、妹は少し心配だった。しかし、予想外に妹はケロリとしている。それとは対照的に継母は復讐をしておきながら、酷く泣いて棺に縋りついていた。愛しているからこその復讐だったと今思えば愛する人を傷つけたい気持ちもわかる。そのおかげで妹と出会うこともできた。だが、妹を嫌がらせの道具にしたことは今も許さないけれど。


「大丈夫なのか?」


夜、妹の部屋でたずねる。


「ええ。ちょうどよかったです。」


以前のサラなら絶対に言わない言葉だった。

あんなに眩しく見えていた家族だったのに、どうして…やはり妹は壊してしまったのか?


「子ができました。」


サラは愛おしそうにお腹をさすった。


「本当か!」


嬉しい。この上なく嬉しい。しかし、子どもが出来たことで、サラが傷つけられるようなことがあるかもしれない。それが堪らなく怖い。


「少しは悲しい気持ちはあります。でも私は貴方と歩んでいくと決めましたから。しかし、この子を思うと少し不安になります。この子は少し不幸な境遇になるかもしれません。なので、それが少しでも和らぐようにこの子を沢山愛してあげてくれませんか?」


自分は浅はかだな。妹はもっと先のことを見据えている。


「サラ、君を傷つけてしまうかもしれないが聞いてくれ。実は…」


妹と血の繋がりのないことを話す。愛していた家族が全て嘘で、酷く妹を傷つけてしまうかもしれない。そして、そのことが表に出れば妹は蔑まれるかもしれない。それでも…


「…よかった…この子に業を背負わせることはないのね。」


話を聞き終わったサラは未だ見ぬ子どもを自分のお腹越しに撫でる。


「すまない。」

「もう、私の家族は貴方とこの子だから私は大丈夫です。少々言われるかも知れませんが、それが最善の方法です。」


継母に詰め寄り不貞を問いただした後、サラと継母の戸籍を抜いて継母の実家に移した。そして正式に自分の妻として、サラを迎える。その頃にはサラのお腹は少しふっくらとしていた。


「あの人と私の孫なのね。」


自分とサラのことを知った継母はポツリと呟く。二人は愛し合いながらも子どもを作れなかった。しかし、二人をつなぐ子どもができたことを穏やかな表情で受け入れていた。


小さな教会を貸し切り、家族三人だけの式を挙げる。自分とサラとそしてお腹の子どもと。緩やかな白のドレスを着たサラはこの世の誰よりも美しかった。幼い頃やったごっこ遊びと何もわからないただ二人が大人になっただけだったが、それでも全てが違う。

私たちは覚悟を決めた。これから先も二人でいると。

神に誓う。それが地獄だとしても。


サラは僕の手を取った。

1ページに対して文章少なめの作者にとっては実験的な小説でした。作者的にはサクサク描けるのでよかったですが、読んでみて少し物足りなさもあったような気もします。果たして皆さまはどうだったでしょうか。

内容に関しましてはアブノーマルのようでいまして、実はノーマルな話です。かなりブックマークしにくい作品だったかと思います。マニアックで本当にすみません。

最後までお付き合いくださいましてありがとうございました。

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