↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『転生したらコウモリでした。キャピしか言えないけど異世界で生きます。』  作者: AsaHiruYugataYoru
第2章 キャピと始める冒険者生活―私たちの帰る場所

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/94

第51話 パーティー名は《月夜の翼》!…誰かに調べられてる?

# 第51話 パーティー名は《月夜の翼》!…誰かに調べられてる?


フィーネ:「ところで――三人はパーティーということでよろしいですか?」

唯:「え?」


エマ:「パーティー?」

 フォレスト・ドード三体に、Bランクのド・コンガ・コンガ。

 三人で一緒に戦って、一緒に倒した。


 だけど――。

(そういえば、パーティー組もうって話したっけ?)

 私とエマが顔を見合わせる。


 すると、クロエがおずおずと口を開いた。

クロエ:「……私も、パーティーでいいの?」

唯:「え?」


クロエ:「今日だけ一緒に依頼に行くのかと思ってた」

 クロエが少しだけ視線を落とす。


唯:「普通に明日も三人で行くつもりだったけど?」


 クロエの口元がほんの少し緩んだ。


クロエ:「……そうなの?」

唯:「そうなの!」

エマ:「私もそのつもりだったよ」


クロエ:「…………」

 クロエが、ちょっとだけ胸を張る。

 なんか嬉しそう。


フィーネ:「では、三人でパーティー登録しておきますね」

唯:「お願いしまーす!」


フィーネ:「パーティー名はありますか?」

唯:「パーティー名……!」


 その言葉を聞いた瞬間。

 私の中で、前世から封印されていた何かが目を覚ました。


唯:「……ある」

エマ:「え?」



唯:「《漆黒ノ終焉ニ舞イ降リシ月蝕ノ魔翼》!」



エマ:「…………」

クロエ:「…………」

唯:「どう!?」


エマ:「嫌。それは……」

唯:「なんで!?」


エマ:「長いし、恥ずかしいし……それ毎回名乗るの?」

唯:「かっこいいじゃん! 漆黒だよ!? 終焉だよ!? 月蝕だよ!? 魔翼だよ!?」

エマ:「全部入れればいいってものじゃないよ!」


唯:「キャピ!?」


フィーネ:「ちなみに、書類にも毎回記入していただきます」

唯:「…………」


エマ:「絶対嫌」

 私の最高傑作が即死した。

 すると、黙っていたクロエが小さく口を開く。


クロエ:「……《月夜の翼》」

唯:「え?」


クロエ:「《月夜の翼》なんて、どう?」

エマ:「あ、それいい!」


唯:「月夜の翼……」

 月夜と翼。


 私には翼がある。

 エマは《月龍巫女》。

 クロエも《ヴァンパイア(月系統)》。


 それに――普通にかっこいい!


唯:「いいじゃん! それにしよう!」

エマ:「私も賛成!」


クロエ:「……ほんと?」

唯:「もちろん!」


クロエ:「……どやぁ」

唯:「また口で『どやぁ』って言った!」


クロエ:「言ってない」

唯:「言ったよ!?」


フィーネ:「では、パーティー《月夜の翼》で登録しますね」

 こうして。

 いつの間にか三人で行動していた私たちは、正式にパーティーになった。


     ◇


フィーネ:「それと、フォレスト・ドード三体とド・コンガ・コンガには追加の討伐報酬が出ます」

唯:「お金!」


エマ:「そこだけ反応早いよ」

フィーネ:「そして、唯さん、エマさん、クロエさん。三人にはギルド長とのランクアップ面談があります」


唯:「ランクアップ?」

フィーネ:「現在は三人ともFランクですが、Bランクを討伐できるとなると――

飛び級もありえます!」


クロエ:「……飛び級」

唯:「おおっ!」


フィーネ:「ただ……」

 フィーネが遠い目をした。


フィーネ:「うちのギルド長、ちょーっとばかし偏屈ジジィなので」

唯:「言っちゃった!」


フィーネ:「……失礼しました」

 コホン。

フィーネ:「うるさいのです」


唯:「訂正できてないよ!?」


フィーネ:「冒険者ランクは戦闘能力だけでは決まりません。

依頼実績、判断力、協調性、それから人となりも審査されます」


フィーネ:「面談は明日です。またギルドへ来てください」

唯:「明日もギルドだー!」


 でも今日は終わり!


唯:「よーし! 宿探そー!」

エマ:「えっ! 唯!」


唯:「ん?」

エマ:「今朝、『今日の宿、押さえておいてね』って話しなかったっけ?」


唯:「…………」

エマ:「唯?」


唯:「……えっ?」


     ◇


宿屋:「ごめんねぇ。今日は満室だよ」

唯:「…………」


 二軒目。

宿屋:「満室です」


 三軒目。

宿屋:「今日は無理だねぇ」


唯:「キャピ……」

 ゴールドラッシュ、恐るべし。


エマ:「だから朝に言ったのに……」

クロエ:「……野宿?」


唯:「違う!」

 私は人差し指を夕暮れに立てた。


唯:「キャンプだ!」

クロエ:「……キャンプ」

唯:「三人でキャンプ!」


クロエ:「……楽しそう」

エマ:「なんで二人とも嬉しそうなの……」


 その夜は、外壁近くに設けられた冒険者用のキャンプ場へ。

 テントを借りて、焚き火を囲む。


 肉を焼いて。パンを炙って。

 くだらない話をしながら三人で食べる。


クロエ:「……美味しい」

唯:「外で食べると三割増し!」

エマ:「唯、お酒飲みすぎないでよ?」


唯:「一杯だけ!」

エマ:「その言葉、信用できない」

クロエ:「……私もそう思う」


唯:「クロエまで!?」


 初めての三人キャンプは――。

 普通に楽しかった。


     ◇


 翌朝。私たちは再び冒険者ギルドへやってきた。

 フィーネに案内され、二階のギルド長室へ。


バルガス:「来たか」

唯:「あ、ギルド長!」


 そこにいたのは、以前にも会ったバルガスさん。

 相変わらず六十歳くらいとは思えない筋肉である。


バルガス:「話は聞いてるぞ」

 机の上の報告書を持ち上げる。


バルガス:「お前ら、薬草採取に行ったんだよな?」

唯:「はい!」


バルガス:「で、なんでBランクをぶっ倒して帰ってくる?」

唯:「……向こうから来たので」


バルガス:「そういう問題じゃねぇ」

唯:「キャピ……」


 バルガスさんの視線が、私からクロエへ移った。

バルガス:「で。お前が昨日登録したクロエか」

クロエ:「……はい」


バルガス:「登録初日にBランク討伐とは、ずいぶん派手な新人だな」

クロエ:「……唯とエマがいたから」

バルガス:「ほう」


 バルガスさんの目が少しだけ細くなる。

バルガス:「まあ、座れ」


三人:「はい!」


 面談が始まった。


     ◇


 何をどうやって倒したのか。

 フォレスト・ドード三体を相手に、それぞれ何をしたのか。

 ド・コンガ・コンガをどう倒したのか。


 仲間が負傷したらどうするか。

 依頼の続行が危険だと判断したらどうするか。


 依頼と人命、どちらを優先するか。

 思ったよりちゃんとした面談だった。


 エマは落ち着いて答える。

 クロエも言葉は少ないけど、聞かれたことには真面目に答える。

 私は――。


バルガス:「お前はもう少し考えてから喋れ」


唯:「はい……」

 なぜか私だけ何回も怒られた。


 そして――。


バルガス:「結論だ」

 机の上に、三枚の冒険者カードが置かれる。


バルガス:「唯。エマ。クロエ」

 三人で息を呑む。


バルガス:「三人とも、Cランクへの昇格を認める」

唯:「……え?」

クロエ:「……C?」


エマ:「一気にですか?」


バルガス:「戦闘能力だけなら、それ以上でもおかしくねぇ。だが、お前らには実績も経験も足りん」

 バルガスさんが腕を組む。


バルガス:「だからCだ。しばらくそこで揉まれてこい」


唯:「やったぁぁぁ!」

クロエ:「……やった」


 クロエがまた少し胸を張った。

 絶対嬉しいやつだ。


バルガス:「それと、Cランクになればパーティーでギルド管理下のダンジョン攻略も許可される」

唯:「ダンジョン!?」


クロエ:「……行きたい」

エマ:「二人とも目が輝いてるよ」

バルガス:「ただし!」


 バルガスさんの太い指が私たちへ向く。


バルガス:「勝手に深層まで突っ込むなよ!」

唯:「大丈夫! 深層は私のマイホームだから!」


バルガス:「…………」

唯:「…………」


バルガス:「こいつ、何を言ってるんだ?」

唯:「キャピ!?」


エマ:「あー……説明すると長くなるので」

クロエ:「……マイホーム?」

唯:「昔住んでたの!」

バルガス:「余計に意味が分からん!」


     ◇


 その日の夕方。

 ノクス支部から冒険者ギルド本部へ、一通の報告書が送られた。


 新規パーティー――《月夜の翼》。

 構成人数、三名。


 唯。エマ。クロエ。


 Fランク状態でCランク相当のフォレスト・ドード三体、

 およびBランク相当のド・コンガ・コンガ一体を討伐。


 三名とも短期間で著しい成長を確認。

 面談の結果、Cランクへの飛び級を承認。


 今後の成長が見込まれる、注目パーティー。

 それは特別な警告でも、危険人物の報告でもない。


 将来有望な新人冒険者を記録するための――ごく普通の報告書だった。

 この時点では。


     ◇


 ――三日後。


 王都。冒険者ギルド本部。

 各支部から届いた報告書を、一人の女性が手際よく確認していた。


 名前はイリス。

 冒険者ギルド本部で、斥候・調査を担当する女性。


 そして――。


 もう一つの顔を持つ。

 王国暗部所属。

イリス:「次……次……これは普通。こっちも――」


 書類をめくっていた手が止まる。

イリス:「…………ん?」


 ノクス支部。新規パーティー。

 FランクからCランクへ飛び級。

 Bランク討伐。


 短期間での著しい成長。

 そして、その構成員。


イリス:「……唯?」

 もう一度確認する。


 唯。エマ。クロエ。


イリス:「へぇ……」

 以前ノクスの調査報告に上がってた二人の名前。

 そこに、知らない少女が一人増えている。


 しかも報告内容は、王国暗部が探している条件に引っかかっていた。

 急激に力をつけた者。正体の分からない新参者。


 短期間で明らかな変化を見せた者。

 イリスが報告書を持ち上げる。


イリス:「《月夜の翼》、か」

 少しだけ楽しそうに笑った。


 そして、部屋の隅に控えている人物へ顔を向ける。

イリス:「調査に行こうか! ネロちゃん」


ネロ:「ちゃん呼びはお辞めください」

イリス:「えー、いいじゃん。ネロちゃん」

ネロ:「お辞めください」


 ネロは小さく息を吐くと、イリスから報告書を受け取った。

 そこに並んだ三人の名前へ目を通す。


ネロ:「……それでは、調査に行きましょう。途中で魚の串焼きでも買いましょう。」

イリス:「うん!いいよ。」


 私たちはまだ知らない。

 Cランクへの昇格を喜んでいた、その裏側で――。


 **《月夜の翼》という名前が、冒険者ギルド本部と王国の暗部にまで届いていたことを。**


# 第51話 パーティー名は《月夜の翼》! ……誰かに調べられてる? 完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。