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猛火の疾走

「……おかしい」


 レイズの後を追い、街の中心部へと駆けながらアレンは一人呟いた。


「おかしいって何がですか?」

「今まさに王都に蔓延る鎧の騎士はヘイト・ディスティが作り出した物。ならば、当然ヘイト自身がそれを操っているのだと思っていた。しかし、そのヘイトは殺された。それにも関わらず街中にはこうして無数の鎧の騎士の大軍が存在している」


 その騎士達はヘイトが居なくなった今も尚、依然として動き続けている――


「この一連の事件の黒幕がヘイトではないとするならば、一体誰かがどうやってこの鎧を操っている?ヘイトが技術を提供したその相手とは一体誰だ?その目的は一体何なんだ?」


 アレンはまるで自身の頭の中を整理するかのように次々と言葉を並べていく。

 

 猛火に包まれる街中には、まるで獲物を探すように徘徊する鎧の軍勢の姿があた。その鎧達から逃げ惑う人々と同様に、紺青色の制服を纏った軍人と思われる人間が騎士達と応戦しているのを多数見かけた。

 兵士達は鎧の騎士に対し、初めこそ優勢であるものの、鎧は何度でも起き上がり彼らに何度となく襲い掛かっていく。そんな彼らの様子を見て私はずっと疑問に思っていた事をアレンに問い掛けてみる。

 

「そもそも、どうして鎧があんなに沢山独りでに動いているんですか?」

「あれは独りでに動いている訳じゃない。予想では恐らくなんらかの力、遠隔魔法の類いを使って何者かが鎧を操っているのだと思われる」

「遠隔魔法?」

「ああ。だが、どこへ行ってもその術者の影はない」


 アレンは周囲に視線を配らせながらそう答える。


「その遠隔魔法っていうのは、こんなに沢山の物を遠隔操作する事が出来るんですか?」

「いや、例え、魔法と言えどもその力は無限ではない」


 魔法の発現には必ずある程の法則、原則が存在する――

 

「通常、広範囲の遠隔魔法ならば、発現ののち、ある程度の調整は可能だが長時間発現させ続ける事は出来ない。魔法を発現させ続けるには魔力必要不可欠だからだ」


 ――しかし、現状。


「この惨状からしてそんな法則無視もいい所」

「だったらなんであの鎧は動き続ける事が出来るんですかね?」

「分からない……分からないが、しかし……」


 アレンは何かを考えるかのようにしばしの間口を閉ざす。


「もしも仮に長時間魔法を発現させる為にどこからか常に魔力が供給されているのだとしたら……」


 ぶつぶつとまるで独り言のようにアレンは呟く。

 私にはアレンのように魔法に関する知識がある訳ではない。故にアレンが言わんとしている事が正直な所よく理解出来てはいなかった。

 だが、そんな私にもはっきりと分かる事が一つだけある。隣を走るアレンの頭は今まさにフル回転し、その答えを導き出そうとしている。それだけは確かだった。


「……魔法陣の断片」

「え?」

「……まさかっ!」


 瞬間、アレンは目を見開いた。


「どうしたんですか?アレン船長?」

「リリ・ナインが鎧の騎士を目撃したという廃屋。そこには断片だが確かに魔法陣の跡があった」

「魔法陣の跡?」

「ああ。そして先刻乗り込んだヘイトの邸。その部屋にも巨大な魔法陣があった。あの形……あれは焼け落ちた廃屋で見た魔法陣の形とよく似ていた」

「えっと……それはつまりどういう事ですか?」


 訳が分からずに尋ねた私。

 そんな私余所に、アレンは一人不敵に笑ってみせる。


「……面白い」


 街は中心部へ向かうほど猛々しい炎に包まれていく。

 目を覆いたくなるような惨状の中、アレンは一人不敵に笑ったのだった。


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