↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『転生したらコウモリでした。キャピしか言えないけど異世界で生きます。』  作者: AsaHiruYugataYoru
第3章 キャピ! 異世界が思ったより広すぎます!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/95

第72話 「唯さん、世界樹探索中に滑落」

## 第72話 唯さん、世界樹探索中に滑落


 翌朝、私たちは世界樹の根元に集まっていた。

 メンバーは私、エマ、クロエ、ファル。


 そして――。


レオン:「ファル様。本当に行かれるのですか?」

ファル:「行きます」


レオン:「……そうおっしゃると思いました」

 レオンが小さくため息をつく。

 昨日から思ってたけど、苦労してそうだなぁ。


ファル:「世界樹の異変を調べるのに、エルフである私が行かなくてどうするのです」

レオン:「ですから、私も同行します。絶対に一人で先へ行かないでください」

ファル:「分かっています」


クロエ:「……たぶん分かってない」

レオン:「私もそう思います」

ファル:「二人とも!?」


 うん。仲良くなれそう。

 こうして五人で、世界樹の地下へ向かうことになった。


     ◇


 入口は、世界樹の根元にできた大きな亀裂だった。

 中へ入ると、景色が一変する。


唯:「……すご」

 太い。とにかく、根が太い。

 私の身体なんて比べものにならない。


 下手したら家より太い根が、地面や壁を突き破りながら地下深くへ伸びている。

 ところどころから淡い緑色の光が漏れ、薄暗い地下を照らしていた。


ファル:「本来なら、ここにもたくさんの精霊がいるはずなんです」

唯:「いないの?」

ファル:「少ないですね……」


 確かに昨日の《精霊の泉》と比べると、ほとんど見えない。

 世界樹なのに。そのとき。


 ピクッ。足元から小さな振動が伝わった。


(一、二……五匹)


唯:「止まって」

 全員が足を止める。


唯:「前から五匹来る。結構速い!」

レオン:「ファル様、私の後ろへ」

ファル:「私も戦えます!」


レオン:「知っています。それでもです」

 言い争ってる場合じゃないよ!


 暗闇の向こう。ガサガサガサッ!

 巨大な根を乗り越え、四つ足の魔物が飛び出してきた。


 黒い毛。大きく裂けた口。五匹!


唯:「来た!」

 先頭の一匹が飛びかかってくる。

 私は踏み込んだ。


唯:「せいっ!」

 ドゴッ!拳が顔面に直撃。

 魔物が後ろへ吹っ飛び、そのまま二匹目を巻き込んだ。


唯:「二匹!」

クロエ:「……三匹目」


 いつの間に!?

 私の横を通り抜けようとしていた一匹の首筋へ、クロエの一撃が入る。

 魔物が崩れ落ちる。


 残り二匹。

 一匹がファルへ向かう。


レオン:「させるか!」

 キィン!レオンの剣が牙を受け止めた。

 そのまま身体を捻る。


 ザンッ!魔物が地面を転がった。

(おおっ! レオン強い!)


 最後の一匹が跳ぶ。


ファル:「捕まえて!」

 地面から伸びた蔓が魔物の脚へ絡みついた。

 空中で姿勢を崩す。


エマ:「唯!」

唯:「はいっ!」


 そこへ――。 ドゴンッ!

 私の拳。 終了。


唯:「よし!」

クロエ:「……ほとんど唯」


唯:「ちゃんとみんな戦ったよ!?」

ファル:「ですが……おかしいですね」


 ファルが倒れた魔物を見る。


ファル:「世界樹の根元まで、これほど魔物が入り込むことはほとんどありません」

レオン:「世界樹の力が弱っている影響かもしれないな」


 さっきまでの空気が少しだけ重くなる。

 私たちはさらに奥へ進んだ。


     ◇


 十分。二十分。

 下へ進むほど、景色が変わっていく。


 最初は淡い緑色に光っていた根。

 それが少しずつ茶色くなり――。


 さらに進むと、灰色。

 そして。


エマ:「……これ」

 エマが足を止めた。

 目の前を横切る巨大な根。


 半分ほどが黒く変色している。

 表面も乾燥して、ひび割れていた。


ファル:「……こんな」

 ファルが根へ手を当てる。

 顔が曇った。


ファル:「ほとんど生命力を感じません」

レオン:「ここまで酷かったのか……」


 静かだ。さっきまで時々聞こえていた魔物の鳴き声もない。

 虫すらいない。


唯:「……精霊もいなくなった?」

ファル:「はい」


 ファルが周囲を見回す。


ファル:「一体も感じません」

 精霊王が言っていた。

 地下には、精霊から見えない場所がある。


(ここから……?)


クロエ:「……唯」

唯:「ん?」


 クロエがしゃがんでいる。

 一本の根を指差した。


クロエ:「……これ」

 近づく。黒ずんだ根に、小さな穴が開いていた。


唯:「穴?」

クロエ:「……自然にできたものじゃない」


 クロエの指が、その周囲をなぞる。

 少し離れた場所にも。さらに向こうにも。

 同じくらいの大きさの穴。


エマ:「何のために?」

クロエ:「……たぶん」


 一瞬。クロエの表情が消えた。


クロエ:「中に、何かを入れるため」

唯:「……え?」

クロエ:「……こういう跡、知ってる」


 その声が、いつもより低い。

 私はクロエを見る。


 詳しく聞こうとして――やめた。

 クロエがどこで見たのか。


 なんとなく分かってしまったから。


ファル:「では、本当に誰かが世界樹へ……」

レオン:「何かを注入している?」

クロエ:「……可能性は高い」


 昨日の精霊王の言葉が頭をよぎる。

 何者かが、意図的に世界樹を傷つけている。

(本当だったんだ……)


 誰が?なんのために?

 もう少し調べれば――。


 ピクッ。


唯:「……ん?」

 《振動感知》に何か引っかかった。


 私は足を止める。


エマ:「どうしたの?」

唯:「下……」


 足元を見る。何もない。普通の地面。

 でも。


唯:「この下、すっごく広い空洞がある」

ファル:「地下に?」

唯:「うん。かなり深――」


 ミシッ。


唯:「……え?」

エマ:「唯?」


 ミシミシミシッ!


クロエ:「……離れて!」

 遅かった。足元に亀裂が走る。


唯:「うそっ!?」

 バキバキバキバキッ!!

 地面が――消えた。


唯:「キャピィィィ!?」

エマ:「唯っ!!」


 身体が落ちる。上からエマの手が伸びる。

 私も手を伸ばした。


唯:「エマ!」

 届かない。

 でも!私、飛べる!


 背中に力を込める。

 人化した身体から、コウモリの翼を一気に広げた。


 バサッ!落下が止まる。


唯:「よしっ!」

エマ:「唯!」


 大丈夫!このまま上へ――。

 バサッ!翼を大きく羽ばたかせる。


 その瞬間。

 ズンッ!!


唯:「ぐぇっ!?」


 身体が下へ引っ張られた。


(なに!?) もう一度。

 バサッ! バサッ!


唯:「上がれぇぇぇ!」

 飛んでる。ちゃんと飛んでる!


 なのに――。上へ行こうとするほど、身体が重くなる。

 翼に岩でもぶら下げられたみたいに、どんどん下へ引っ張られる。


唯:「なにこれ!? 重い! 重いんだけどぉぉぉ!」

エマ:「唯! 待って!」


 エマの声が遠くなる。


クロエ:「唯!」

ファル:「唯さん!」

レオン:「唯さん!」


唯:「ちょ、待って!待って!まっ」

 必死に羽ばたく。それでも。

 ズルッ。また少し落ちる。


唯:「キャピィィィィ!!」

 上を見る。エマたちの姿が、どんどん小さくなっていく。


唯:「エマぁぁぁぁぁ!!」

エマ:「唯ぃぃぃぃ!!」


 次の瞬間。私の身体は――。

 世界樹の地下深く。

 光さえ届かない暗闇へ、引きずり込まれた。


第72話 唯さん、世界樹探索中に滑落 完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。