▼回りだす歯車
この章からレイズ・ローゼルの過去編に入ります。
また、ここから三人称に変わります。
ブラインド大陸北西に位置するディーレフト。
気候は温暖で暖かく、交易の為に開かれた大きな港には各地から多くの船が来航し交易地として発展していた。異国との積極的な交易によって発展を遂げたディーレフトは美しく豊かな国であった。
しかし、ある男の台頭が国の運命を大きく変えた。
ディーレフト隣国、ワンスモール。
長く独裁体制の続いたワンスモールは、権力の独占により政府は腐敗し、国の財政は悪化。国民は苦しい生活を強いられていた。
xxxx年。
ワンスモール国内にて革命と称したクーデターが勃発する。
首謀者は元軍人マオ・クインズ。クインズは反旗を掲げ、首都アインス城を襲撃。アインス城は陥落した。
襲撃の直前で国外へと逃亡したワンスモール国王は隣国ディーレフトへと亡命。ディーレフトはそれを受け入れた。
しかし、それにワンスモール国民は激しく反発。亡命した国王の身柄引き渡しを求めたが、ディーレフトはこれに応じず、翌年民衆の怒りを背にクインズはディーレフトへと軍を率いて侵攻した。
ディーレフトもまた侵攻したクインズに対し自国の防衛の為兵を挙げる。
ディーレフト東部にて両軍は衝突。戦力は拮抗し、戦闘は日に日に激しさを増していった。
そんな折、彗星の如くある男が現れる。
彼の手には赤く燃える炎の剣。
彼はその剣を手に迫り来る敵兵の前に立ちはだかった。そして、ディーレフト軍と協力し侵攻したクインズの軍を撃退。
翌年、ワンスモールにて首都の奪還に成功。首謀者マオ・クインズは戦死した。
そののち、先の功績を認められ、彼は国から栄誉ある『騎士』の称号を与えられる。一介の船乗りのから騎士へと登り詰めたその男。
彼の名はロイ・ローゼル。
炎に燃える剣を手に、紅蓮を纏いて戦場を駆けるその姿を称し、人は彼を『劫火の英雄』と謳った。
***
それから数年後――
朝日が昇り城下を照らす。
時刻は早朝。帝国軍に所属するレイズ・ローゼルはまだ空が明るんだばかりにも関わらず軍の宿舎を出た。
色は煌めく金髪で、腰程の長さのある髪を後ろで1つに束ねている。
耳の横に一房だけ垂らされた髪型は彼なりのこだわりを表していた。
瞳は蒼く澄んだ碧眼。
纏った軍服、紺青色のコートにはきちんと手入れが行き届いており、後ろで束ねられた長い髪にまで丁寧に櫛が通されていた。
早朝の静かな街をレイズは1人歩いていく。
勤務時刻にはまだ早かったが、レイズには今日、出勤前に寄る所があった。
朝の空気はとても澄んでいた。通りの人影はほとんどない。
大通りから少し入った細い通りともなれば尚更だった。
そんな通りにある朝早くからやっている小さな花屋で綺麗な白い花束を一つ買った。
時を同じくして、街中を疾走する影が一つ。
運命が音を立てて回り始める――




