まぁ、無料なら......
「んで、姫さんの話はこれで終りでええ?」
「ええ。ここまで足を運んでくれてありがとう。お帰りは――」
あちらです。と言葉を続けようとしたが、流れるような動きでディナサンは私の隣に来ると、友達同士の気軽さで私の肩を抱いた。肩幅......肉幅が大きいから、ディナサンの大きな手が肩を掴み切れてない。
「んもう!姫さん!自分の話が終ったら帰らすなんて薄情やないの!僕も姫さんには用があんねん。たとえばぁ……」
ディナさんは指をパチン、と一度鳴らす。すると、呼んでもいない若い女たちが大小さまざまなスーツケースをもって現われる。
「僕んとこの商会の新作ドレス、アクセサリー......色々あるから見ていったってぇな」
ディナサンのところの従業員だろうか。若い女たちは慣れた手つきで汲みたて式のハンガーラックを手早く設置して、私に売り込む気のあるドレスを並べていく。黒、白、ピンク、水色......暖色から寒色まで色とりどりの、さまざまなタイプのドレスが並べられた。
「......ディナサン、私、ドレスを買うなんていった?」
「女の子がそんなこと言うたらあかん!普通の令嬢は季節ごとにドレスを購入するんやから、姫さんもそれくらいはせな」
「たしかに、春夏秋冬で茶会や夜会があるし、社交界シーズンは同じ服を着るわけにはいかないから、令嬢たちはドレスを買う必要があるけど。そもそも私、社交界にはでないし、ドレスなんて大事なところさえ隠せれば......」
貴族用のドレスは安いものだと、中古で銅貨1枚からだが、高級なものは金貨3枚は珍しくない。ディナサンは高級ドレスを取り扱うので、ここにあるものは最低でも銀貨30枚はするだろう。
......と、いうか。
「私にドレスに対しての文句を言わせて、それを次のドレスのデザインの参考にでもする気なのでしょ。転んでもただで起きないのよね、あなた」
「ひゅ~♪ ひゅ~♪ なんのことやろ~」
下手くそな口笛を吹かせて誤魔化すディナサン。この光景は今に始まったことではないので、これ以上問い詰めるのはやめておく。
「はぁ......わかった。でも......」
「大丈夫!気に入ったのがあればプレゼントするから!な?ええやろ?」
「ドレス費も浮くし、いいか」
大きめのドレスをいくつも着させられて、その度に私は改良点や、気に入った点を伝えると、真剣な表情で、その言葉をメモを取らせた。




