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十二話 お仕事の物語

「よぉ、椿。順調か?」

「お雪さん。はい、あともう少しで終わります。何かありましたか?」

「いやな、お前一人に任せるのも申し訳ないから手伝いをつけようと思ってな。」

「そんな、お気遣い頂かなくても大丈夫ですよ。」

「それが…本人たっての希望でな。」

するとお雪の後ろから髪が長い女性が顔を出した。

「私は針女と申します。是非修繕のお手伝いをさせていただきたく参りました。よろしくお願い致します。」

「これはご丁寧にありがとうございます。私は椿と申します。こちらこそよろしくお願い致します。」

針女という妖怪は礼儀正しく椿にお辞儀をする。

しかし、椿は見たことがあった。

その妖怪は椿が初めて狐の宮に来た時に睨んできた妖怪だ。

「と、言うわけだ仲良くやってくれ。じゃあな。」

そうとは知らないお雪は椿と針女を残しその場を後にした。

「あの椿様。」

「椿でいいですよ。そんなに固くならないでください。」

「では、お言葉に甘えて…椿。実は私…貴方とご友人になりたいんです。」

「友人…ですか?」

意外な言葉に椿は一瞬固まる。何故ならあんなに睨んでいた妖怪とは思えない答えだったからだ。

「はい。お恥ずかしい話私には友人がおらず…そこに美し…いや、努力家の椿をお見かけして是非ご友人になりたいと思ったのです。」

よよよ…と針女は袖で顔を隠す。嘘を言ってるように聞ないと判断した椿は迷うことなく口を開いた。

「はい。是非なりましょう友人に」

そう言った椿の表情はとても明るかったと戸の隙間から見ていたろくろ首が言っていた。

針女が手伝いとして付き数日が過ぎようとしたある日狐の宮にある武士が現れた。

「邪魔する。」

「誰だ、こんな夜中に。」

「ここは何時も夜中だろ。百夜の街『狐の宮』なのだから。」

「こ、これは牛鬼様。失礼しました。」

牛鬼という武士は辺りを見渡す。

「構わん、。玉藻の前はいるか?」

「妾はここじゃ。何のようだ?牛鬼」

「久しぶりだな。実は頼みたいことがある。」

「お前が妾に頼み事だと?何を企んでる。」

玉藻の前は鋭い眼差しで睨む。しかし牛鬼は怯むことなく答える。

「安心しろ。ただ羽織を修繕してもらうために来ただけだ。」

「そんなもの…そちらの腕の良い者に任せれば良いだろう。」

「いや。狐の宮に腕の良い方がいると言うじゃないか。そいつに是非私の羽織の修繕を頼みたい。」

「………こっちだ。」

羽衣は何故か追い出そうとせず牛鬼を客間へと案内した。

一方その頃、ろくろ首は椿を探して走り回っていた。

「椿!椿ちゃんはいるかい!?」

「はい。こちらにいます。どうしたんですか?ろくろ首さん。」

椿はちょうど修繕が終わった着物たちを返しに回っていたところだった。遠くにいる椿見つけるやいなやろくろ首は長い首を伸ばし、頭部を椿の顔の近くまで飛ばす。いつ見ても慣れないがこれがろくろ首の特徴なのだ。

「実は今、牛鬼様がいらして椿ちゃんに修繕を頼みたいと言ってるんだよ。」

「牛鬼様?」

身体が頭部に追いついたのかスルスルと首が短くなっていき、そして人間並みの首の長さまで戻った。

「あぁ、椿ちゃんは知らなかったね。牛鬼様は近くの漣の山の頭領だよ。羽衣様が牛鬼様に借りを作ったみたいで断りきれなかったみたい…椿ちゃん、頼めるかい?」

「…分かりました。やってみます。」

「よし!こっちだよ。」

そのまま椿はろくろ首に連れられ牛鬼が待つ客間へと足を運んだ。

そして客間につくや否や牛鬼と思われる男が座っており、お付であろう妖怪がその後ろを座っていた。

椿は粗相のないよう、静かにその場で膝をつきお辞儀をする。

「ご指名頂きありがとうございます。私が牛鬼様の羽織を修繕させて頂きます。」

「…お前が…私は牛鬼と申す。これが依頼の品の羽織だ。私の一張羅だが、修繕出来そうか?」

「詳しく見ないとわかりませんが、このくらいなら半日で出来ると思います。」

「そうか。では頼む。その間この辺りをうろついている。構わないな?玉藻の前。」

牛鬼が言うと玉藻の前は不機嫌そうに「…好きにしろ」と返す。

それを見計らい椿は仕事部屋に羽織を持ち込んだ。

早速修繕に取り掛かりいつも通りチクチクと縫っていくがある部分で手を止めてしまう。

「………………。」

「どうですか?椿。修繕出来そうですか?」

針女がお茶を椿の横に置き膝を着く。

「ありがとうございます。ほとんどがほつれなので何とかなりそうなのですが、問題ははこの破けた跡ですね。」

椿は羽織を広げるとそこには握りこぶしひとつ分の大きさの穴があった。

「かなり破けてますね。」

「はい。しかもこれよく見たら刃物で切られているみたいなんです。」

「それって…」

「人為的なものですね。」

其れを聞いた瞬間針女は手で口を覆い小さく悲鳴をあげた。それでも頼まれたからに何とかしないとならなく、椿は依頼された羽織と同じ柄の切れ端を探して馴染ませるように縫い付ける。ほかの破れも目立たないように縫い直し。なんとか時間内に完成させた。

そして約束の時間がやってきた。

「修繕終わったか?」

「はい。こちらが依頼された羽織でございます。」

椿は牛鬼の前に羽織を出すとお付の妖怪が確認させるように広げて見せる。

「素晴らしい。綺麗に修繕されている。」

お気に召されたのか笑顔で返された事をきっかけに椿は修繕で気づいたことを報告することにした。

「それと1つお耳に入れたいことがあります。」

「?なんだ。」

「実は羽織に破れた跡があったのですがそれが人為的なものかと思われます。」

すると先程の笑顔が消え険しい顔に変わる。

「…それはつまり、誰かが私の羽織を切り裂いたと。」

「恐らく。」

牛鬼はなにかに気づいたのかお付の妖怪たちがいる後ろをくるりと振り向き低い声を出した。

「…お前たち、昨日から何かヒソヒソしていたな…まさか…な?」

圧はすごく、椿たちまでもがその場から動けなくなるほどだ。

その圧に耐えられなかったのか一人のお付きの妖怪はその場に平伏せた。

「も、申し訳ありません!!」

恐らくこの妖怪の仕業だろう。なんて恐ろしい賭けをしたものだ。

「すまなかった。この馬鹿どもの問題に巻き込んでしまって。」

「全くだ。牛鬼、羽織が直ったのだからもう帰れ。これで貸し借りは無しだ。」

玉藻の前は相当牛鬼のことが苦手なのだろうシッシッとすぐ帰るように促す。

「そうさせていただく。帰ってこの事についてしっかりつるし上げなければ。」

羽衣にお辞儀をすると今度は椿に向かって口を開いた。

「娘、報酬がてらお前がが欲しいものをやろう。何でも言え。」

「…今は何も…」

「…そうか、ではこれをやろう。」

牛鬼は立ち上がり、椿にあるものを手渡した。椿は何か分からず首を傾けていると針女が椿の肩を揺らす。

「こ、これは香り袋ですよ!椿!」

「よく分かったな。この香り袋は私特製の毒が入っている。持っていれば悪い妖怪が寄ってこないお守りと思ってもらってかまわん、もし他に欲しいものが出来れば申せ。」

そう言うと牛鬼はお付を立たせ出口へと向かった。

「玉藻の前、この度は礼を言う。また、百鬼夜行の日に会おう。それと娘、自分の店を持ってはどうだ?きっと向いてるかもしれないぞ。」

「いいから帰れ。牛鬼。お前たち客人がお帰りだ!門まで案内してやれ。」

「は、はい!ただいま!」

近くにいたろくろ首が急いで駆け寄りもんまで案内して行った。

「凄いですよ椿!あの牛鬼様の羽織りを直すなんて、ましてや香り袋まで頂くなんて!」

「ありがとう、針女。………店を持つ…か…。」

椿は先程の牛鬼の言葉に引っかかっていた。なんでも出来る自分が嫌で何も続かなかったがこの着物の修繕だけは楽しめていた。それに自分を認めてくれる人ではないが妖怪がいる。

いつしかこの世界に意心地を感じていたのだ。

「考えてみようかな…」

「?何か言いましたか?」

「何でもない。針女、残りの着物の修繕頑張りましょう。」

「はい!」

椿は針女を連れて残りの修繕をするべく仕事部屋兼自室に向かっていった。

ゆづるたちはある場所にお出かけに来ていた。人間世界でいうサーカスみたいな場所みたいだ。

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