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飛牛は全長2メートル程あり、ミネアによって半分炭になっていても十分の量がある。これならば明日の朝も十分足りる。
とりあえず今晩はすぐ調理できる料理が良いだろう。ミネアの腹からギュルギュルという主張が半端ない。
肉は薄めに切ってさっと焼き、タレを絡めて皿へ山と盛っていく。菜園から収穫しておいた野菜はサラダへ。更に野菜と肉の切れ端を適当にぶち込んでスープも作る。それから王都で買っておいたパンを切れば準備は完了だ。
「おら、ミネア。飯出来たぞ」
「なんと! こんなに早く出来るものなんじゃな」
「あー、まぁ大したもんじゃねぇし。あんまり期待すんじゃねぇぞ」
大きな瞳をキラキラさせながら夕食を見つめるミネアに、ゼノは頬を掻きながら予防線を張る。適当にざっくり作ったものだから、あまり期待されると困るのだ。
「とりあえず、冷めるからもう食うぞ」
「そうじゃな!」
さっさと食べ始めるゼノとは対照的に、ミネアはしっかり食前の祈りを捧げてから食べ始める。やはり育ちが良いのだろう。
そう思いながらしばらく互いに無言で食事を進めていたが、ふとミネアの皿を見てゼノは顔を顰める。肉はモリモリと減っているが、サラダには手が付けられていない。
「おいミネア、肉だけじゃなくて野菜も食えよ」
「ぬ……」
軽く睨みつけながら注意をすると、ビクリ、と固まってから何やら思案しだすミネア。
一体何を考えているのか。
少し面白い気分になりながらミネアの出方を窺っていると、何やら思いついたらしい。パァっと顔を輝かせ、胸を張りながら言い放つ。
「妾は肉食ぞ! じゃから野菜は食さぬ!!」
「アホか。獣人は肉食獣でも雑食だろうが」
「ぬぅ……」
速攻で言い返してやると、しょんぼりと凹む。頭上の耳も、へにょりとヘタっていた。
分かりやす過ぎる反応に、思わず軽く噴き出してしまう。
「ゼノ! 妾を愚弄するのか!?」
「いや、そんなつもりはねぇけどよ。分かりやすすぎだろ、お前。王族のクセにそんなんでいいのかよ」
「? 何故じゃ?」
「王族ってか、王宮っつったら腹芸が出来なきゃ乗り切れねぇだろ。あんなドロドロしたトコなんてよ」
「そうか? 爺様は、真っ直ぐ当たれば良い! と仰っていたぞ?」
きょとん、と目を丸くして首を傾げるミネアに頭が痛くなる。
アルジュマ国の皇帝は脳筋なんだろうか。いや、幼体の孫娘を修行して来いと放り出すくらいだから、きっと間違いなく脳筋だ。
自分の中で勝手に結論を出し、そこでふと浮かび上がってきた疑問をミネアに問う。
「そう言えば、お前、両親は居ねぇの? さっきから爺様、爺様言ってるけど」
どうにもミネアの一直線ぷりにはアルジュマ国皇帝の影響が感じられるが、誰か修正する人は居ないのだろうか。今回の修行、についても両親が居れば止めそうなものだが。
そう思って深くは考えずに聞いたのだが、どうやら地雷だったようだ。
先ほどまで元気いっぱいだったミネアが一気に沈み込む。頭上の耳も、完全に伏せてしまっている。
「父様と母様は、居らぬ。ずぅっと遠くに行かれた、と聞いたのじゃ……」
「あー……。悪ぃ」
一気に重くなった空気に、ゼノは顔を顰める。こんな時の対処なんて分からない。
とりあえず自分の皿から肉をごっそりミネアの皿へと移す。
「まぁ……、とにかく食え」
「……そなた、妾を馬鹿にしておろう?」
じとり、とゼノを見上げつつもミネアは皿に山盛りとなった肉をモリモリと食べ始める。耳も、もう元気そうに起き上がっていた。
元に戻った空気とミネアの様子に、ホッと息を吐く。ミネアに暗い空気は似合わない。
安堵からか、無意識に笑顔が零れていた。
「んな事はねぇよ」
そんな言葉と共に向けられた、柔らかい自然なゼノの笑いに、ミネアは大きな金色の瞳を更に丸く見開いていた。耳も尻尾もピンと立ち、じーっとゼノを見つめる。
そして何やら納得したように一つ頷くと、満面の笑顔を浮かべて口を開く。
「ゼノ! そなた、妾の番になるのじゃ!」
「はぁっ!?」
突然の爆弾発言に、ゼノの手からはフォークが滑り落ちていた。




