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十三話 お出かけの物語

これはゆづる達が出かける4時間前の出来事である。

「ゲロゲーロ!さぁさぁ寄った寄った!

活きのいい情報が選り取りみどりよぅ! 」

日差しが強い朝、ハッピを着たガマガエルがヒラヒラと紙配っていた。

「今回の大目玉はなんと移動式見世物小屋『和み』がやってくる!見なきゃ損損!」

「ガマのおっちゃん。それ俺にもちょうだい!」

近くに通りかかった一つ目はそこに走っていき、配っていた引札を受け取る。

「毎度あり!」

「……すぐにみんな呼ばなきゃ!」

一つ目はすぐにゆづると蟒蛇を呼びに行った。

引札によればカッパ兄弟による曲芸、影法師の影遊び、蛇帯の舞などいろいろ書いてある。

いわゆるサーカスみたいなものだろう。

そして今現在ゆづる達は一つ目に誘われその場所に向かっていた。

「なぁなぁ、どれ見たい?俺、このカッパの曲芸!」

「俺は……蛇帯の舞…かな。」

「蛇だから?」

そう聞くと蟒蛇はうんと小さく頷いた。

「そう言うゆづるは?」

蟒蛇と大蛇に目が合うと今度は引札に目を移す。

「僕?僕は……このビワの演奏!」

「なんか座敷わらしの癖に大人っぽいな」

「なんだよそれ」

いつもの3人でふざけ合う。

ケラケラと楽しい笑い声が響く中、約1名だけあまりそう思っていない者がいた。

「おいこら、何で俺が付き添いなんだ!!」

バサバサと黒い翼をばたつかせる烏が1匹。

「仕方ねぇじゃん。暇なの烏兄ちゃんしかいなかったんだから。」

「ひ、暇じゃ!………ねぇ…」

図星だったのか歯切れが悪くなってしまった。

改めてゴホンと咳払いし今度は落ち着いて話し始める。

「金魚はどうした?あいつなら快く行ってくれただろう?」

「ダメ。仕事があるって。」

「ぐっ…だ、だが他にもいただろう?」

「窮鼠さんは麻雀、鉄鼠は鍛錬。ほかの人も用事でダメでした。」

ゆづるはほかにも誘ったことをさらっというと

烏天狗ははぁーとため息をつく。もう仕方ないと感じたのかばたつかせていた羽をしまった。

「あーもー分かった!行きゃいいんだろ?行きゃ。」

その言葉にゆづるたちは互いに顔を合わせはヒヒヒっと笑う。

そして引札を手に取り地図を見ながら歩き始めた。

行く途中、ゆづるたちと一緒で見世物小屋を目指す妖がちらほら見える。

恋仲の妖に親子、友人といろんな妖怪が同じ道を歩いていく。

「すごいなぁ。みんな見世物小屋に行くんだぜ!」

「そんなにその見世物小屋は人気なのか?」

烏天狗の言葉に1つ目と蟒蛇はピタッと足を止めた。

「烏兄ちゃん知らないの!?見世物小屋『和み』!?」

「すっごく有名なんだぞ!?」

ズイっと顔を近づけ話す力強い声につい後ずさりしてしまった。

「そうなの?」

あまり妖事情を知らないゆづるは何気なく声をかけると一つ目は大きなキラキラした目をして暑く語り出した。

「そうなんだぜ!一流の芸を身につけた妖怪たちがいろんな場所を周りながら披露するんだ!その芸の技術は日に日に伸びていくからすっげー盛り上がるんだぜ!」

「それに出店とかもあるからお祭り感もあるんだ」

蟒蛇も多い被せるような言葉にゆづるは体うずうずしだした。

「なんかすごく楽しみになってきた!」

「だろ!?」

烏天狗を置いて盛り上がる三人にやれやれと肩を落とす。

「分かった!分かった!ほら行くぞ。」

スタスタとほかの妖立ちと同じ道を進む。

「ホント烏兄ちゃんは流行に疎いよな~」

「ねー」と言葉を出せば「ほっとけ!!」と返ってきた。ゆづるたちも烏天狗に付いていき再び歩き出す。

すると賑やかな音楽や声が風に乗って聞こえてきた。

「あ!見てあれ!」

蟒蛇が指さす先にはたくさんの提灯が吊られていた。鳥居の門をくぐるとそこには右に招き猫左に狸の巨大な置物のその真ん中に一際目立つ建物があった。いくつもの旗には『見世物小屋和み』と書かれていた。

辺りからは活気のある声が響き渡る。

「さぁさぁ、お立会い!見世物小屋『和み』だよ!皆様を素敵な見世物でおもてなし!見て損はないよ!さぁさぁ、お立会いお立会い!!」

ツギハギの衣をまとった地蔵が深くお辞儀しながらぬらりくらりと紙吹雪を巻きながら徘徊している。

まるで別世界のような場所にゆづるはより興奮が抑えきれなかった。

「すっごい!すごいすごい!」

「だろ!すごいよな!」

「凄いね!ね、大蛇。」

ゆづるたちは体をぴょんぴょん跳ね、行き場のないうずうずを最大限表現していた。

「こらこら騒ぐな。で、まずどこ行くんだ?」

やれやれと烏天狗は腕を組んで返答を待つが引札には本命の劇までは15時と書かれている。

今の時刻は13時ということは。

「まだ2時間もある…どうしよう。」

蟒蛇が呟くと大蛇は退屈になったのか体から首へと移動し、顔を隠すようにとぐろを巻いていく。きつく巻いたのかとぐろの中心でヴっという声がしたので慌てて大蛇を剥がした。

「蟒蛇の顔が隠れてる。隠れてる!」

「大蛇、顔に巻きつくな!蟒蛇の首が締まる!」

大蛇は理解したのかまた蟒蛇の体へ巻きついていった。

その様子にこの後を考えてなかったのかと察しがつく。さぁ、どうしたものかと考えていると急に誰かが烏天狗の袖を引いた。

「おにーさん。行く場所に迷ったなら出店を見ればいいよ。色んなものがより取りみどりだよ!」

下を向いてみればって小さな角が生えた小鬼が袖を掴みながら言った。

「お前は?」

「僕は袖引き!この見世物小屋『和み』の一員なんだぞ!」

胸を前に出しフフンと鼻を鳴らす。

烏天狗は呆然とするだけだったがゆづるたちは『和み』の一員というだけで目を輝やかせた。

「『和み』の!?すごいすごい!」

「なぁ!なぁ!何してるんだ?」

「え………えっと…客引き、かな?」

ゆづると一つ目が聞くと、先程の自信とは裏腹に今度はモジモジしながら答える。

「なぁんだ。客引きか。」

蟒蛇の言葉に合わせるように大蛇もシュルルと舌を鳴らした。

「き、客引きだって立派な仕事なんだぞ!!」

「まぁまぁ落ち着けって。出店って何があるんだ?」

「え?えっと、りんご飴に、射的に、綿あめ…」

「本当にお祭りに出そうな屋台だな。」

「じゃあ、屋台で時間潰そう?お腹も空いたし、」

ゆづるがそう言うと袖引きの案内で屋台へと向う。屋台は屋台ですごかった。普通のお祭りでは考えられないような装飾の店がずらりと並んでいる。烏天狗もゆづるたちもただただ見つめるだけだった。

「本当に出店か?」

「思ってたのよりすげー…」

「この見世物小屋の装飾はぜーんぶ兄者が考えているんだ。」

胸を張りながら言う袖引きは先頭に立つと急にピタリと足を止めた。

「これ!うちの名物『飴細工』だ!凄いだろ!」

目に飛び込んだのは、色とりどりの鶴や龍、カニや亀まで飴とは思えない芸術品がズラっと並んでいた。

「すげー!これ全部飴!?」

「蛇…あるかな…」

蟒蛇と一つ目はすっかり飴細工に夢中だ。もちろんゆづるもだ。

それを見た烏天狗は懐から巾着袋を取り出す。

「欲しいか?」

「え!?いいの!?烏兄ちゃん!じゃあね…」

一つ目は大きな目を輝かせ、黒い龍の飴に手を伸ばした。それに続いて蟒蛇も緑色の蛇を手にした。

「ゆづるも買ってやるから好きなん選べ。」

「う、うん」

どれも綺麗で目移りしそうな飴ばかり。

しかし、ゆづるはなかなかコレというものがなかった。

「もし欲しいのがなかったら、言ったら作ってもらえるよ!」

袖引きはゆづるの袖を引きながら言う。

「じゃあ……蝶々、青色の蝶々」

「あいよ!!蝶々ね!」

鉢巻きを着けた江戸っ子風の妖怪は手際よく飴を作っていき、あっという間に青い蝶が出来上がった。

「ヘイお待ち!!」

「ありがとう!」

ゆづるは飴を受け取るとへへっと笑を零した。

「はい、これ代金。」

「確かに、毎度あり!!」

烏天狗がお金を払っていると、カンカンカンと鐘が鳴る音が響き渡る。

「大変だよ!もう開演時間だ!早く行かないと!」

「嘘!あっという間だな」

「いそごう!!」

ゆづるたちは飴細工を片手に劇の会場に足早に向かった。

会場の中は先ほどとは比べ物にならないほど混みあっていてすし詰め状態だ。

「座るところあるかな…」

周りを見渡していると「シャー。」と大蛇の鳴き声が聞こえる。

近づいてみるとなんと人数分の席を確保していた。

「お!すごくよく見える!!」

「こりゃいい席をとったな。」

「大手柄だね、大蛇。」

「えらいぞ大蛇!よしよし。」

大蛇は頭を撫でられると気持ちよさそうに蟒蛇に絡み付きながら目を閉じた。

早速座ると舞台の奥から小さめの妖が現れる。

「皆様、大変長らくお待たせ致しました。

ワタクシはこの『見世物屋台和み』の長をさせて頂きます。狂骨と申します。」

狂骨がお辞儀をすると周りから甲高い歓声が上がった。

「狂骨?」

「狂骨は見たまんまだけど骸骨の妖怪だよ。」

「ふーん、そうなんだ。」

ゆづるは一つ目から説明を聞くともう一度狂骨に目を向けた。

「では、まずワタクシめからお披露目させていただきます。ほれ!」

狂骨の手から次々と骨が現れると、ジャグリングをしたりそれで馬や少し大きめの妖を作ったりと普通の人間のサーカスでは一切見れない芸にゆづるは直ぐに心を奪われてしまっていた。

「凄い…」

「だろ!!まだまだこれだけじゃないんだぜ!」

「うんうん!まだ、蛇帯の舞があるんだから」

「ほらほら、ちょっとは静かにしろ。」

烏天狗に注意されながらもゆづるたちは次々と芸を目に焼き付けた。

美しい女の妖怪、『蛇帯の舞』と息のあった双子の妖怪、『河童の曲芸』にまるで落語のような面白い演奏をする『ビワの演奏』。

どれも素晴らしい見世物の数々であっという間に終演に来てしまった。

「皆様、ここまでご覧頂き誠にありがとうございます。これが最後になります。こちらをご覧ください。」

狂骨は腰から刀を取り出す。

「こちらはただの刀。ですがコチラにはある神が宿ってるのです。よくご覧下さい。」

するとなんと刀が一人でに動き出したのです。

そして近くにあった竹を切ったり、舞うように動く姿は美しく客の目を釘付けにした。

「すごい!どうなってるんだ!?」

「右へ左へと動き回ってるぜ!」

もちろん、ゆづるや蟒蛇、一つ目も釘付けだった。

「あれは付喪神様だよ。大切にした物に宿る神様さ。」

「あれが?神様なんて見えないよ。」

「あの刀自体が神様なんだよ。」

袖引きが足をバタバタしながら話す。

「僕も物を大切にしたら宿るかな?付喪神様…」

「宿るよ。大切にしたらきっと…いや、絶対。」

蟒蛇の質問にも袖引きは答えた。

ゆづるもその会話を聞き、物を大切にしているおばあちゃん家は付喪神様が沢山いるのかな。と密かに思ったのだった。

するといつの間にか舞は終わり、終幕の語りに入っていった。

「本日はお忙しい中、足を運んでいただきありがとうございました。これにて見世物小屋和みは幕を下ろします。本当にありがとうございました。」

団員たちがお辞儀をすると周りの妖たちはわぁっと声を上げ拍手をした。本当に凄かった。元の世界では味わえない体験をしたのだから。

そしてゆづるたちは人混みに流れるように外に出ると外は知らぬ間に暗くなっていた。

「もう暗くなってる。」

「早く帰らなきゃ」

「よし、帰るぞお前たち。」

そう烏天狗が言うと来た道に向かって進み出した。

「気をつけて帰ってね!」

袖引きは大きく手を振ったのでゆづる達も大きく手を振り返した。

「また行きたいな…。」

「じゃあ、今度は百鬼夜行に行こうぜ!」

くるりと一つ目が後ろを向く。百鬼夜行と言えば妖怪の行列のはずだがなにをするのだろうか…。

ゆづるが悩んでいると蟒蛇が大蛇を撫でながら答えてくれた

「妖怪の大将が集会するんだけど、その際に他の妖怪と交流するための祭りだよ。」

「へぇ~、楽しそう!行ってみたい!」

「おう!行こうぜ!三人で!」

「うん!」

「ほれほれ、話し合いが終わったんならちゃんと前見て歩け、危ないぞ。」

烏天狗に言われ渋々前を向くと目の前には綺麗な夕日が彼らを眩しいぐらい照らしていた。

百鬼夜行…楽しみだな。今日みたいに屋台はあるのかな、どんな妖怪がいるんだろう。

ゆづるは想像を膨らませながら帰る家、『福呼び食堂』へと向かったのだった。


ある雨の日、ゆづるは猫又と食事に行くことに。ネコのことについての話になり……

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