八十八話 神様の物語
ゆづるはある場所に向かった。
窮鼠たちと行ったお団子屋だ。
「すみません。席は空いてますか?」
「はぁーい。どうぞ。あら、あなたあの時の!」
「お久しぶりです。のっぺらぼうのお姉さん。」
ゆづるは軽く会釈すると、のっぺらぼうも返してくれた。
席に案内されるとあの時の場所を案内される。
「ご注文はどうしますかぁ?」
「えっと・・・ずんだで!」
「かしこまりましたぁ。」
ずんだは思い出の味だ。
一つ目たちと初めて出会って悩んだ時に窮鼠と鉄鼠と食べた味。
楽しみだなぁと待っていると、すごい待ってる気がした。
「あれ、どうしたんだろ・・・」
ゆづるは申し訳ないと思いながらものっぺらぼうを探すと何やら手紙を見て悩んでいる。
「あの・・・大丈夫ですか?」
ゆづるは小さく話しかけるとのっぺらぼうが振り向いた。
「あらぁ、ごめんなさい。お団子遅かったですよねぇ。」
「僕は大丈夫です。何か悩んでるようでしたので・・・」
ゆづるは近づいていくとのっぺらぼうは手紙を見せてくれた。
そこに書かれていたのは今すぐ戻ってきて欲しいとの知らせだった。
「家がバタバタしてるみたいで、手伝えってきたんだけど、今日は大事なお客様が来られるからどうしようかと・・・誰かに店を任せたいけど私だけなのぉ・・・」
のっぺらぼうは顔は無いが、困っていることは想像できた。
「あの、僕にできることはありますか?」
ゆづるは咄嗟に口に出してしまった。困ってるのを放っておけないのが悪い癖だ。
「確かあなた、『福呼び食堂』で働いていましたねぇ。お願いしたいですぅ。」
「分かりました!」
「大事なお客様のお団子は出しておきますのでぇ、来られたらお茶と一緒に出してください。」
「はい。で、そのお客様はどんな妖怪なんですか?」
「それが・・・姿が見えない妖怪でぇ、でも鈴をお持ちなので音がしたらいつもあの席に座られるの。頼めるかしらぁ?」
「分かりました!任せてください!」
「助かるわぁ。お願いしますねぇ。」
のっぺらぼうはそう言うと荷物を持って店を後にした。
ゆづるはドキドキしながら待っている。姿が見えない妖怪。しっかり耳をすませなければ。
のっぺらぼうが店を出てから数十分後、リン・・・と何か音がした。ゆづるは周りを見渡すと、あるふくよかな老人が歩いてきた。手には鈴を持っている。
あの妖怪なのか。でもゆづるには姿がはっきり見えていた。
するとその老人はのっぺらぼうが言っていた席に座ったのだ。
「あれが、お姉さんが言っていたお客様かな。」
ゆづるは恐る恐る、用意された団子とお茶を持って老人に尋ねた。
「あの、貴方が姿が見えない妖怪さんですか?」
「・・・あぁ。ワシがそうじゃよ。のっぺらぼうの娘はいないのか?」
「急用ができたみたいで、僕が代わりに店番をしてます。」
老人はあまりにもゆづるがしっかり目を見て話すからか、少し驚いた表情になった。
「お前さん、ワシが見えるのか?」
「・・・はい、ハッキリと。」
「ワシは何色の帽子をしている!?」
「えっと黒色です。」
「手に持ってるのは!?」
「釣竿ですよね?」
ゆづるは見たまま話すと老人は急にワハハハハと笑いだした。
「お前さん、人間だな!」
「え!いや・・・僕は。」
「隠さんでいい。ワシも妖怪じゃない。」
「え!?」
「まぁ、座りなさい。」
老人の言う通り、ゆづるは隣に座り団子らが乗ったお盆を置く。
「七福神は知ってるか?」
「うん、知ってるよ。神様だよね?」
「ワシは恵比寿じゃ。」
「えびすって・・・商売繁盛の神様!?」
「ワハハハハ!そうじゃそうじゃ!」
「凄い!!でも、なんで僕は見えるんだろ。」
「それは人間だからじゃよ。人間との関係が深いからのぉ。」
「・・・あの、少し聞いてもいいですか?」
「なんじゃ?」
「なんで、この店に?」
ゆづるは子供ながらの疑問だろう。恵比寿に尋ねると優しい顔で答えてくれた。
「ワシの・・・わがままじゃよ。妖怪と人間が共存していた時代があったのは知ってるか?」
「うん、知ってるよ。仲が良かった時があったって、でも・・・」
「そう、その後は一部の人間のせいで妖怪の生活は徐々に崩れていった。この店もその被害にあっていた。」
恵比寿は団子をかじり、店を見た。
「この団子屋はとても賑わっていて、ワシもお忍びで良く来とったわい。じゃが、被害があってからは店はボロボロで客も居なくなった。残されたのは泣き崩れる妖怪、ワシは心が痛くなっての・・・こうやってたまにお団子を食べに来ては頭を下げに来てるんじゃ。」
「そうなんだ・・・」
「お前が気に病むことはない。これは昔の人間がやらかしたことだ。」
恵比寿はわしゃわしゃとゆづるの頭を撫でる。時間はすぐ過ぎるもので知らぬ間に団子は食べ切っていた。
すると向こうから、「おーい」という女性の声がした。のっぺらぼうだ。
「お待たせしましたぁ。お客様は?」
「えっと・・・」
ゆづるが言おうとした瞬間、恵比寿はリンリンと鈴を鳴らす。指を口に当てる姿を見て『秘密』なんだと感じゆづるは口を閉じた。
「あぁ、そちらに。いつもありがとうございます。」
のっぺらぼうにはやはり見えてないようで大体の位置づお辞儀をした。最後にリン!と鈴を鳴らすと恵比寿は去っていった。
「座敷童子くん、ありがとうございますぅ。あ!ずんだ、まだだったですねぇ。すぐ用意しますねぇ。」
のっぺらぼうは店の中に入るとずんだが乗った団子を持ってきてくれた。
「どうぞぉ」
「あ、ありがとうございます!」
「お礼にお代はいらないわぁ。・・・ねぇ座敷童子くんには見えた?」
「え?」
「なんだかあなたには見えてるような気がしたの・・・気のせいよねぇ」
のっぺらぼうはふふっと笑う。
「僕は・・・やっぱり見えませんでした。でも、とっても優しい方の気がします。」
「私もよぉ」
のっぺらぼうには嘘をついてしまったが、これでよかったんだとゆづるは自分に言い聞かせた。
その後、団子を食べ終わったゆづるは口裂けたちのお土産に団子を包んでもらい、『福呼び食堂』に帰っていった。




